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「コイツっ、なめんなよっ!」
不良の一人が、彼の胸ぐらを掴み、拳を振り上げた。
「翔っ!」
何人かは声をかけるが、体が硬直して動けない。
そして彼も固まったまま、悔しそうに歯を噛み締めた。
どかっ!
「ぐはっ!」
しかし彼を殴ろうとした不良は、蹴られて5メートルほど吹っ飛んだ。
「ふう…。久し振りに体を動かすと、クルなあ」
僕は振り上げた足をブラブラと振る。
「………えっ? 今の、麻野が?」
その場にいる誰もが、呆然とし、僕に視線を向ける。
…あんまり見られるのは慣れていないんだけど。
「まあ、ね」
僕はかけているメガネを外し、彼に渡した。
「終わるまで持ってて」
「あっああ…」
メガネを外すとロクに見えないけれど、技を使うのには邪魔になる。
彼はメガネを受け取ると、手を離した。
僕は一歩、不良達の前に出る。
「さて、遊んでほしいんだったね? 僕で良ければ相手になるよ」
髪をかき上げ、挑発するように不良達に笑いかけると、ハッとしたように不良達は我に返る。
「てってめぇ!」
一人目は細身の長身だけど、今向かって来るのは大柄な男。
殴りつけてくる手を避け、その腕を掴み、裏膝に蹴りを入れる。
「うおっ?!」
体勢を崩したその背に、軽く飛び上がってかかと落としをくらわした。
「ぐはっ!」
二人目は地面に顔からぶつかり、動かなくなる。
「ヤロウ…!」
三人目は何と、サバイバルナイフを取り出した。
「あっ麻野っ!」
「大丈夫、動かないでね。邪魔になるから」
心配げに声をかけてきた彼に言葉をかけると、今度は僕から動き出す。
三人目はナイフを横に構え、真っ直ぐに突き出す。
けれど動きが大雑把な為、視力が悪い僕でも軽く避けられた。
ナイフを持っている手首を捻り上げ、ナイフを離させる。
「ぐあっ!」
いくら体格が良くても、人間の体にはいくつもの弱点がある。




