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「あ~…、アイツ、そういう恩は律儀に返すからなぁ」
「麻野くんも災難だったね。『気持ち悪い』って言われた相手に勉強を教えるなんて…」
「でっでも世間一般じゃ、そういう印象を持たれてもしょうがないかな~って」
苦笑しながら言うと、今度は二人がため息をつく。
「まっ、それも今日限りだと思うから」
「そうそう。それに翔は一度恩を受けた相手には一応筋を通すから。もうそんな辛い言葉はかけてこないと思うよ」
「うん…。あっ! そろそろ戻った方が良いかも」
ケータイで時間を確認すると、30分以上経過していた。
「おっと。話が楽しかったから、時間を忘れてた」
「麻野くん、もし良かったら今度オレ達と一緒に遊ばない? いろいろまた話を聞きたいな」
「良いよ」
僕は二人と電話番号やメアドを交換して、立ち上がった。
彼らはまだゲームコーナーにいた。
声をかけようとした時、例の三人の中の一人が、僕の名前を出した。
「なあ翔、あの麻野ってみたいなタイプ、嫌いじゃなかったのかよ?」
「嫌いだよ」
「えっ…?」
僕は思わず、機械の影に隠れた。
松原くんと千波くんは他の場所に、彼らを探しに行っている時だった。
彼は相変わらず機嫌の悪そうな顔と声で続ける。
「ああいう気持ち悪いタイプ、ボクは嫌いだよ」
…ああ、三度目の正直。
きっと勉強会中は我慢していたんだろうな。
「じゃあ何で今日一緒だったんだよ?」
「そうだぜ。オレ達と遊べば良かったのに」
「何かアイツにあるのかよ?」
「…別に。ただの気まぐれ」
…だろうね。薄々とは感じていたよ。
でも僕は…凄く楽しかったんだけどな。
「じゃあもうあんな根暗に付き合うなよ」
「翔までおかしな眼で見られるぜ?」
「そうそう」
……はっきりと『違う!』と言い出せないのが、オタクの悲しいところだな。
「あっ、麻野くん」
「アイツら、見つかったか?」




