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「…妙なところで鍛えた結果を出すんだな」
「その言葉、そっくりそのまま返すよ」
アキちゃんだってゲームにハマれば連日徹夜続きをする。
それでも顔色一つ変えずに登校するんだから、お互い様だ。
しかしアキちゃんはどこか疲れたため息を吐く。
「でもさすがに、まだこの歳から栄養ドリンクに頼るのはどうかと思うがな」
「ううっ…!」
マンガ研究会は部費で栄養ドリンクを買う。
理由は…ずっと元気でいたいから。
趣味を楽しむ為に……。
「あっ、僕の肌は手入れしているからだから。別に趣味に没頭しているからじゃないよ!」
そこは一応変えておく。
「手入れ? また何で?」
心底不思議に思ったんだろう。
アキちゃんは絵を描く手を止め、僕の頬に触れる。
細いけれどしっかりしたアキちゃんの手の温もりに、くすぐったくって身を竦める。
「本当にスベスベだな」
「あっ…この間、龍雅くんに肌の手入れをしろって言われて、いくつか化粧品を買ったんだ。そのおかげかな?」
「龍雅はそういうところが得意分野だからな」
アキちゃんは優しく笑って、僕の頬を軽くつねったり撫でたりする。
「あははっ。アキちゃん、くすぐったいって」
軽く笑っていると、ふとアキちゃんの表情がかたまった。
見ると視線を僕ではなく、外に向けている。
「アキちゃん、どうか……うわっ!?」
僕は驚いて立ち上がった。
この特別棟の向かいは、校舎がある。
そしてその二階は…僕の教室があった。
教室の窓から何故か彼がこちらを睨んでいて……僕は立ち上がったまま、硬直する。
すると彼は背を向け、教室を出て行った。
「まっまさか全部見られてた?」
「だろうな。俺が気付いた時には、すでに睨んでいたし」
ああ……また彼に『気持ち悪い』って思われているんだろうな。
こういうスキンシップ、普通の男子高校生はしないだろうし。
「なあタクはコンタクトにしないのか?」
イスに座り直していると、アキちゃんがおかしなことを言い出す。




