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もっと早くに彼がオタク嫌いであることを知っておけば良かった。
それなら僕の気持ちも、早くに決着がついていただろう。
まさか彼と仲良くなればなるほど、知らされ、また気づかされるとは思いもしなかったから…。
「きっと龍雅くんが僕の行っている店とか行けば、物凄くイヤだと思うんだろうね」
「…それは…」
「うん、無理にとは言わないし強制もしない。元々できないしね」
オタクの店なんか、彼は眼にも映したくはないだろうな。
でも僕にとっては大事で、大切で、愛おしい場所。
そこを悪いように言われたらきっと…彼を嫌いになる。
それだけはしたくなくて、今まで会話にも出さないように注意してきた。
でももう、彼との付き合いはここまでにしておいた方が良いのかもしれない。
仲良くなって気がゆるめば、いつかは口に出してしまう。
そして彼に軽蔑の目で見られるのは、耐え難い苦痛だ。
でもそれでなくても……彼は僕をある意味、傷つけている。
「龍雅くんってさ、何でここにいるの? 部活、やっていないよね?」
「えっ? そりゃあ麻野がここにいるから…」
「遊びに誘ってくれるのは嬉しいけど……でも人前では誘わないよね。それでなくても、教室にいる時から話しかけてもこない」
こういうふうに話をするのは、いつも人気のない場所で。
「龍雅くん…ってさ。本当は僕と付き合いがあること、周囲の人には知られたくないんだろう?」
素直な彼は眼を見開き、ビクッと体を震わせた。
「ぼっボク、は……」
そして軽く震えながら、俯いてしまう。
…ああ、やっぱり。
思っていたことが的中して、僕はため息を吐くしかない。
……試験の時までは、まだ良かった。
赤点常連の彼が、オタクのクラスメートに勉強を教わっているなんて、口が裂けても言えないことだった。
それは彼の名誉に関わることだからと、僕も納得していた。
でも……その後が問題だった。
彼は一度も、教室では話しかけてくれない。




