骨の戦士
どーも、はがね屋です。
迷いこんだ異世界。これから2人はどう生き残るのか。
岡を下ると、そこには獣道のような自転車2台が並列走行できるくらいの道があった。
「ねぇ、少し不気味じゃないか?」
「うぅ、気持ちは分からんでもないな」
夕暮れ時とはいえ、木々が生い茂るこの森の中ではあまり陽射しは入ってこず、すこし薄暗い。
「お、あそこ見てみろよ!」
少し先に日溜まりのような場所があるのが見えた。思わず走り出す。
「げっ、嘘だろ」
「うん…お墓だね」
そこにあるのは、石や剣、槍などが刺さった墓の数々。数は10個ほど。奥へと道はまだ先に続いているのが見える。
「ここは気にせず抜けていこうぜ」
「確かに僕も、ここはちょっと怖いや」
満瑠も賛成し墓を抜けるべく足早に歩き出す、が。
ボコッ!
「「ひっ!!」」
2人は恐る恐る音の源を見つめる。
「みみみみ満瑠くん、墓がめくれ上がってないかい?」
「ななななな何言ってるんだい、そんなはずないだろ?」
しかし、音は1つに留まらず、そこら中から音を立てている。
ズボッ!!!!
「「うわぁぁあ!」」
穴から出てきたのは、現実では絶対にありえないスケルトンであった。俺たちは一瞬のうちに囲まれてしまい、逃げ場を失っていた。しかし以外にも俺の頭は冷静だった。
「どどどどどうしよう、逃げられないよ!」
「ちょ、ちょっと落ち着こうぜ満瑠!よく見ろ、正面のスケルトンの列は少しだけ手薄い。たかがカルシウムの塊だと思って正面突破をかければ逃げられるかもしれない」
俺と満瑠の2人で逃げられる方法を考えろ。俺は背中の荷物をおろし、竹刀ケースから木刀を取り出した。
「満瑠っ!」
「あぁもう、分かった!」
満瑠も落ち着きを取り戻し、俺の意見に従う。すると前方の2体のスケルトンがこちらに向かって走ってくる。2体とも、自らの左手の腕の骨をちぎり、右手で持ち襲いかかってくる。
カンッ!!
と鋭い音を立て、2人ともが木刀で骨を受け止める。スケルトンの力量は中学生の平均ほどだろうか。俺はどうするか必死で考えていたが、ふと、胸の温かみと同時に頭に電撃がはしる。脳内に浮かぶ言葉を無意識に発する。
「スキル・剣技!」
驚いたような表情を見せる満瑠を横に、俺は青白く輝く木刀で骨の腕を上へと弾く。と同時に右足を軸に左回転で胴体に剣撃を撃ち込む。
「せあぁぁっ!!」
メキィ!と音を立てスケルトンの腰から上が崩れ落ちた。続いて満瑠と鍔迫り合いを続けているスケルトンの頭にも、上段から一気に木刀を振り下ろす。
コォォォン!
再び鈍い音を立てスケルトンの頭がバラバラに砕け散った。
「す、すごい…」
驚く満瑠だが、俺はもっと驚いていた。体が自分が知っているパワー以上のパワーを発揮したのだ。さっきの技を使うと、どうやら身体能力が上がるのかもしれない。しかし、木刀の耐久力が剣技の威力に追い付かず、刀身は悲鳴を上げひび割れていた。
「満瑠、これならいけるかもしれないぞ」
「そ、そうなのかい?僕はどうすればいい」
「とにかく俺から離れるな。あと、背中は任せた!」
「了解!」
俺たちは墓に立ててあった直剣を引き抜き、走り出す。俺は再び想像する。どうすれば無事に逃げ切れる、どうすればこのスケルトンを倒せるか。今度は先程よりはっきりと剣が青く光る。
剣技!
スキルを発動させ、左脇から一気に右へ横一文字に剣撃を炸裂させる。
「はぁっ!!」
木刀とは比べ物になら無いほどの威力を直剣は発揮した。キィン!と音を立てスケルトンを一掃していく。そこからは俺が技を繰り出す一方だった。
*****
「はぁ…はぁ…はぁ」
気づくと2人は森を抜けていた。開けた場所にはもう夕日の光は刺しておらず、辺りは薄い暗闇に包まれていた。
「もう、あのスケルトンたちは追ってこないね」
「どうやらあの森からは出られないみたいだな」
呼吸を整え顔を上げる。さっきまで全く気づかなかったが、向こうの方に町の明かりがあるのが見えた。
初戦闘です。
咲磨は、置いてきた荷物をもったいないと思っていました。まぁでも、命より大切なもんは無いですからね。