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でも彼自身がオタク嫌いならば、話しは違う。
「僕はキミの嫌いなタイプだし、一緒にいるときっと苦痛を感じてしまうようになる。だからその前に…」
「なっ何を勝手に…!」
「うん、勝手だね。でもキミも周囲に言えないような友達は持たない方が良いよ」
「くっ…!」
彼はとうとう涙をこぼし、僕に背を向け、走って行った。
…昔、親は子供によくこう言っていたらしい。
―友達は選びなさい、って。
コレって、タイプの違いを見極めろって意味もあるんだろうなぁ。
「ふう…」
彼の姿が見えなくなった後、深くため息を吐く。
好きな人を傷付け、泣かせたのに……どこかスッキリしている自分がいることに気付く。
コレでもう、好きなだけ趣味や自分のやりたいことに時間を費やせるのだと…ほっとしている自分がいる。
「最悪、だな…。僕…」
頭を軽く振った後、心配そうな顔でこちらに来る部長が眼に映った。
「あれ? 部長…」
「…ゴメン。立ち聞きするつもりはなかったんだけど、なかなか来ないから心配になっちゃって」
「あっ、もうそんなに経っていましたか…」
部長の顔を見ると、安心するなぁ。
「…ちょっと、休んで行こうか」
部長のススメるまま、僕は休憩場のイスに座った。
部長が缶コーヒーを奢ってくれた。
「すみません」
「いやいや。オタクの風当たりが厳しいことは、知っているからね」
「部長も、ですか?」
「まあ多少は。でも彼の場合、ちょっと酷そうだねぇ」
部長は苦笑する。
確かに彼は感情表現が豊かだしな。
「悪いコではないんですけど……。オタクにトラウマがあるみたいでして」
そこで僕は彼がオタク嫌いになった経緯を話した。
「…ああ、結構そういうの、あるから。まあお互い、大人になれば落ち着くんだろうけどね」
…彼の場合、まだまだ落ち着かないようだ。
「でもああいうふうに切り捨てて、良かったのか?」




