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「…うん、そうだね。僕もそういうの良いと思うよ!」
僕は嬉しくなって笑顔で賛成した。
すると眼を丸くした彼は、また僕から眼をそらす。
あっ…あんまり見るなって言われていたっけ。
もう勉強会みたいに仕方ない理由とかないし、見られていても…不愉快か。
「じゃあもうそろそろ僕は行くね」
「えっ? もう行くのか?」
「? うっうん。まだストーリー制作の途中だから。アキちゃんも待たせているし」
「……石津、か」
あっ! …アキちゃんの話題って地雷だった…。
ストーリーのことで頭がいっぱいで、いろんなこと抜けている、僕!
「あのさ、ちょっと聞いていい?」
「うん、なに?」
「アイツと出来てんの?」
「……んん?」
それは一体どういう意味だろう?
「アキちゃ…彰人くんは前にも説明したけど、僕の幼馴染で親友、趣味仲間だよ?」
「それはもう聞いた! だけどその…こっ恋人なのかよ?」
びゅおー…
…今一瞬、吹雪の風がふいたような…。
「…恋人? 僕とアキちゃんが?」
言っているうちに、自分の顔も声も険しくなっていくのが分かる。
もしかしてこう言うのって、僕達がオタクだから、かなぁ?
…いや、それは女子限定……とも言えないか。
まだ変な偏見を持たれているらしい。
僕は深く息を吐いた後、首を横に振った。
「それはありえないよ。まあお互い恋人がいないけど、だからと言ってそんな関係じゃないし」
「でも仲良いだろう!」
「そりゃあ付き合いは長いからね。家も隣同士で、趣味も合うし」
「でも…ただの友達にしては、その…親しげと言うか……」
珍しく彼が言いよどむ姿を見て、ああ、と思い出す。
僕がアキちゃんと呼んだり、親しげにしているところで勘違いさせたか。
まあ彼の友人達の中ではこういうタイプが存在しないんだろうな。
「違うよ。確かに二人でいることは多いけど、そういうんじゃないから」




