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「ゴメンね。僕じゃない人を誘うと良いよ」
彼に誘われたのなら、普通の人は喜んで付き合うだろう。
「…ボクはお前が良いのに」
「えっ?」
「お前はボクと遊びたくないのかよっ!」
…どうも彼は、プライドを傷付けられると思考能力が落ちるみたいだ。
言っていることが、まるで子供…。
「えっと…僕と遊んでも、龍雅くんの方がつまらないと思うよ?」
「そんなことない! 実際、2回とも楽しかったし」
あっ、彼もそう思ってくれたのなら、嬉しいな。
「そう。僕も楽しかったよ」
「ならっ…」
「でも今は無理。僕一人のことじゃないから、余計に、ね」
コレは部の為でもある。
例えば僕とアキちゃん二人だけのことならば、何とか都合をつけて彼と遊んだだろう。
…でも他の人も巻き込んでいることに、無責任な行動はしたくない。
「…麻野はさ、やっぱりオタク仲間と一緒の方が楽しいんだ」
俯きながら呟いた彼の言葉は、否定できない。
彼と遊ぶのは楽しかった。
でも…ああいう遊びはたまにだからこそ、楽しめた。
もしずっと、彼がああいう遊びを誘ってきたら……僕はどう判断するか分からない。
そう、例え僕が彼のことを好きでも、だ。
僕は僕であることを変えられないから…。
「…でも龍雅くんだってそうだろう? オタクの僕といるより、話の合う人といた方が楽しいに決まっている」
「でっでもお前と他のヤツは別だし…」
「うん、世界が違うからね。それに…龍雅くんはオタクが嫌いなんだろう?」
「嫌い、だけど…」
彼はどこまでいっても正直だなぁ。
自分を変えない真っ直ぐなところは、やっぱり好きだと思う。
憧れていた、ずっと、彼に。
明るくてカリスマ的で、でも人間として欠点があっても強い彼に、いつの間にか惹かれていた。
でも思いを口に出すつもりは全く無かった。
だから見ているだけ、だったんだ。
でもそれも彼に気付かれて以来、止めていたけれど…。




