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『そんなの、気にすることない』
家に帰ってからアキちゃんに電話でそのことを告げてみると、あっさりと却下された。
…このスッパリ感、彼とアキちゃんって案外似ている気がするんだけど…。
『俺もタクもこの呼び方できたんだ。まあお前が気になるなら、人前では気をつけたらどうだ?』
「う、ん…。一応気をつけてはいたんだけどね」
勉強を教えるのに夢中になって、ボロが出てしまった。
彼が心を許してくれていると思ったら、つい…。
『まっ、そんなの龍雅に言われる筋合いもないしな。勉強会が終わったら、そんなことも言ってこないだろう』
まあそうだろうね。
…でも彼が声をかけてくれなくなることに、僕は少なからず寂しさを感じていた。
『ああ、そうそう。部長がな、お前が休止前に提出したプロットを見て、気に入ったらしい。早速試験が終わったら、ストーリーにしてくれってさ』
「あっ、そう? 分かった」
ちなみにアキちゃんは2年生ながらも副部長なので、3年の部長とはよく話をするらしい。
『まっ、無理せず頑張れよ。何かあれば、また相談に乗るし』
「うん、ありがとう。アキちゃん」
そこで電話を切って、僕は試験勉強を始める。
彼に教えといて、順位が下がるなんて真似はしたくないし。
「それにしても…」
いつも見ていて分かっていたことだけど、彼は本当にはっきりと物を言う。
アキちゃんもそういうタイプだけど、彼は…気を使わないタイプだし。
近付けば傷付けられる。
だけど意識せずにはいられない。
猫のような気ままな彼と、僕ってやっぱり相性が悪いのかな?
「っていけない! 真面目に勉強しなくちゃ!」
彼のことばかり考えている場合じゃない。
いくら彼と二人っきりで、勉強会をしているなんて、オイシイシチュエーションになったからと言って……浮かれている場合じゃないよ、本当に。
…でも一応彼は勉強できる僕に一目置いてくれているみたいだし、これ以上、嫌われない為にも頑張ろう!




