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千波くんは遠い目をしながら言葉を続ける。
「アキってサッパリあっさりした性格だから、ストーリーの濃さを描けないんじゃない?」
「そうだな。読み応えが無いとはよく言われる」
そして僕は逆に絵の才能がない。
美術の成績はともかく、マンガとしての絵が描けない。
だからこそストーリー部門で頑張っている。
「でもアレだな、二人は欠けている部分を補っているから、良いパートナーだな」
「うんうん。近い存在の人がパートナーだと、良い作品作れるんじゃない?」
改めて松原くんと千波くんに言われると、ちょっと照れるな…。
「そっそうだと良いんだけど…」
「まあ将来は二人でマンガ家になれたら良いんだけどな」
「おおっ! アキ、タクにプロポーズか?」
「ストレートだな」
「ぶほっ!?」
松原くんと千波くんの言葉に、ハンバーグがのどに詰まった。
慌てて水で流し込み、僕は向いに座る二人を睨み付ける。
「ビジネスパートナーって言ってくれないかな?」
ギロっと睨みつけると、流石に二人は引きつった笑みを浮かべる。
「わっ悪い悪い。ちょっとした悪ふざけだって」
「そうそう。でもタクだってまんざらじゃなんだろう?」
千波くんの言葉を聞いて、僕はちょっと考えてみる。
…まあ確かに家は近いし、アキちゃんとは付き合いも長い。
将来的には二人で組んでマンガ家になるというのも、良いとは思う。
「…でもアキちゃんはすでに出版社から声がかけられるほどの実力があるから良いけど、僕はなぁ」
「えっ? アキ、もうそんなところまでいってんのか?」
「だが俺の場合、あくまでも絵の担当者としてだ。絵の実力で言えば、松原だって相当なもんだろう」
「ああ、松原くんの絵って少年誌向きだもんね」
一度松原くんの家にアキちゃんと行った時に、描いたマンガを読ませてもらった。
ノートにシャープペンで描いた作品だったけど、結構良く描けていたと思う。




