突き刺さった彼の言葉
「あのさ、もうボクのこと見ないでくれる? 気持ち悪いよ」
「えっ……」
突然言われた言葉に、僕はただ、眼を丸くするしかない。
「気付かれていないと思ってた? あんなに毎日、いっつもボクのこと見ていたのに」
目の前にいる彼は、とてもイヤそうな目付きで僕を見る。
「えっと…あの……」
何か言わなくてはいけないのに、言葉がのどに詰まって出てこない。
「悪いけどボク、お前みたいな趣味の持ち主って好きじゃないんだ。だからもう、ボクのこと見るなよ!」
そう言い捨てて、彼はこの場から走り去って行った。
残った僕は、ただ呆然とするしかない。
「気付かれ……てたか。当たり前、か…」
ガーンガーン…と、除夜の鐘が僕の中で鳴り響く。
「はあ…。僕だってわざと見ていたワケじゃないんだけどな」
ただ気付けばいつも見てしまっていた。
無自覚の内に、彼の姿を追い求めてしまっていたのだ。
「はあ……」
僕、麻野拓海と、彼、龍雅翔は同じ高校2年で、同じクラス。
だけどタイプは全く違う。
僕は世間で言うところのオタク趣味。
部活もマンガ研究会に入っていて、バイトも趣味の関連で古本屋に勤めている。
バイト代のほとんどが趣味で消えると言っても過言じゃない。
だから自然と僕の友達も、僕と似たような趣味の持ち主ばかりだった。
でもみんな優しいし、彼が言うようなタイプじゃない……と思う。
彼は多分、僕達に良い印象を持っていないんだろうな。
一方彼は、派手なタイプだった。
性格も外見も華やかで、友達もそういうタイプが多い。
バイトはモデルをしていて、いっつも大勢の人に囲まれている。
オシャレとか流行物に興味を強く持っていて、外見にも気を使う。
彼の友達もきっと、僕達にはあまり良い感情を持っていないだろうな…。
正反対のタイプのせいか、お互い結構深い溝ができているし。