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そこを押さえれば、非力な僕だって痛みを与えることはできる。
ナイフを足で遠くへ払い、そのまま地面を蹴りつけ、三人目のこめかみに蹴りを入れた。
ぐるっと白目をむき、泡をふきながら地面に倒れる。
「はあ…。運動不足にはキツイなぁ」
呟きながらも地面に着地するとすぐに振り返り、彼らの元へ駆ける。
「えっ?」
驚いている彼らの横を通り抜け、不意打ちしようとしていた四人目の一人の腹に膝を入れる。
「ぐほっ!」
「はあ…」
「麻野、危ないっ!」
彼の声に驚いて振り返ると、五人目が僕に向かって拳を振り上げている最中だった。
「くっ!」
避けられないことを察した僕は咄嗟に腕でガードしようとした。
「がっ…!」
しかし五人目は後ろから攻撃を受け、地面に倒れる。
「あっ、アキちゃん」
「タク、大丈夫か?」
アキちゃんが五人目の首に手刀を叩き込み、気絶させた。
「うん、でもどうしてここに?」
「買い物。何か騒いでいると思ったら、お前が暴れているのが見えて、驚いた」
そう言いながらアキちゃんは表情一つ動かさず、素早い動きで最後の一人に向かって行く。
「ひっ!」
そして地面を蹴り、六人目の頭に跳び蹴りをくらわした。
六人目は3メートルほど吹っ飛び、意識を手放す。
「やっぱりアキちゃんには敵わないなぁ」
「タクは最近、体を動かしていなかったからな」
「試験最中は無理だよ」
「じゃあ他の日なら、やるんだな?」
「うっ…!」
イタイところを…。
「麻野、それに石津…。お前ら、何で…」
あっ、彼達のこと、忘れてた。
「ああ、僕とアキちゃんが幼馴染だってことは言ったよね? アキちゃんの家って、格闘技を教えている家なんだ」
「格闘技?」
「うん。柔道・空手・合気道・剣道とか、いろいろ」
そう言いながら彼に近付き、メガネを受け取ってかける。
「ああ、やっぱりメガネがあると落ち着くな」
しみじみ思う。
こういう戦いの場では、相手の闘気を感じながらやるから、視力はアテにしていない。
「って言うか、二人とも、強いね」
松原くんが未だショックから抜けきらない顔をしている。
「うん。僕もアキちゃんも、物心つくまえから格闘技やってたから」
「おっオタクなのにかっ!」




