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鏡中のセカイ  作者: はがね屋
13/40

魔境 シュピーゲル

どうも、はがね屋です。

一区切りついたところで、初めてまともなことを言わせてもらいます。鏡中のセカイを読んでくださりありがとうございます。この小説は昔、自分が何気なく書いていたもので、最近見つけ出したものです。それを今、ここに投稿するに至っています。学生という身分ゆえ、いつまで書けるか分かりませんが、完結させられるよう頑張ってみます。どうぞこれからも鏡中のセカイを、サクマたちをよろしくお願いします。

 



 暗い階段を下りていく。岩でゴツゴツした壁に覆われているため、どうやら穴を掘って階段を設置したようだ。そして、5分くらいすると目の前に大きな扉が待ち構えていた。騎士団員は総数20名。国の警備などの関係で、討伐戦に連れてこれる人員はこれで限界らしい。騎手長が騎士団を止めると、討伐戦に参加する全員に声をかける。


「さて、この扉を開けると魔境(まきょう)モンスターが待ち受けている。お前たち覚悟はいいか!」


「「おぉぉぉぉぉぉ!!!」」


 騎士長の声に騎士団員たちは応え、気合いを入れるがごとく叫び出す。俺とミチル、カルラは戦闘は初めてでは無いが、アムは初めてである。それのせいかどうしても緊張しているようだ。そんな様子の彼女にミチルは気付く。


「アムちゃん、大丈夫かい?」


 既に少し汗ばんでいるアムは、うつむいていた顔を上げる。


「わ、私…怖いわ。だけど、あの戦いでお姉ちゃんは魔境を封印して、討伐を次に来る人に託した。そのバトンを受けとるのは、妹の私じゃないと。私が仇を取らないと…」


 未だにアムの足は震えている。


「アム、お前一人が頑張りすぎて何かあったら、お母さんとお父さんが心配するぞ」


「で、でも…!」


 落ち着かせないとと思い、俺はパンッと手を前に合わせて叩く。


「だから!その仇討ち俺たちにも手伝わせてくれよ」


「サクマ…」


 ミチルも頷き、アムは再び目に涙を溜める。しかしそれをすぐに拭い、いつもの眩しいばかりの笑顔を顔に戻す。


「うん。お願いサクマ、ミチル。一緒に魔境を倒して!」


 俺とミチルは頷き合い再び前を向く。再び騎士長が声を張り上げる。


「これより魔境の元へと進行する!」


「カルラさん、アムちゃんをよろしくお願いします」


「任せておくれ、ミチル君」


 ギィィイと扉が開きられ、前の騎士団が部屋へ入っていく。俺とミチルは剣を、カルラは木刀の様な長い杖を、そしてアムは姉が使っていたワンドを取り出す。


「行こう!」


 俺たちも続いて走り出す。すぐにその空間は現れた。大きなドーム型の洞窟だ。その中心に光の鎖に繋がれた大きな狼のようなものがいる。大きさはハイベアーほど。黒い体に赤い目を光らせた、まさに獣そのもののような見た目。周りの人間に反応するかのように、(シュピーゲル)は暴れだす。それと同時に鎖が悲鳴をあげ、光に亀裂が入る。


「あれは、お姉ちゃんの魔法…」


 アムは驚き口を両手で塞ぐ。


「そろそろ引き千切れてしまうよ、気をつけてサクマ君、ミチル君!」


 ギィィィン!

 と大きな音と千切れた鎖が、光の粉となって周囲に飛び散る。


「戦闘開始!」


 騎手長の掛け声と同時に、騎士団員はシュピーゲルを取り囲み走り出す。しかし、狼は一瞬にして姿を消す。


「何っ?!」


「シュピーゲルが消えたぞ!」


 団員たちも混乱する。俺にもサクマにも見えておらず、辺りを見渡す。しかしアムには見えていたらしく。


「上よ!上!」


 上を見上げる。シュピーゲルは超高速で跳躍していたのだ。そこから急降下し、取り囲む団員たちを一斉に切り裂いていく。


「ぐぁぁぁぁっ!」


「は、速すぎる!」


 そこら中で赤い鮮血が吹き出す。まずい、団員の半分は今ので負傷してしまった。しかし。


「ヒール!」


 アムが術技を唱えると団員の傷がほとんどの塞がっていく。術技は剣技とは別に、詠唱を必要とする。また、術士と相性が悪いと詠唱しても、術技が使えないこともある。

 術技を唱えたアムの方を振り向く。


「すごいじゃないか、アム!」


「これくらいできないと、サクマ!次来るわよ!」


 目の前にシュピーゲルの鋭い爪が迫ってくる。俺は瞬時に剣を横にして振り上げ防御する。


「はぁぁぁあっ!」


 キィィン!


「ミチル!」


「うん!!」


 ミチルが俺の剣と競り合っているシュピーゲルに向かって一撃を加えようとする。が、狼の体が薄く光出す。


「はぁっ!」


 ミチルの一撃が、青い線を空に描き空振りに終わる。狼は空中で後ろに1回転をし、俺の肩に爪鋭いが一撃を入れる。肩から血が滲み出る。


「ぐっ…これがこいつの能力だ!」


「まさか、高速移動?!」


 すると、初めてカルラの声が広間に響き渡る。


「クリエイト!」


 逃げた先の壁から、岩の柱が出てくる。

 ギャンッ!

 と声を出しシュピーゲルが怯む。カルラの術技だ。


「サクマ君の推測は間違っていない。シュピーゲルは能力で高速移動をしている!」


「ミチル、インフェルノストームは使えないのか?」


「さっき塔で1度使ったから、再発動にはもう少し時間がかかりそう」


「俺は神器(ルックスビータ)の力で増強してたから、もう1度なら使えそうだ」


 しかし、この洞窟だと生命エネルギーが少ないから神器に頼った特大火力の範囲攻撃は使えない。ふと左肩がほんのり暖かくなる。アムの術技(ヒール)だ。


「なら、私が封印の力であの狼の動きを止めてみるわ」


 アムの想定外の発言に思わず驚く。


「アム、そんなことができるのか?」


「私は回復系の術士だけど、お姉ちゃんが攻撃系の術技で私にも使えそうな技があるって、教えて貰ったの」


 俺たちがこの部屋に来るまで封印されていたのと同じ術技が、アムにも使えるのだろう。


「ならそれでいこう、アムの術技でヤツの動きを止めてくれ。その後に俺がスキルで絶対に倒す!」


「分かったわ。タイミングはサクマが決めて、私はいつでもいけるから」


 向こうから騎手長が走ってこっちにやってくる。


「もしかして、良い作戦が決まったのですか?」


「あぁ、そんなとこだ。騎士団にはヤツを空中に上げるように指示をして欲しい。高速移動ができるとはいえ、足を踏み込む場所が無いと能力は使えないらしい」


「りょーーかいしました!」


 再び騎手長は走り出し、団員に指示を出す。すぐに騎士団は陣を組み、狼と交戦を始める。


「ミチル、騎士長と戦ったときと同じだ、ヤツの裏を頼んだ」


「また君が前に出るのかい?この前、サクマがこっちでやられたらって話をしたじゃないか…」


 そうだ。俺はこっちの世界で死ぬと元の世界には戻らず消滅する。襲撃があったあの日の夜、ミチルに全てを話したのだ。


「大丈夫だ、俺はそう簡単には死なないよ。それに、お前がやられたら今度は俺が1人でこの世界で戦わなくちゃならないだろ」


「ふふっ、サクマは寂しがりやだからね」


「なんだと?俺はミチル君ほど子供っぽくないからな」


 俺はニヤリと口を歪めませながら、ミチルの頭をわしゃわしゃする。


「こらーー、戦闘中にイチャイチャしなーい!」


 アムが頬をわずかに赤らめ怒鳴り出す。


「はいはい悪かったな。それじゃあアム、頼んだぞ」


 アムの方を叩き、団員たちが必死にシュピーゲルと戦っている方へと振り向く。俺とミチルは再び剣を構える。


「えぇ、分かってるわ。絶対に成功させる!」


 ザザッと地面を踏み、俺とミチルは走り出す。再びシュピーゲルの高速攻撃によって、前戦の団員たちが吹き飛ばされる。シュピーゲルの着地と同時に俺とミチルは剣技を繰り出す。


「はぁぁぁぁあ!」


 シュッ!

 今度は浅くシュピーゲルの背中にかすり傷を負わす。しかしギリギリの所で空中に回避されてしまう。しかしそれこそが俺の狙いだ。


「クリエイト!」


 カルラの術により地面から岩の槍が次々と飛び出してくる。錬成術とは見事のものだ。そして狼はその槍を足場にして、高速移動で回避行動を空中でとり続ける。そこで、1本の足場である槍が故意に砕ける。シュピーゲルは少し、焦るようにして足をバタつかせる。一斉に槍が地面に消える。


「今だ、アムッ!!」


 アムがワンドをシュピーゲルに向かって構える。


「ケーラ!!!」


 何もない空中から、無数の光の鎖が現れる。その鎖は狼の手足や首に絡まり、狼の動きを止める。空中で身動きを取れないでいるシュピーゲルに狙いを定め、俺もスキルを発動させる。


「ラディウス・クーペッ!!!」


 俺はスキルによって強化された身体能力によって一瞬でシュピーゲルの元へと跳躍する。


「おぉぉぉぉぉぉっ!!」


 高く振り上げられた光の大剣が、光の鎖で縛られた狼を真っ二つに切り裂く。


 ザシュッッッ!

 血飛沫(ちしぶき)の雨が地面を赤く染める。勝ったのだ。しかしそんなことよりも、スキル使用後は身体能力が元に戻るため、俺は落下に抵抗できないでいる。


「おわぁぁぁ!落ちるーー!!!」


「サ、サクマ君?!クリエイト!!」


 地面から滑り台が現れ、なんとか助かった。さすがは錬成術。

 俺はゆっくりと体を持ち上げ腰の鞘に剣をしまい、みんなの方を見る。


「サンキュー、カルラ…。やったなアム、ミチル」


 戦闘を終えたのになぜか辺りは静寂に包まれていた。ふと、小さな声がわずかに聞こえてくる。


「あ…、あぁ……」


 そのアムの鳴き声を隠すかのように騎手長が叫び出す。


「シュピーゲル!討伐完了ぉぉぉぉぉお!!」


「うぉぉぉぉぉぉぉお!!!」


 それに続いて団員全員も叫び出す。俺とミチルはグータッチを交わす。


「作戦大成功だな、ミチル」


「君のお陰だよ」


 俺はアムに近寄り、頭をポンポンと叩き、静かにアムが泣き止むのを待った。






(祝)第一魔境 シュピーゲル討伐!


これにてシュピーゲル国編、終了です。

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