黄金の意思
どうぞ、はがね屋です。
ついに魔境エスベッポとの決着。魔境の大軍から国を守ることができるのか
エスベッポ本体と同じ黒色の体をした兵の数々。身長は俺たちと大して変わらないのだが腕力がかなり恐ろしい。武器こそ装備はしていないが、左右の腕もとんでもない硬度をしているので、あの腕から繰り出される強烈な一撃を受けてしまったら、それこそひとたまりもないだろう。
そんな大量の紛い物の魔境たちの中に俺たちは飛び込んでいく。
「ミチル。コイツら本体と同じで全身がとんでもない硬さをしてるみたいだ。だから、少しでも体勢を崩せるよう足元を狙ってみてくれ」
「分かった。倒した奴らは一体どうするつもりだい?まさか、剣で叩き割ろうなんてことは…」
問いに答えるように右手の戦鎚を掲げる。
「これを使うのさ、だから任せてくれ!」
顔を合わせ、再び左右に別れて走り出す。
お前の硬さならあの魔境の体も怖くない、みんなを守るために力を貸してくれ、ギヴカタストロフ!
「おぉぉぉぉっ!」
剣技の応用で戦鎚にもスキルの光を纏わせる。青い光を放つ戦鎚は、目の前に迫ってくる岩の兵を瞬時にバラバラに砕き壊していく。
「やっぱりすごい。魔境の硬さなんて相手じゃないな」
周りで応戦しているみんなの姿を確認する。ミチルは指示通りに足関節部分に剣撃を加え、魔境を無力化しており、その向こうのレイラは上位スキルで次々と魔境の胴体を貫き粉々にしている。相変わらず2人の戦闘能力は恐ろしいものだ。
「俺も負けてられないな」
その意思に応えるようにナチュラルスキルの発動銘記が頭の中で浮かぶ。よし、使ってみるか!
「“ユニヴェル・インティウム”!」
スキルを発動させた途端、片手で持てた片手戦鎚はみるみる大きくなり、俺の背丈と変わらないくらいの長さに伸びていた。
その戦鎚を両手で限界まで持ち上げ、一気に地面へと叩きつける。
「いっけぇぇぇっ!」
ゴォォォン!
抉れた地面から次々と光の線が次々と延びて行き、大量の魔境たちに刺さる。このナチュラルスキルは、無機物を元の形へと戻すというものなのだ。今回は標的を魔境にしたため、岩で作られた兵たちはサラサラと砂になっていく。これをもし対人戦闘に使ったとしたなら、鎧や武器に対して能力が発揮されるのだろう。
「何よさっきのサクマ君、一気に敵の数が減ったわよ」
周りの魔境が減り、余裕ができたのか俺のところにレイラが嬉々としてこちらにやってくる。
「この武器のナチュラルスキルなんだ。こんなにエスベッポと相性が良いとは、正直俺も驚きだよ」
「今の技とその武器があればもう大丈夫そうね。私の槍はちょっともう無理そうなんだ」
レイラが持つ槍は穂先がボロボロになっていて、修復はかなり困難であろう状態になっていた。
「これ、もしかして思い出の武器とかだったのか?」
「まぁ一応、かな?昔からずっと使ってきたものでね。初めて奥義が使えて、初めての仲間と私を繋げてくれた大切な槍だから」
嬉しそうに、それでいて少し寂しそうな顔で今までの人生を共にしてきた槍を見つめている。
「そうだったのか。ごめんな、大切な槍をそんなにしたのは俺の指示と作戦のせいだ」
「何言ってるの!君のせいじゃ無いよ。それにね、もう寿命も長くはなかったんだ…。だから、ここまでずっと一緒に戦って、私を守ってくれてとても感謝しているわ」
一瞬だけ、装飾の宝石が光ったように見え、その直後に穂先にまた1つ亀裂が入った。俺にはこれが、武器としての役目を全うした徴のようにも思えた。レイラは背中にその槍を背負い納める。
「レイラ…。君の力はまだ必要なんだ。だから、これを使ってはくれないか?」
まだ元の長さに戻っていない戦鎚を差し出す。
「こ、これこそ大切な武器なんじゃないの?」
「あぁ。あの集落の人たちが鉱山で見つけた大切なものだ。多分これは、この時のために存在していたんだと思う」
誰にも持てなかった武器は、持てる者が現れることを信じ、自らを探し当てた者たちを守るために生まれたんだと思う。人々に輝きを与え、自在に形を変えるこの黄金は。
レイラがそれを手に取った瞬間、鎚の部分が輝きだした。
「何これ?何が起きているの!」
輝きが収まると、レイラの手には黄金の戦鎚ではなく黄金の槍が握られていた。
「もしかしてこの黄金は、人の強い思いに応えて形状を変化させることができるのか」
確か、初めて脳内で見たこの武器の姿はただの塊だった。しかし、いつの間にか発掘した人たちが持っているのと同じ鎚になっていたのだ。あの人たちは、この金を使った強力な発掘道具を求めていたのかもしれない。
そう、確かに俺もエスベッポを倒すために打撃武器を求めていた。そして、レイラが求めていたのは鎚ではなく槍。となればこの推測はあながち間違いではないのかもしれない。
「実は私、サクマ君に渡された鎚よりもやっぱり前の槍の方が良いなって思ってたんだ」
てへっと舌を出しレイラは微笑む。素直だなぁ全く、とか思っていたのだが、鬼に金棒。レイラに槍。今は戦力になるなら何1つ問題はないか。
「じゃあ残りの魔境もさくっと倒そうぜ」
「えぇ、この子と一緒に暴れちゃうわよ~!」
心強いです…。戦場の方へと振り向く。攻撃術士の術技が飛び交い、負傷した人たちをアムたち回復術士が回復。ミチルや他の少数冒険者や騎士団員たちが武器を使って戦っている。戦力差もだんだん気にならなくなってきたところだ。
向こうを見ると岩が連なった集団がまだ残っていた。背中の剣の柄を握り抜剣し攻撃を開始する。が、それよりも早くに神速の突進が魔境の集団を貫いていた。
「うぉ、レイラ?!」
木っ端微塵に吹き飛ばされた魔境の間からレイラの姿が現れる。やっぱりあの武器を任せて正解だった。
「ん?どうかした、サクマ君」
地面に刺さった槍を抜きこちらを振り返るその姿は、まるで戦場の女神という通り名を付けても良いくらいだった。
「戦場の、女神…」
あまりにも似合う(自称)、俺が考え出した二つ名が思わず口から漏れていた。
「サクマー、そっちに最後のが行ったよ!」
ミチルの声の方へ振り向くと、こちらに向かってくる5体の魔境がある。今度は俺が決める番だ。
「はぁぁっ!」
スキルを連続で発動させ、回転しながら各魔境の関節部などに剣撃を加えていく。2体は無力化させ、3体は壊れた膝を落としてその場で動かなくなる。
「頼んだ!」
「えぇ、任せて!」
俺が後退するのと同時に、跳躍したレイラが俺の頭上から目の前へと着地する。間髪を入れず、膝立ちの状態の魔境たちに黄金の槍から放たれる強烈な槍撃を、それぞれスキルの赤い光線を宙に描きながらお見舞いしていく。
「これで終わりみたいだね」
その言葉に続いて、辺りに歓声が響き渡る。ついに、魔境エスベッポの討伐が完了したのだ。
鉱山での爆破作戦では、見事に死傷者を出さずに終わらせることができた。これがまず1番の成果であろう。
そしてもう1つ。この国の奴隷制度を俺たちが変えることによってさらにハッピーな終わりを迎えられる、といったところだ。
ミチルたちと合流し、みんなが無事であることを確認する。
「それにしても、なかなか大変だったわね、最後の分裂した魔境たちを相手するのは。術技もなかなか使ったわ」
「僕も何度かかすり傷を受けたけど、いつの間にか治してもらえてたよ。ありがとう」
そうミチルに言われ、得意気に腰に刺したワンドを撫でているアム。まぁ彼女たちのお陰で、怪我をした人たちをすぐに戦線へ復帰させることができたのだ。数で負けている俺たちを勝ちへと導いた要因の1つだろう。
「ねぇ、サクマ君。これは一体誰に返したら良いんだろう?」
そう呟き、レイラは黄金の槍を俺に差し出してくる。エスベッポ国王か、あの集落に住んでいた人たちを逃がした彼か。その2択なら確実に前者は即却下だな。
「なら、彼にどうすべきか聞きに行こう」
避難しろと言ったのに、彼の姿は後方の術士たちと同じところにある。
俺に譲渡した物資や、仲間たちの避難誘導。彼にはこの戦いを最後まで見届けなければならない、といった何かしらの責任感を付きまとわせていたのかもしれない。ならそれは確実に俺のせいになる。彼はもう自由になるべき人間なんだ。ここからの分岐点は、必ず正しいものを選ばせてあげねばならない。
俺はレイラと共に彼の待つところまで歩き出す。そして、彼を呼ぼうとしたその瞬間だった。
ガキィーンッ!
「ぐぁぁぁっ!」
「きゃぁぁっ!」
とんでもない衝撃に体が吹き飛ばされる。衝撃が収まり目をうっすら開けると、そこにはとっさに俺をかばってくれたレイラが気絶し、倒れていた。
「レイラ、おい起きろレイラッ!」
謎の衝撃の方を確認する。なんと俺とレイラのすぐ目の前に、怪しいオーラを放つ剣が1本地面に突き刺さっているのだ。すぐにその持ち主であろう者がどこからともなく現れた。
「なんだお前は。人間なのか…?」
人間となにも変わらない、アムと大して年齢も変わらないのではないかというほど、少し幼い姿をしている。その筈なのに、彼からは決して拭いきれない違和感が気配から滲み出ているのだ。
「僕はディクタートを影から統べる者にして、偉大なる七大魔境すらをも超える者。魔境剣士クシフォス」
魔境剣士、クシフォス…。ディクタートは確かスペッキオの国王直属の暗殺団、そしてそのリーダーは不死身のカタスロのはずだ。なら、こいつは一体なんなんだ。
「ディクタートなら俺も知っているよ。だが、魔境剣士ってのは一体どういうものだ」
クシフォスは少し考えるような表情をし、またその顔を真顔に戻す。
「どうせ死ぬんだし、まぁ教えてあげるよ。ディクタートにはリーダーの他に四面鏡という特別な戦闘員が存在している。剣士、術士、槍士に弓士。そしてその4人には魔境の血が入っていて、半分が魔境みたいなものなんだ」
「なら君のところの国王は、人間を魔境へと変える実験もしてるっていうのか!」
冷たい真顔に少し怒りの熱が加わる。
「実験だって?違うよ、これは進化さ。君だって剣士なら分かるだろ、大切なものを守れない弱さを捨て去り強くなりたい。何にも負けない力が欲しいってさ」
そう言い切るとこちらに向かって一瞬で間合いを詰めてくる。
とんでもない速さで目の前に迫る剣を反射で受け止めたが、これは次も受けきれるとは言い切れない。
「おいおい冗談でしょ、これが勇者ってやつなのかい?僕はまだスキルも使ってないんだよ」
鍔迫り合いをしながらも余裕で俺に話しかけてくる。
「はっ、俺だってまだスキルを使ってないんだぜ?」
「その余裕も、僕がすぐに殺してあげるよ」
剣速にさらに拍車がかかる。相手の剣を受けきれずに、身体中にかすり傷を付けられる。
「大丈夫?ボロボロだよ」
「こんのぉぉ!」
スキルを発動し剣が青く輝く。しかしまだ剣が完全な状態にまでは戻っていないので、奥義やナチュラルスキルの使用といった無理はさせられない。
しかし、振り上げて繰り出した剣撃を難なく受け止められてしまう。
「ぐっ、剣が上がらない…!」
「なーんだ、君まだ下位スキルなのかい。僕たち四面鏡は一等階級の者たちより、何倍も強いんだよ?」
ふっ、と笑った瞬間に目の前にいたクシフォスの姿が消える。力を限界まで込めていた剣が前に落ち、体勢を崩してしまう。
「これで終わりにするよ。じゃあね」
背後から声と共に剣が降ってくる。こんなところで、俺の冒険は終わるのかと諦めかけてしまう。しかし、背中が斬り裂かれるよりも先に、地面にぶつかる衝撃が体の前面を襲う。よし、やつの攻撃が空振りに終わったならチャンスだ!
一気に体を回転させ起き上がろうとする。が、俺の上に立つのはクシフォスではなく、あの奴隷たちを一緒に救った彼だった。
俺の方に倒れてくる彼を、反射的に抱き抱える。
「おい…おいっ!!大丈夫か、しっかりしろっ!」
ドロッとした熱い液体が手を包む。体を見ると、彼の肩から横腹にかけて赤い一直線が描かれている。
うっすらと彼の目が開かれる。
「よかっ…た。無事のようですね」
「あぁもちろんだよ、君が守ってくれたからな…。なんで、君が俺を守ることなんてなかったのに」
顔色がどんどん薄白くなっていくなか、それでも絶えず笑みを浮かべる。
「僕らを奴隷と扱わず、同じ命として扱ってくれた。これから皆が生きていくには…あなたが必要だ。僕には、こんなことしか…できないからさ」
「君たちの仲間のことは任せろ。だから、君のことも救わせてくれよ!俺は、全部助けたいんだ」
ゆっくりと腕が持ち上がられ、俺の肩を掴む。
「僕はもう充分に救われました。仲間が、家族が生きていく道を開けてもらえたんだから。そして、あの黄金が君や君の仲間を選定するところも…見られたんだ。清き心を持つ者にしか操れない黄金。君は間違いなく、僕らの…希望なんだ……」
肩を掴んでいた手が地面に落ち、うっすら開いていた目も閉じられた。しかし、笑顔だけはそのまま残っている。俺はとうとう彼の名前も知らないまま、別れの運命を決められてしまった。
「奴隷ごときに命を救われるなんてね。君は、恥ずかしくないのか?」
亡骸を抱き膝立ちの状態でいる俺に対し、剣先をこちらに向けてそう問いかけてくる。
「奴隷ごときに、だと?お前が勝手にそう解釈するだけで、彼は俺たちと何も変わらない人間だ。国王の、組織の言いなりで魔境の血を自らのものにした、お前は人なんかじゃない、あの獣と同じだ」
「そうさ、同じだよ魔境と。だが人間どもに敗北を重ねた魔境よりも強い。そして人が死んだことぐらいで絶望する人間どもよりも、遥かに強い!」
剣が再び俺に向かって振りかざされる。俺ももう諦めない、コイツに勝って彼が守りたかったものを代わりに…
「守るんだっ!!」
これまでよりも自分の腕が軽く感じたが、今はそんなことはどうでもいい。背中の剣を引き抜き、真っ直ぐに降りてくる剣を横に凪ぎ払う。
キキィン!
「何っ!まだそんな力が残ってたか」
警戒して後退するクシフォス。その間に彼の亡骸を横に移動させ俺は立ち上がる。
「サクマ…無茶だよ。逃げろ!」
「大丈夫だ。それよりも、体は動かせるか?」
あの衝撃で、後ろにいた騎士団員やミチルたちも多少の被害を受けていたのだ。
倒れていたミチルも、ゆっくりと立ち上がり親指を立てる。頷き返し俺は前を向く。ミチルも横にやって来て剣を構える。
「負傷した2人が、完全な状態の僕に敵うとでも思ってるのかい?」
自然と両手で握る剣に力が入る。
「ミチル、俺の剣は早く休ませないといけないくらい危険な状態だ。だからこそ、火力はまたお前に頼むことにする」
「分かったよ。とにかくやつの攻撃を2人で受けて、僕が奥義で止めを刺すってことだね」
「そういうことだ。頼むぞ、相棒」
片手で剣を高々と掲げ、走り出す加速とともに一気にクシフォス向けて振り下ろす。
「せぇぁぁっ!」
剣技を発動させたのはいいが、なんと剣は、青ではなく紅蓮のごとく赤々と輝いていたのだ。
「このタイミングで、上位スキルに変化しただと?!」
クシフォスは戸惑いつつも、同じ上位スキルの剣技で相殺してくる。
「少しは勇者らしくなったんじゃないの」
「そいつは…どうも!」
鍔迫り合いに持ち込むが、負傷しているこちらが押し返されてしまう。そして、上位スキルの反動に体が耐えきれず、全身の切り口から血が溢れだしてくる。
ここで、あまりの激痛に蹲りそうになる俺を跳び箱にしてミチルが前に飛び出す。
「無理するなよ、サクマ」
「あぁ、大丈夫っ…」
ミチルが果敢にクシフォスに向かって連撃を叩き込むが、それを難なく弾き返している。これが魔境剣士の力なのか。痛みを堪え、一歩前へと踏み出す。
プシャッ
「これも、弱いな」
鮮血が空中で踊り出す。クシフォスが放った一撃が、ミチルの胸を切り裂いていたのだ。
「ミチルッーーーー!!」
仰向けのまま、ミチルは地面に倒れ込んでしまった。まずい、俺がここでヤツの一撃を止めないと、ミチルが!
気づいたときにはクシフォス目掛けて跳んでいた。
「ミチルから、離れろっ」
「今さらやって来たところで!」
夢中で剣撃を繰り出す。上段から、下段から横から斜めから、必死に攻撃を繰り返す。防御することも知らずに。
「おぉぉぉぉっ!」
「お前は一体、何なんだ!」
人を散々虚仮にするコイツを、俺は!
無意識の内に、俺はクシフォスに確かな殺意を向けていた。その時だった。剣が赤でも青でもなく、紫に輝き出したのだ。
「その輝きは…。なぜだ、なぜ勇者であるはずの君が、魔境剣士の僕とカゲミ様にしか使えない、魔境剣技を…!」
後退しながら驚きを隠せないでいるクシフォスの言葉が、頭の中でこだまする。スキル、魔境剣技。そして、また新たな言葉が浮かんでくる。これで、やつを殺す!
「魔境剣技、鏡面直射…」
左から一気に右側へと剣を振る。剣はクシフォスの胸部にしっかりと入り、通りすぎていく。顔をしかめるクシフォスの胴体には、うっすらと赤い線が2本浮かび出てきている。
「一閃」
スシャン!という音とともに、赤い鮮血がミチルと同じように宙に舞う。
この技は、スキルを発動させ斬り込むことによって、更にもう一撃が平行な位置に現れるという一度に二度攻撃できる恐ろしい技なのだ。
「こんな、得たいの知れないやつに…負けるのか…」
地面に大の字で倒れるクシフォスがそう呟く。出欠量からして、多分もう助からないかもしれない。
「お前にだけは言われたくないよ」
そうだ、早くアムにミチルの止血を頼まないと。
血の付いた剣を一振りして、鞘に納めようとする。しかし、持ち上げようとした剣が小刻みに震えていることに気づいた。
「なんだ、どうしたんだよスペランツ?」
カキキキキキ、パキィン
鋭い音を立て、剣が真ん中から綺麗に2つに折れたのだ。
「嘘だろ…。いや、でも今はミチルたちが先だ」
半分になってしまった剣を鞘に納めアムの元へと走り出す。
*****
その後、意識を取り戻したレイラや騎士団員たちとともに被害確認、そしてアムたち回復術士たちは負傷者たちの回復を。ミチルはなんとか一命を取りとめたのだが、同じかそれ以上の血を流したクシフォスの血は一滴も見つからず、遺体すらも見つからなかったのだ。あの短時間に一体何があったというのだろうか。
そして俺たちは、避難した奴隷たちと共にエスベッポ王国へと向かい、歩き出した。数々の謎を抱えながら。
ここで前半戦が終了したことになります。
どうぞこれからも、彼らの冒険をよろしくお願いいたします。




