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鏡中のセカイ  作者: はがね屋
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微かな意識の中で

どうも、はがね屋です。

まだ死ねない、サクマ!

 



  痛い、いや熱い。背中がすごく熱い。騎手スケルトンは防具だけでなく片手剣も装備していた。くそう、相手も俺を殺す気で来ていたのに、油断していた。これは向こうの世界では体験もしたことの無い辛さだ。閉じかけていた瞳が熱くなる。なんとか目を開けると、そこには俺を助けたミチルの美しい剣が織り成す、炎の嵐が辺りを包んでいた。だんだんと俺の意識は薄れていく…。



  *****



「きて…、起きて…。サクマ、起きて」


 懐かしい声。母さんの声がする。ふと目を開けると、先程までいた場所とは全く違った景色が広がっていた。地面は白く光っているが、それ以外は全てを塗り尽くす黒。そして目の前には、異国の白い服を身に纏った母の姿。なんというか、神様のようだ。


「大丈夫?サクマ」


「あ、あぁ…。母さんなのか?」


「えぇ、そうよ。でも私はもう1人のあなたの母」


「どういうことだ?」


「1度だけ、この世界に来たことがあるのよ。それも2人。あなたの母とその時にお腹の中にいた、あなた」


 なん…だって…!まさか、何年も前に見たあの夢は。俺は驚きの表情を隠しきれないでいる。それを見透かしたように、目の前の母は話を続ける。


「そうよ、あなたが見たあのいつかの夢は、本当にあったことなのよ。キョウヤとサキノが逃げていた、あの日の出来事」


「逃げていたって、何からだよ」


「先代魔境王、魔王よ。あなたの父はね、ある日この世界に迷いこんだの。それを追いかけたサキノは魔王に目を付けられた。キョウヤと再開したサキノは、どこからともなくやってきた魔王によって、目の前でキョウヤを殺されたの」


「それなら母さんは、死ぬ直前にあっちの世界にに逃げ出せたってことなのか」


「そうよ。それから向こうの世界へと消えていった存在の代わりに、こちらの世界がもう1人のサキノを女神として誕生させた。あなたと同じ生命を宿したままね」


 同じ…いのち?!つまりこの世界は、俺の命を宿した全く同じ状態の母さんを、生み出したっていうのか…。


「今この世界を乗っ取ろうとしている魔王は、あなたと同じ…」


「ま、待ってくれ!それって、俺がこの世界にいることは問題無いのか?!」


「あるのは…あるわ。あなたは、この世界では絶対に死んではいけないのよ」


「絶対に、それはどうしてだ?」


「例えば、ミチル君。彼が死んでもこちらに全く同じ存在が居ないので、迷わずあちらの世界に戻ることになるわ。でもあなたの場合、全く同じ存在が2つもある。通常、1度来た者が再びこちらの世界に現れることはありえないの。そして、この世界はそれを異物と見なし、元の世界には戻さずに存在を消滅させる」


「消滅って…。そうだ、戻る方法は無いのか!」


「あるわ、1つだけ。このシュピーゲルの大陸の反対に、魔境大陸があるの。そこには、地鏡の岡に光を送る魔方陣があるの。それを起動させることができれば、あちら側とこちらを結ぶ出口(ゲート)が出現するわ」


 地鏡の岡とは、確か俺たちがこの世界に来たときにいた場所だ。やっぱり、こっちの世界とあっちの世界とを結ぶ、重要な場所だったのか。


「それなら、なんでこっちの人間や魔境は、向こうに行こうとしないんだ?」


「反射するの、この世界の存在をあちら側が認識しないの。まぁまず向こうの世界の存在を知る者なんてほとんどいないのだけどね」


 しかし、たった1人だけこちらの世界の者が…。向こうの世界に行ける可能性を秘めている。魔王。


「そう、現魔境王はあなたと全く同じ存在。だから今、あちらに行こうと思えば行けるのよ。そうするとあなたは、永遠にあちらの世界に戻ることはできない」


「でも、魔王がそんなことして何のメリットがあるんだよ」


「考えられることは今のところ無いわ、だから今その心配をする必要は無い、と思って大丈夫でしょう」


 確かに、向こうに行ったところで何もできない。できるとしたら、俺をこの世界に閉じ込めるだけだ。初めての向こうの暮らしはキツいぞ~、多分。いや絶対にだ。


「そして、私はあなたがすべきことを伝えに来たわ」


「ごめん、1つだけ。もっと早く聞くべきだったんだけど、ここは一体どこなんだ?」


「そうね、ここはあなたの心の中、のようなところになるのかしら?」


 ふと、胸元が輝いているのに気付く。正確には、母に貰ったペンダントが輝いている。白く暖かい光。


「これは…」


「それはサキノが初めてこちらに来たときに、偶然見つけた、神器“ルックスビータ”よ」


「ルックス…ビータ」


「あらゆる命あるものが放つ、生命エネルギーのようなものを、装着者に吸収させる能力を持っているの。私はそれを媒体にして、あなたと会話をしているの。あなたがこの世界に迷い混んだのも、多分それのせいかもしれないわ」


「これ、そんなにすごい物だったのかよ。毎日持ってて良かったよ」


「よし。それじゃあ話を戻すわね。前魔王が私から奪い、育て上げた現魔王。その魔王を討ち、地鏡の岡にゲートを作り上げる。それを絶対に成し遂げるのよ」


「分かった。絶対にできる保証は無いけど、やってみる」


「頑張るのよ、サクマ。さて、そろそろ起きる時間よ。みんなが待ってるわ。目が覚めたら、キョウy、あ…いえいえ、カルラがあなたに……」


 おい待て、今なんて言おうとした。確実に口を滑らせたぞあの女神。しかし覚醒寸前の俺は、遠退く心想世界では口を開くことも声を発することも出来ず、ただ現実へと引き戻される。あの母親は、全く…。あぁぁぁあダメだ、目が……覚める…。






サキノと同じ顔、記憶を持つ女神アイミ。

キョウヤと同じ顔、記憶を持つ錬成士カルラ。

てな感じになっております。

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