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禁忌のメイガス  作者: Ι
No.1 split of fate
1/18

origin period (first order)

新人類。

それが俺たちの名だ。


第三次世界大戦によって生まれた存在。

アークフォトンをその身に宿し、どこへ向かうのか。


その答えはこの時は知らない。



部屋にはうるさくアラームの音が鳴り響く。

朝を告げるその音は俺に日常の繰り返しを教える。


知っているさ。

わかっている。


この日々が犠牲の上で成り立っていることくらい。


顔を洗い、歯を磨き、着替え、部屋を出る。

いつもと同じだ。

いつもと……。



「…なあ。

 聞いてんのか?」


夏虫たちの声がこだまする中、バレッタにの言葉で意識を取り戻す。

もう夕暮れも近い。


「ごめん。

 聞いてなかった。」


別に聞く気がなかったわけじゃない。

ただ俺に話しかけるにはタイミングが悪かっただけだ。

なにせ、今日の俺は特段疲れている。


「はぁ…」


バレッタは大きくため息をつくと同時に少し俯いた。

呆れているのか。やり直すことをためらっているだけなのか。

おそらくは前者だ。

誰だって呆れる。


争いから逃げたはずが、こうして身を削って争いのための道具を作っているのだから。


「じゃあもう前置きは無しで単刀直入に言うぞ。」


バレッタはポケットから白いカードを取り出し、俺に差し出して言う。


「これをお前に預ける。

 明日、嵐が来たなら使え。」


あいつは俺の手に無理やりカードを押し込んだ。


どこか震えているような感触がした。


「それってどういう…」


「俺、もう行かねえと!

 じゃあな。」


俺の言葉をかき消すように彼は暗いプラットフォームに吸い込まれていった。


わからなかった。

だがそれ以上に疲れていた。


来るはずのない嵐のことを考える余裕は俺にはなかった。


夕暮れ時、淡く焼けた空と共に帰路についた俺の手には押し付けられたカードと謎の喪失感だけが残っていた。




部屋にはうるさくアラームの音が鳴り響く。

朝を告げるその音は俺に日常の繰り返しを……


…違う。

これはアラームの音なんかじゃない。


これは…


外に出てみると、辺りは人でごった返していた。

錆びれたスピーカーからは避難を促す指示が聞こえる。


「なんなんだよこれ…」


すぐにバレッタとの連絡を試みた。

ディスプレイには

『No Signal』の文字。


なんとなく察しはついていたんだ。

否定する勇気がなかっただけだ。

今は悔やむな。

事が収まった時、問いただせばいい。


目の前に広がる光景を見て俺は思い出す。

昨日渡されたものは今テーブルの上にあるはず。


俺は急いで取りに戻った。


案の定、昨日帰宅したときの状態のまま凍っているように置かれたそれはまるで俺のことを待っているかのようだった。

俺はカードを拾い上げ確認する。


「イデアコード…」


この配列は見覚えがあった。

全力で頭を回転させ、カードの裏面に掘られた文字を解読する。


『W74,33,15』


座標。

確かにそれはある場所の座標。

しかしこの位置はシェルターとは反対側だ。


…考えるまでもないだろう。


ただ走る。

人の波をかき分けただ走る。


何があるかは知らない。

それでも、


「ここのはずだ。」


さっきの座標の場所は確かにこの場所を示していた。

"東部74区画、33-15"。


結論から言おう。

そこはただの錆びれた壁があるだけだった。


だけど、

さっきから鳴り響く地響きがこの場所から鳴っていることを知っている。


『認証完了』


頭の中に女の声が反響した。

鳴り響く地響きは次第に大きくなっていく。


壁が割れるにしたがって。


『No.4871372 ノア=フィルツェン。

 入場を許可します。』


俺はその割れ目の暗闇に足を突っ込んだ。

躊躇はなかった。

完全に入ったところで壁は再び閉じ、俺がいる空間は地下へと下る。


何メートル下っただろうか。

そもそもこの島にこんな場所があるなんて聞いてない。

ただこの感覚だけが存在することを物語る。

静寂の音が鼓膜を震わせる。

自分の鼓動が煩く感じるほどに。


到着したのか、慣性力は俺の体に作用しなくなった。

案の定扉が開き、目の前の光景が網膜を突き刺す。


知っている。

知っているぞ。

この"機体"を俺は知っている。


「メイガス…なのか…!?」

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