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撮影場所は衣装部屋よりも奥にあって、あまり広くない場所だった。
「狭くて悪いね。コンテスト用の写真って全身が前と後ろの二枚、後は頭をいろいろな角度から撮って五枚を送ることになっているから」
あくまでも主役はヘアスタイルだから、広くなくても充分なんだろう。
撮影するのもデジカメだし。
「そういえば麻野くんはコスプレとかする?」
「…彼には秘密にしてくださいね。まあ…時々はします」
「秘密にする。でも俺のお客さんの中にはそういう人も結構いてね。いろんな髪型にできるから、俺は別に偏見とかはないから」
確かに青年が僕に対する空気は柔らかい。
「まっ、変な言い方すると上客でね。翔はあまり良い顔しないけど、個人的な付き合いもあるし」
「やっぱり龍雅くん……オタクは嫌いなんですね?」
「嫌いと言うか、苦手な部類なんだと思うよ」
苦笑を浮かべながら、青年は写真を撮る。
「実は翔と俺は昔馴染みなんだけどさ」
彼には内緒、という条件で、青年は話してくれた。
昔、彼は一つ年上の少年に憧れ、懐いていた。
その少年は頭も良く、運動神経も良く、顔も良い。
しかも家柄も良くって、カリスマもあった。
…だがある日、オタクの友達ができてしまい、少年は一変する。
あっというまにオタクへと変わってしまったのだ。
それからというもの、彼はオタクを毛嫌いするようになったらしい…。
…オタクの感染力って、凄まじいからなぁ。
「でもオタクって趣味にお金を使うから、結構良い所に就職したりするんだよね。別にプータローで遊びまくっているわけじゃないんだし、俺は良いと思うんだけど」
でも彼にとっては、憧れの少年がオタクへと変わってしまったことは、ショック以外の何物でもなかったんだろう。
あっ…だからかな?
アキちゃんをどことなくイヤがるのは。
アキちゃんはオタクであることを抜かせば、優秀な人だ。
もしかして少年とアキちゃんを、どこか重ねているのかも。




