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7

僕を見ていることはあっても、一度たりとも声をかけてくれたことはなかった。


そして遊びに行く約束も…一度めは生徒指導室。


二度目はこの廊下、三度目の今回もここだ。


ここは文化系の部室が多くて、一度入ったらなかなか人は出てこない。


そういう時間と場所を彼は考えてまで、ここに来たのだ。


それはすなわち……僕との付き合いを、誰にも知られたくない、からだ。


…気付きたくないことに、僕は気付いてしまった。


「僕と一緒に遊んでいれば、いずれは地元の友達の時のように、誰か知り合いに知られてしまうよ? それでも良いの?」


「………」


彼は唇を噛み、言葉を出さない。


それは迷いがあるから。


「良くないよね? キミの為にも、僕の為にもならない。一緒に遊んでくれたのは嬉しかったけど……もういいよ」


もうお互い、住む世界に戻った方が良い。


「じゃあお前は何でボクを見ていたんだよ!」


「っ!」


今度は僕が言葉を失う番になった。


彼は涙目で、震えながらも真っ直ぐにボクを見る。


「ずっと…ずっとお前の視線を感じていたんだ。気付けばお前は僕のことばかり見てて…」


「…ゴメン。無意識、だったんだ。でも今は見ないようにしているだろう? キミの言う通りに」


「そっれは……」


再び彼は沈黙する。


「気に病んでいたのなら、本当にゴメン。悪気は全く無かったんだ。ただ…何となくキミを見てしまってて、それがキミにとって不愉快になるなんて、言われるまで気付かなかった。本当に、ゴメン」


僕は心から詫びて、頭を下げる。


「あっ…」


「勉強会のことは絶対に誰にも言わない。あっ、アキちゃ…彰人くんには話しちゃったけど、彼は口がかたいから大丈夫」


僕は顔を上げて、弱々しい笑みを浮かべる。


「だからもう、僕のことは気にしないで」


「何だよ、それ…」


僕だってこんなこと、本当は言いたくなかった。


彼のことが好きだから、一緒にいられるのは本当に嬉しいし楽しい。


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