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怒っている彼と、呆れた顔をする担任。
僕は話の流れを変えることにした。
「あの、それで教えるとしてもいつから…」
「ああ、そうだな。麻野は部活で忙しいだろうから、試験一週間ぐらい前からでどうだ?」
確かに試験一週間前になると、部活は全て休止状態になる。
部室も顧問の先生が鍵をかけ、中には絶対に入れなくなる。
「そう…ですね。じゃあ一週間前からと言うことで」
「おいっ! ボクを抜かして話を進めるな!」
どんっ!と机を叩き、彼は怒りを現す。
「お前に拒否権はないぞ? 留年、したくないだろう?」
「ぐっ!」
冷ややかな担任の視線と言葉に、彼は顔を真っ赤にして言葉に詰まる。
「と言うことだ。頑張って麻野から教われ。麻野、スマンが頼む」
「分かりました。それじゃあ…龍雅くん、これからよろしく」
彼に向かって微笑みかけたけれど、彼はぷいっと横を向いてしまう。
「お前は小学生か? 教わる相手に対しての態度を取れ!」
ぎゅう~
「いだだだっ!」
あっ、痛そう。
担任に頬を思いっきりつねられた彼は、渋々僕を見る。
「…よろしく、麻野」
…はじめて名前を呼ばれた。
思わず胸が熱くなるけれど、一度歯を強く噛んで、そのことを知られないようにする。
「…うん、よろしく」
――こうして彼と僕は急接近することになった。