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それからというもの、必死にストーリーを練り上げることに集中した。
土曜日も部室に来て、部員達と話し合いながら書く。
日曜日は自分の部屋で、パソコンと睨み合い。
そして月曜日にストーリーを提出して、部長の審査が終わる三日間は平和に過ごしていた。
だが結果発表の日、僕の今後が一気に変わる。
「えっ? 僕のストーリーに決定ですか? しかも絵はアキちゃん担当?」
「うん、今回タクのストーリー、純愛っぽくて良いよ。この話しと彰人の絵が合わされば、凄く良いと思ってね」
ウチの部長はとても温厚な人。
少し太っててメガネをかけている姿は、オタクっぽい感じが現れているけれど、優しい人でもある。
マンガの研究に特に熱心で、尊敬できる先輩だけど…。
「でも古臭くないですかね?」
「そこが逆に新しくて良いと思うよ。それに主人公が好きな男の子の為に成長する姿が良い。こういうところ、好きな人は多いだろうしね」
「はあ…」
まだ信じられずにアキちゃんの方を見ると、アキちゃんは嬉しそうに笑っていた。
「だから今回はタクと彰人で作品を作り上げる。これからしばらくは部室にこもってくれ」
「わっ分かりました」
投稿作品の担当者になれば、マンガを投稿するまで忙しくなる。
「ネームはすでに彰人が描いてきたから、これを良くする為に会議をはじめるぞ」
担当者になれたのは嬉しいけど…また忙しくなるな。
それこそ自分の時間なんて持てないぐらいに。
でも頑張ろう!
アキちゃんの夢は、僕の夢でもあるんだから!
僕は拳を握り締め、部長に視線を向けた。
今日はとりあえず会議で終了。
アキちゃんは今日話した内容にネームを描き変える為に、部室に部員達と残っている。
僕は明日から頑張る為に、今日は帰りにアニメイトで買い溜めしていくつもりだった。
廊下を歩いていると、後ろから部長に声をかけられる。
「タク、どこかに寄って行くのか?」




