世界の違い
週明け、アキちゃんと会うと、眼を丸くされた。
「随分すっきりしたな」
「うん。頭が軽くて楽」
学校へ行く道の途中、アキちゃんに彼と出掛けたことを話した。
「そうか。楽しかったなら良いが…」
けれどアキちゃんは暗い表情を浮かべる。
「どうかした?」
「…いや。俺が敏感になっているだけかもしれないが、龍雅のオタク嫌いが酷いんじゃないかと思って」
「あっ…」
確かにそれはある。
そもそも出掛けた2回とも、彼の趣味に合わせたようなものだ。
僕は彼に合わせられる。
だけど彼は……無理だろう。
「まあ遊びも良いが、そろそろ締め切りだぞ?」
「あっ! そうだった!」
ストーリーの締切が近かった。
早く提出しなければ、落ちてしまう。
何せマンガ担当に引き継がせなきゃいけないので、ストーリーは早めに仕上げなければならないのだ。
「そろそろ本腰入れなきゃなぁ」
「やっぱり書くことにしたのか?」
「うん…」
ウチの部は何も、全ての応募に投稿するわけじゃない。
自分の得意分野や書けると思ったものだけやるのだ。
…じゃなきゃ、体が持たないし。
ストーリーを出すのも僕だけじゃない。
他にも提出する人がいて、そこから部長が投稿する内容を決める。
その後、絵を描く希望者を集い、その中から作品に合った絵を描く人を選ぶのだ。
だからストーリーの遅刻は、それすなわち即落選へと繋がる。
「タクのストーリーが決まったら、俺、挙手する」
「えっ? …まあアキちゃんは絵の描き分けが上手いから、少女マンガでも充分通用すると思うけど…」
何も僕じゃなくても、他の人の作品だって良いと思う。
そんな僕の考えを見抜いたのか、アキちゃんは僕の頭を優しく撫でる。
「俺の夢の一つ、知っているだろう?」
「あっ、うん」
アキちゃんは僕の原作でマンガを描いて、それを雑誌に掲載されるのが夢だと言ってくれている。




