迷いこんだセカイ
どうも、はがね屋です。
来ました異世界。
登校、授業、部活と、特に何も変わらないの学校生活を今日も終える。いつも通りみちると下校の門をくぐり、俺は商店街のスーパーで弁当を買う。みちるは外の自動販売機でサイダーを2人分買い待っている。
「はい、咲磨」
「おう、さんきゅーな」
商店街のアーケードを抜ける。お寺の角を曲がると俺の家が見えてくる。いつも角に付いている二面のカーブミラーが新品へと交換されたようで、夕日が一層輝いて見える。
「あ、そうだ、明日の朝は…」
「ゆっくりしたい、だろ?」
満瑠がニヤリとこちらの話を妨げる。
「あぁ、そうだよ。今日も道場でシャワーしてたら遅刻しかけただろ?」
「そうだったけ、でも咲磨が最後の方に本気の試合までやろうって言ってきたから」
「せっかくの稽古だろ、試合だってしたいじゃんか」
「はははっ、君はいつもそうだね」
角を曲がりかけたとき、ふと後ろに気配を感じる。みちるも感じたようで、同時に振り返る。しかし遅かった。そこにあるのは鏡に映った自分の姿だった。
「「 うわぁっ!! 」」
*****
とっさに目を閉じ、頭上にくるであろう衝撃を待つ。そう、あの新品のカーブミラーが落ちてきたのだ。しかしいつまでたっても、目を閉じた暗闇には夕日の光がぼんやり入ってくるだけで何も起きない。
2人ともほぼ同じタイミングだっただろう。おそるおそる目を開けると、そこにはさっきまで見ていた夕日とは違った夕日が見えていた。
「綺麗だ……」
「う、うん……」
眼下に広がるあまりに美しい絶景に思わず言葉が失われる。すぐに思考が停止した脳を再び回す。ここは一体どこなのか。しかし、ただただ混乱するだけだった。左には口をポカンと開けたままの満瑠。
辺りを見渡す。2人が立っているのは岡の上。下った先になある大きな森がある。それを挟むとてつもない高さの灰色の岩山、森の向こうには町があり、更に先には都市だろうか、海に面した大きな町がある。海には夕日が半分ほど沈んでいる。
「ままままさか、死んじゃったのかな?」
震える声で俺の肩を掴みながら満瑠が言う。
「そそそそんなこと、あるのか?」
思わず足元を見る。足、ある。頬を引っ張り合う。
「「痛い!」」
2人とも背中には竹刀と木刀が入ったケース。それと鞄と、俺はさっき買ったばかりの味噌カツ弁当を持っていた。
ふと胸元が温かくなった気がした。発熱源は母のネックレスだったのだろう。かすかに光ったようだったが、気のせいだと思い元にもどす。
「そいじゃ、まずは向こうの町の方に進んでみようぜ」
「ほ、本気で言ってるのか?」
俺があからさまにワクワクしているのが分かったのか、満瑠も深い溜め息をつく。
「はぁぁ。分かったよ、付いていけばいいんだろ」
「よっしゃ、行こうぜ!」
俺はハキハキと、後ろから来る満瑠はトボトボと森の方へと進みだした。輝く夕日は、はっきりと2人の影を浮かび上がらせている。
この日は味噌カツ弁当が特売日でした。