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金髪と魔剣と冒険とカイルのハーレム!!  作者: オジsun
五章 恋する怒りの女剣士
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四十話 ユウナの決断

 風竜神を倒すべくカイルは剣気を全開で纏い突撃した。


 かける......翔る。翔る。翔る!!


 アンジェリーナの援護魔法で底上げされたカイルの身体能力は、もはや人知を越えていた。

 瞬動脚も使わず音速に到達したカイルは、懐から最後の《魔神(バァリロリロ)の聖水》を取り出して握り潰す。


 《焔と鉄の精霊よ・集まり・合わさり・混ざり給え》


 使う属性は焔と鉄の合成属性。

 どちらも希少な特殊属性同士の合成。

 それは、もうカイルにしか使えないといっていい固有属性へと昇華している。


 《滅亡と破壊の星となりて》


 そして、使う魔法はカイル最強の《メテオ》系。


 《有象無象を殲滅し給え》


 焔魔法はシルフィアから、メテオ系魔法はアンジェリーナから、使うなと言われていた魔法。

 それを解った上でカイルは発動した。


 《メタル・ボルカニック・メテオ・改!!》


 超巨大な焔鉄の星が、縦穴をえぐり取り、竜巻を燃やし飛ばし、

 風竜神を丸ごと包み込んだ。


 気絶から目を覚ましていたマリンはその光景をみて思う。


 ......やりましたー!


 だが......。


 ズバァァァン!!


 風竜神がたった一回。

 羽根を羽ばたいて生み出した、強風が鉄焔を吹き飛ばした。


 「解ってたよ! だから使ったんだ! クソドラゴン!! アンナァアアアアアーーッ!!」


 しかししかし、その瞬間こそ、カイルは狙っていた。

 鉄焔の星を爆散させ、それに紛れて接近する。


 そんなカイルの動きに息をピッタリと合わせて、アンジェリーナが詠唱。


 「《契約に従い我が魔力を媒介に・汝が主の前にいでよ!!》 武装召喚! 現れよ《断魔剣!!》」 


 言葉を交わすことなく連携を成立させたアンジェリーナとカイル。


 カイルは目の前に空間を裂いて現れた断魔剣を握り締め、空間を斬り裂いた。

 それで、風竜神が生み出していた暴風が一瞬だが消えて無くなる。

 その隙さえあれば、近づくには十分過ぎた。


 「喰らえ! レンジとユウナの借りを今! ハァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!」


 風竜神が生み出す風は全て魔力。

 だからこそ、断魔剣なら切り裂ける。


 ......普通なら。


 カイルもアンジェリーナも、解っていなかった。

 風竜神は神級の存在である事を。


 そこまで至れば常識は通じない。

 

 ガンッ!


 あらゆる魔力切り裂く断魔剣が、風竜神まで後、数セルチの所で止まった。

 

 「なっ!?」


 断魔剣には風竜神の生み出す風は切り裂けても、風竜神が纏う風の防壁は切り裂けなかった。

 風竜神にとって暴風を生み出すことは生態であって防御ではない。 

 本当の防御は身体を数セルチ纏う見えない大気の壁。


 「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオーーッ!!」 

 「......ッ」


 ......死ぬ。

 

 至近距離で風竜神と目を合わせたカイルは己の死を悟った。

 風竜神は大きくゆっくり息を吸い込み、ブレスをはこうとしている。


 しかし、全力の一撃を放ったカイルはそれを防ぐ間もなかった。

 

 死のブレスが吹き荒れる。


 《水球陳》


 その瞬間。

 マリンは咄嗟に水龍丸を抜いて、カイルの身体を水で覆った。


 ズドガァァァァアアーン!!


 吹き飛ばされたカイルの身体をマリンが受け止める。


 「カイルさぁん!!」

 「......っ。......あ......っく......マリン......その剣......!?」


 マリンの水球陳のお陰で即死を免れたカイルだが、

 ダメージは深刻で動ける状況では無かった。

 

 《水の精霊よ・癒しの聖水で・彼の者を癒し給え......アクア・ヒール》


 マリンの使う回復魔法は、七属性で唯一回復を行える水属性の回復魔法。

 水龍丸の力で強化されている事でカイルの一命を取り留めることに成功する。


 「すみません。カイルさん。私にはこれが精一杯です」

 「そんなことは......良いんだ。それより......さっきの爆風で瓦礫も吹っ飛んだ。マリン一人で良い。逃げろ」

 「......」


 カイルに言われてマリンは一瞬、視線を洞窟へ動かして、今なら逃げられることを知る。


 「ユウナやレンジ。......アンナも。皆ここで死ぬ事は覚悟をしている......けど、マリン。お前は......命をかけて戦う理由なんか......」


 カイルはずっと、マリンの事で迷っていた。

 マリンを戦いの世界に引き入れたのは紛れもなくカイルだったから。


 カイルがマリンに聖剣を抜かせたのは、戦わせる為じゃない。

 マリンに生きる希望を持ってもらいたかっただけ。

 マリンの夢は、戦いにはない。


 ここで死ぬ必要はない。

 マリンだけは逃がしてあげる必要があった。

 それは、戦いの世界に引きずり込んだカイルの責任......


 「カイルさん!」


 必死に逃がそうとするカイルの言葉を遮って、背を向けた。


 「カイルさんだって、私を見捨てれば戦わないで良かったはずです」

 「......それは!」

 「誰も見捨てない。誰も死なせない。そんなカイルさんの夢を私は叶えたい。それが素敵なことだと思うから!」

 「......」


 水龍丸を抜いたマリンに恐怖の文字はない。

 それこそがマリンが水龍丸に望んだ力だから。


 「私に戦う理由がないと言うなら!」

 

 マリンは水球陳を展開しながら、カイルに言う。


 「約束してください。私と......この先もカイルさんは友達で居てくれると、ずっと一緒にいても良いと」

 「......」

 「私は、友達のために戦いますから!」


 そういってマリンは風竜神に立ち向かった。


 「グルルルルルォオオオオオオオオオ」


 マリンの持つ剣に一瞬風竜神が怯むのを、カイルは見た。


 「そうか! 望叶剣は神話級の魔剣! それなら互角に戦える!!」

 「ふふふっ。好都合です。カイルさん。私の勇姿を見ててください!!」

 「バカ! やめろ!! その力は命を削る!」

 「死ぬのが怖いならとっくに逃げていますよ!」

 

 恐怖の無いマリンはそれゆえに怯むことしない。

 カイルだって使うことを躊躇う望叶剣の力をいともたやすく使ってしまう。


 「水龍丸さん! 私の命を糧に力を! 《水神の羽衣》」


 水色の羽衣を纏った、マリンは神々しい。

 

 「《水鎗激》!!」

 「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ」


 烈しく水の槍を打ち込んで、風竜神と互角の戦いを繰り広げる。


 護りは、《水球陳》。

 攻めは、《水龍丸》。


 攻防一体......


 「明らかに俺のパクリなんだよなぁ~」

 「オマージュです」

 「うるせーよ」

 「カイルさん!?」


 カイルはボロボロの身体で立ち上がり、マリンの背中から水龍丸を握った。


 「堂々としているマリンは気持ち悪い!」

 「酷いですよ!」

 「だから早く終わらせよう。......俺のために動けないんだろ?」


 風竜神の風の攻撃は凄まじく、マリンの水球陳無しではカイルは生きられない。

 だから、マリンは一歩も動かず戦っていた。


 「マリンが俺ために命を使ってるなら......俺の命も使っていい。持ってけよ! 《水龍丸!!》」


 マリンよりもカイルの方が望叶剣の扱いには長けている。

 そんなカイルが水龍丸に命を吸わせた。


 それにより、水龍丸の水圧と水量が数段階アップグレード。

  

 「す、凄いです。カイルさん!」

 「また......シルフィアに怒られちゃう」

 「私が説明します! カイルさんが私を抱いてくれたって!」

 「やめて、やめて! 悪意のある説明しないで!」


 気の強いマリンが完全に裏目に出るタイプだと解ったので、


 「マリン。粘ってても仕方ない。一撃必殺! それに全てをかけよう」

 「一撃必殺? そんな技ありませんけど。それにドラゴンさんを殺すのは反対です」

 「......大丈夫。俺が望叶剣の必殺技を使ってやる。ドラゴンさんは......強いから死なない気がする(嘘)」

 「わかりました! 任せます!」


 マリンの心地好い信頼にカイルは首を縦にふり、ニ人羽織で水龍丸を上段に構える。


 「気合いれろよマリン! 持ってかれるからな!」

 「何をですか?」

 「......魂」

 「......えッ?」


 マリンの一瞬の戸惑い、その瞬間。

 カイルは剣を振り下ろす。


 「行くぜ! 水龍丸! 《水龍波》」


 マリンとカイルの魔力と命が激流に変わり、水龍丸の回りを渦巻いて。

 振り下ろすと同時に龍の型で飛び出していく。


 望叶剣の必殺技が風竜神へと襲いかかる!


 水の龍は風の攻撃を突き抜けて、暴風をも越えていく。

 そして、最後の風の防壁すら突き破った!


 ドシャァァァァン!!


 初めて、攻撃が風竜神に通った。


 「グルルルルルォオオオオオオオオオ」

 「......あ。あれ? マジで生きてんの!?」

 「......カイルさ......ん......ねむ......です」


 攻撃は当たった。

 しかし、ただそれだけ。

 最強の一撃をもってしてようやく、闘いが始められるレベルと言うことだった。  


 マリンは今の一撃で持って行かれ、カイルに寄りかかるように倒れた。

 カイルも、限界を迎え......尻餅を付いてしまう。


 ......動けない。


 「グルルルルルォオオオオオオオオオーーッ!!」

 「......悪りぃ。マリン。読み違えた......」


 鋭い爪がもう動けないカイルとマリンを襲おうとしていた。

 

 その少し前。カイルとマリンが共闘している時。

 アンジェリーナに治療されていたユウナが目を覚ました。


 「うっ......ハッ! カイル!」

 「一番最初に出る言葉が、『カイル』なのだから。カイルは愛されているな」

 「金髪! カイルは!? 生きてるわよね!?」

 「......私のことは、親しみを込めてアンナと呼ぶか、敬意を込めてアンジェリーナと呼ぶのだ! ユウナ殿の場合はカイルの妹分だから義姉様でも構わんか?」

 「金髪!」


 アンジェリーナの何時ものおちゃらけたノリは、ユウナには一言で一蹴される。

 助けてあげたのにお礼も言われないのが不服だったアンジェリーナだが、そこはカイルのために我慢。


 「あそこでマリン殿と一緒に龍討伐をしている最中だ」

 「っ! また! 女と! しかもマリンじゃない! 抜け駆けよ!」

 

 ユウナからは、カイルがマリンを後ろから抱きしめているように見えた。

 そのせいでいきり立つユウナ。


 「ユウナ殿。私はカイル達があの龍をどうにかできるとは思わん。無論。私達の誰も敵わないだろう。さっき。私の加護ごとカイルが吹き飛ばされたしな。ユウナ殿も勝てないことはわかっているだろう?」

 「だから何よ?」

 「しかし、勝てないだけで逃げられない訳じゃない。状況が拮抗している今なら......」

 「私達だけで逃げるって言いたいの?」


 ユウナから軽蔑の眼差しを受けてアンジェリーナは首を降った。


 「レンジ殿も一命は取り留めた。エリザリーベの奴も、そこで寝ている。カイルとマリン殿も無事」

 「......」

 「私なら、あの龍相手でも、三分は食い止められる。勝てないがな?」

 

 アンジェリーナは笑いながらそういった。

 それは、ユウナに......


 『私が時間を稼ぐから逃げろ!』


 そういっているということだった。

 ユウナなら、それができる。


 そういうアンジェリーナの判断。

 

 「このダンジョンのランクがAと言った私に責任がある。だから......」

 「黙りなさい!」

 「......」


 アンジェリーナの言葉をユウナは最後まで聞かなかった。

 

 「アンタの事情なんかどうでもいいのよ!」

 「......」


 言いながら、ユウナの怒りの扉が開いていく。


 「私は、私の事情で戦ってるのよ!」


 身を焦がす程の怒りがユウナの心を支配していく。

 スキル《怒髪天》

 怒りによって、能力を増加させるスキル。


 「私はただ......カイルを護る。それを邪魔する奴は! 神であろうとぶった斬る!! それだけなのよ!」


 言うと同時にユウナの身体に風が巻き起こった。

 そしてそのまま、竜巻を起こしながらカイルの元へと向かっていく......


 その後ろ姿を見ながら、アンジェリーナは呟く。


 「カイルと私が倒せなかった以上。その龍を倒せる可能性があるのは、《怒髪天》を正しく解放した、ユウナ殿だけだったのだ......」


 ユウナのスキル《怒髪天》には、二種類の怒りと五段階の怒りの段階がある。


 通常。怒り。激怒。覚醒。解放。


 これによって増加する能力値が決まり。


 さらに、


 仲間の為に怒る正の怒。

 嫉妬や憎悪で怒る負の怒り。


 どちらかによって性質が変わってくる。


 負の怒りなら、理性をとばし堕ちていくだけだが、

 正の怒りなら、理性を持ったまま正しく力を振るえる。


 アンジェリーナはユウナを正しい怒りの解放状態まで導いた。


 《怒髪天》解放状態のユウナは、アンジェリーナにも解析不能。

 つまり。


 「ユウナ殿は、その状態なら......風竜神と同じ領域にいる......かもしれないのだ!」


 ......そういう事だった。


 


 

 風竜神の絶望的な爪の一撃が動けないカイルとマリンに落ちる寸前!

 ユウナがカイルの元にたどり着いた。


 ユウナは風を身体に纏いながら、カイルの前に立つと向かい来る風竜神の爪に剣を合わせ......


 ザクッ!


 「グオオオオオオオオオオオオオオオーーッ!!」


 斬り捨てた。


 剣帝のレンジでも、

 アンジェリーナの強化を受けたカイルでも、

 神話級の魔剣である望叶剣を使ったマリンでも、

 与えられなかった手傷をユウナは剣のひと振りで負わせてしまった。

 

 ユウナは風竜神が爪を斬られた痛みで怯み後退しているのを見てから、


 「カイル。無事よね? 生きてるわよね? 怪我はないわよね?」


 カイルの身を全力で案じ始める。


 「もう、大丈夫よ。後は私に任せなさい。カイルの敵は私が全て斬り殺してあげるから」

 「ユウナ......ッ」

 「喋らなくて良いわ。言いたいことは分かってるもの、アイツを切り刻んで欲しいのよね!」

 「違っ......にげ……」

 「ふふっ......私の背中を見てなさい! ハァアアアアーーッ!」


 (逃げようよ! ユウナ!!)


 カイルの言いたいことを分かってたユウナは、風竜神との戦闘に入る。


 (何も分かってないじゃん!)


 ユウナの纏う風は剣気の風。

 風竜神の生み出す魔力の風を相殺し、戦場を自由自在に動き回る。


 「グオオオオオオオオオオオオオオオ」


 そこで、風竜神が風のブレスをはいた。

 超高密度の嵐が一直線に突き進む。


 (避けられない......って事は無いけれど......)


 ユウナの後ろにいるカイルとマリンに当たるコース。

 それを、ユウナが避けるはずは無かった。


 「ふふっ。カイルを足手まといとでも言いたいの? ......殺すわよ?」

 「グオオオオオオオオオオオオオオオ」


 風竜神の策の様な攻撃の意図に、ユウナの怒りが更に炸裂。

 纏う風が更に激しく荒々しくなり、ユウナの身体が一つの竜巻と化していく。


 ユウナは向かって来る竜巻を真正面に捕らえて剣を上段に構える。


 「私の後ろにカイルがいるから! 私はここで戦えるのよ!! ぶった斬る!! ......剣神流一ノ太刀《断絶》 粉みじんに、なりなさい!」


 怒髪天、解放状態のユウナの《断絶》は、時空を切り裂く嵐を生み出す。

 それはかつて、空間魔道帝リンクルドの固有結界を力業で切り裂いた程のもの。


 風竜神のブレスとユウナのトルネードが今!

 ぶつかり合う!


 凄まじい衝撃と音。


 ......結果は相殺。


 それはそのまま、ユウナの力が風竜神と互角という意味合いだった。


 「ふんっ! 生意気ね。なら次よ!!」


 しかし、ユウナは互角という事が気にくわなかった。

 とてつもなく気にくわなかった。


 (早くカイルを手当したいのに! その邪魔ばっかりして!)


 ユウナの怒りは天井知らずに増していく、その怒りを受けて纏う風も増大していく......

 パワーアップを続けるユウナは剣を斜に構え、追撃を開始する。


 「剣神流ニノ太刀《空絶》!! 嵐に呑まれて死になさい!」


 風の剣気を纏うユウナ自身も、自分の力の本質に気付き始める。

 放っている剣技が明らかに、通常のそれとは違う。


 けれど......


 ユウナには使う前にどんな技になるかが何となく分かっていた。

 だからこその《空絶》


 通常なら、ミリス聖教、制裁者センクションがそうしたように、ただ剣のリーチをなくす技。

 それでも十分に強い技だが、ユウナがつかうと。


 竜巻が巻きおこる!


 それは、対象の位置に合わせて出現し、絶対不可避の攻撃に昇華する。


 竜巻が持つ風の刃は強靭で、別次元ごと切り裂きながら風竜神の鱗を切り刻でいく。

 

 「グオオオオオオオオオオオオオオオーーッ!!」

 「ふんっ! タフね。けどそのまま次よ」


 嵐の中に囚われ継続してダメージを負う風竜神に、ユウナは更なる追撃をしかける!

 

 「剣神流......三ノ太刀《真絶》 風の刃を受けなさい!」


 竜巻に呑まれる風竜神に居合い一線!


 そこから生み出される風の一刃は、嵐を斬らずに風竜神だけを切り裂いた。


 「グオオオオオオオオオオオオオオオグオオオオオオオオオオオオオオオグオオオオオオオオオオオオオオオグオオオオオオオオオオオオオオオグオオオオオオオオオオオオオオオグオオオオオオオオオオオオオオオグオオオオオオオオオオオオオオオグオオオオオオオオオオオオオオオグオオオオオオオオオオオオオオオグオオオオオオオオオオオオオオオグオオオオオオオオオオオオオオオグオオオオオオオオオオオオオオオグオオオオオオオオオオオオオオオグオオオオオオオオオオオオオオオグオオオオオオオオオオオオオオオグオオオオオオオオオオオオオオオグオオオオオオオオオオオオオオオグオオオオオオオオオオオオオオオグオオオオオオオオオオオオオオオグオオオオオオオオオオオオオオオグオオオオオオオオオオオオオオオ」


 しかし、そこで良いようにやられていた風竜神が最大の咆哮をあげた。

 それは、あらゆるものを吹き飛ばした。


 竜巻も、風の刃も、離れていたカイルも!


 「まずい! またっ! カイル!」


 その暴風の中でも、自ら風を纏うユウナは自由に動けた。

 だからこそ、迷いなくカイルを助けにいってしまう。


 そこに、風竜神は勝機を見た。


 ユウナを強敵として認め、最大威力のブレスを吐くために大きく、長く、息を吸い込む。

 膨れ上がる風竜神の魔力は、ユウナでもどうすることも出来ない量。

 

 ......避けるしかない。

 しかし、カイルを助けていたら避けきれない......


 それはつまり。


 (カイルを捨てれば助かるってそう言いたいの?)


 それが、風竜神の意図だった。

 足手まといは捨てろ。

 そうしなければ、死ぬだけ。


 ブオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!


 避けなければ、確実に死ぬ風竜神のブレスが放たれた。


 「ふ、ふざけるんじゃないわよおおおおおおおおおおおおおおーーッ!」


 ここに来て、ユウナは更に怒りを爆発させる。

 それは純粋な正の怒りだけではなく、負の怒りも混ざっていた。

 黒い風と白い風が調和した状態で増大していく。


 その力で加速しカイルを迷わず抱きしめる。


 それでも......既に避けることも出来なければ、剣のひと振りでどうにかできる次元の攻撃でもなかった。


 「カイル......愛しているわ......」

 「......?」


 死のブレスが全ての音を飲み込んでいる中で、ユウナは避けられない......避けたくない死を予知してカイルにそういっていた。


 そして......


 カイルを片腕で抱いたままブレスに向かって剣を構える。

 

 「カイルを......家族を、親友を、愛しい人を、見捨てるぐらいなら!! 私はいつでも死んでやる! その覚悟は何時だって出来ているもの!」


 どうにもならない攻撃にそれでも、ユウナは剣を振った。


 「最後よ......。剣神流......一ノ太刀......」


 剣を降る前に一度カイルの事をしっかり抱き直し......


 「《断絶!》粉みじんに......なりなさい!」


 ユウナの起こした剣気の風は......虚しくも風竜神のブレスに呑まれていく。

 それはもう......分かっていたユウナは、ブレスを見ずにカイルだけを見て抱きしめていた......

 

 そんなユウナに、ブレスが当たる直前!

 一本の剣がブレスを裂いてユウナの足元に刺さった。


 「......えっ?」


 突然現れ、ブレスを止めた剣に驚くユウナ。

 そんなユウナに、風竜神が《話しかけた》。


 『私は親愛の龍。その剣に相応しい者を見つける為にここ存在していた』

 「は? ......えっ?」


 急に喋りだした風竜神に更なる困惑に陥るユウナだが、既に風竜神からの威圧感は消えていた。

 

 『しかし、数千年の時経てようやく貴女に巡り会えた』

 「カイル。急にコイツ話し出したわよ? 斬っていいかしら? 良いわよね?」

 「......ユウナ! コイツまさか!」


 その時、アンジェリーナの治療によって、六人全員が目を覚まし風竜神の言葉を聞いていたが、


 唯一。

 カイルとマリンだけは、風竜神の存在に心当たりをつけていた。


 カイルとマリンが感づいた事に、気付いた風竜神が、長い首を縦に降る。


 『《守護と破壊の英雄》そして《友情の英雄》には隠せないか』

 

 ( (望叶剣の精霊!!))


 カイルとマリンが同時に答にたどり着く。

 そう。


 風の森のダンジョンは、親愛の望叶剣の適性者を見つけだす試練だった。

 そして、親愛の龍にユウナが認められた......


 『愛しき者を秘める少女よ。私と契約すれば、貴女の願いを叶えよう』

 「私の......願い?」

 『欲しいのは、愛するものを守り斬る力か? それとも、愛するものを自らの虜にする事か? もっと強欲に、全ての愛した者達を手に入れる事か? はたまたそのすべてか』

 「......っ!!」


 一瞬、風竜神の言葉にユウナの身体がぴくんと反応した。

 揺れている......


 ユウナが反射的に答えようとするのをカイルは止める。

 それを受け入れたら......ユウナの寿命が剣に食われてしまう!


 「ダメだ! ユウナ。辞めてくれ! そんな奴と......そんなものと契約しちゃダメだよ」

 「ふーん。カイルはコイツが言っていることは事実だって言いたいのね?」

 「っ!! 違う! そういうことじゃない! ユウナ! ユウナは強いだろ? 才能だってある。そんな奴に頼らなくたってユウナは自分で願いを叶えられるんだ!」


 それは、カイルの本心だった。

 絶対にユウナには寿命なんて減らしてほしくなかった。


 「私の願いは......想いは......私一人じゃ届かないのよ!」

 「ユウナ!」

 「五月蝿いわね! カイルが私に指図なんて百年早いのよ!」


 ユウナはカイルを投げ捨ててしまう。


 叶えたい願いがあった。

 それを、叶えられるのならユウナはなんだってしてしまう覚悟もある。

 だからこそ、選ばれた。


 「私は......死んでも欲しい男がいるわ」

 『良いだろう。私と契約を......』

 

 風竜神がユウナに契約を交わさせようとする。

 ユウナはそれを......


 「でもね! カイルを傷つけたアンタの力だけは死んでもいらないのよ! 《断絶》」

 「ユウナ!」

 『グオオオオオオオオオオオオオオオーーッ! ば、馬鹿な!』 


 一線!

 

 その事にカイルが歓喜の声を上げると、ユウナは照れ臭そうに笑って。


 「私は、最初から、カイルを傷つけた奴の言葉なんて聞くつもりは無かったのよ? それなのにカイルと来たらごちゃごちゃ五月蝿いのよ」

 「ごめん」

 「ふふっ。良いわよ? カイルが五月蝿いのはいつものことだもの」


 ......そういった。


 至近距離から不意打ちでユウナの《断絶》に切り裂かれた風竜神がのたうちまわる。


 『グオオオオオオオオオオオオオオオーーッ!』

 「ふんっ! そのまま死になさい! 《真絶》!!」

 「よせ! ユウナ! もういい。帰ろう......っ!!」

 『グオオオオオオオオオオオオオオオグオオオオオオオオオオオオオオオグオオオオオオオオオオオオオオオグオオオオオオオオオオオオオオオグオオオオオオオオオオオオオオオグオオオオオオオオオオオオオオオグオオオオオオオオオオオオオオオグオオオオオオオオオオオオオオオグオオオオオオオオオオオオオオオグオオオオオオオオオオオオオオオグオオオオオオオオオオオオオオオグオオオオオオオオオオオオオオオグオオオオオオオオオオオオオオオグオオオオオオオオオオオオオオオグオオオオオオオオオオオオオオオグオオオオオオオオオオオオオオオグオオオオオオオオオオオオオオオグオオオオオオオオオオオオオオオグオオオオオオオオオオオオオオオグオオオオオオオオオオオオオオオグオオオオオオオオオオオオオオオグオオオオオオオオオオオオオオオグオオオオオオオオオオオオオオオグオオオオオオオオオオオオオオオグオオオオオオオオオオオオオオオグオオオオオオオオオオオオオオオグオオオオオオオオオオオオオオオグオオオオオオオオオオオオオオオグオオオオオオオオオオオオオオオ!』


 超特大の雄叫び。

 風竜神が本気で怒り、問答無用で全員を吹き飛ばした。


 風を纏っていたユウナすらも抗えず、カイルに伸ばした手も届かなかった。


 ダン!! ダン!! ダン!! ダン!! ダン!!


 五人が壁に激突する。


 「くはっ! ......みんな」


 あまりに強い風は、カイル達が地面に落ちることすら許さない。

 完全に動けなくなった五人に風竜神は叫ぶ。


 『私と契約しないのなら容赦はない! シネェエエエエエエい!! グオオオオオオオオオオオオオオオグオオオオオオオオオオオオオオオグオオオオオオオオオオオオオオオ!!』


 風竜神の瞳が赤く染まり、今度こそ本当にカイル達を殺そうと息を吸い込んだ時。

 親愛の望叶剣が抜かれた。


 『グオオオ?』

 「力をくれると言うのなら、妾が受けとろう。妾はどんな力も欲しい」


 暴風をもろともせずに望叶剣を抜いて風竜神の前に堂々と立ちはだかったのは、エリザリーベだった。


 『何故、動ける!?』

 「妾に風は利かん」


 サラっととてつもない事を言ったエリザリーベだが、エリザリーベのスキルは《風読みの女王》

 大気の風の流れを把握、掌握するスキル。

 風竜神が生み出す風と言っても、結局は風。


 エリザリーベが触れてしまえば無風にできる。

 風属性無効。

 

 風竜神の威圧に剣気を纏うのが遅れ気絶していたが、目を覚ましさえすれば風竜神にとってこれほどの天敵は居なかった。


 「妾も好きな男はいるのじゃ」


 チラッとレンジを見ながら、エリザリーベは続ける。


 「妾がレンジの女の代わりに契約してやるのじゃ! それで良いだろ?」

 「誰が! 誰の女ですって!」

 「ユウナでしょ? 自分で欲しい男がいるって言ってたじゃん」

 「ムキィイイイイイーーッ!」


 怒髪天!!


 ユウナが無駄にスキルを発動させている中。

 風竜神は動きを止めていた。


 エリザリーベが、望叶剣を抜けた以上、エリザリーベには望叶剣の英雄になる資格はある。

 ユウナが、拒絶したのなら、これ以上の適正者は居ない。


 『良いだろう。望みは?』

 「妾の願いは......ただ一つ。誰にも頼らず一人で生きられる力が欲しい! それだけじゃ」

 『良かろう。契約成立だ。名は《風龍丸》好きに使うと良い』


 それだけ言葉を交わすと、風竜神はエリザリーベの持つ《風流丸》の中に消えていった...


 こうして、カイル達の初めてのダンジョン攻略は幕を閉じるのだった......

 

 

《続》

 



まずは、ブクマ評価ありがとうございます。

励みになります。


どうですか? 面白かったですか? 


ここで一先ず終わりですが、五章はここからもうひと拈りします。

プロット通りです♪


……少々分量が、嵩みましたが。


今、制作中なので、また一・二ヶ月程お待ちください。

とりあえず、まだ多くは語りませんが、後半は多数のキャラが入り乱れる予定です。

もちろん、メインヒロインはあの娘です。予告はそんな感じです。


では、最後に一言だけ……


風竜神ツエエエエエエエエエエエーーッ! っす。













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