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「アイツら中学時代、ちょっとの間だけ翔とツルんでいたんだ」
「でも学校でタバコを吸うわ、酒は飲むわ。素行に問題大有りで、翔はすぐにアイツらから離れたんだ」
…なるほど。昔のツレというのはあながち、違ってはいないんだ。
思わず彼を見ると、何故か気まずそうに顔をそらされた。
「…何だよ。そんな眼でボクを見るなよ!」
「えっ?」
へっ変な眼で見てたかな?
思わず顔を撫でると、今度は話題がこっちにきた。
「何だ、翔。そいつ、パシリ?」
…彼と並んでいると、どうしてもそう見られるんだね。
心の中では仕方ないと思いつつも、涙をこらえる。
「違う! ただの…クラスメイトだ」
それは違っていないな。
「へぇ…。何かオタクっぽいな」
「お前、そういうタイプ、嫌いだったろう?」
……彼のオタク嫌いは、中学でも有名だったんだ。
根深いんだな…イロイロと。
「そうだけど、お前らには関係ない! 行こうぜ!」
「おっと!」
再び歩き出そうとしたけれど、六人のうち、三人が僕達の目の前に立ちふさがった。
「…何のつもりだよ?」
彼のまとう空気が、怒りに満ちるのを感じる。
握られている手に、力が込められる。
「ちょっと遊ぼうぜ」
「断る。クズはクズ同士で遊んでな」
「なっ!?」
…こういう時まで、本当に彼らしい。
けれど不良達は顔を真っ赤に染め、怒りの表情を浮かべる。
……正直思って、松原くん達はケンカには弱そうだ。
頼れる者がいなくても、彼は彼らしくいるんだろうな。
自分を絶対に曲げない。
そういうところが眩しくもあり、羨ましくもある。
彼はこれで不良達にボコボコにされても、きっと後悔なんてしないんだろう。
僕は顔だけ振り返り、青い顔をしている千波くんにコッソリ尋ねる。
「龍雅くんってケンカは…」
「あんまり…」
力なく首を横に振るところを見ると、全くダメそうだ。




