三十四 十二月二五日
アクアラ大峡谷でのミリス神聖教国とローゼルメルデセス王国との闘いが終わり、ミリス聖教、教皇になった《聖女》 白髪の麗人。シルフィア・ミリス。
その元に、一人残ったカイルは、ミリス聖教の総本部、ミリス大聖堂で、数万人のミリス聖教教徒の前にいた。
カイルの隣には、白を基調とした修道服に、特別仕様で、黄金の装飾が施された仕事服を着込んだ、聖女、シルフィアが立っている。
普通でも女神と言われるほど、神聖で美し過ぎる、シルフィアが、更に美しさと神聖さを引き上げる白金の修道服を着た姿を事で、男女に関わらず誰もが見ただけで、感嘆の声を漏らしていた。
その、シルフィアの隣に立つカイルは、その美しさもさることながら、シルフィアの身体から醸し出る、魅惑の甘い香に完全に魅了されていた。
「......カイルさん。もう少し近くに寄ってくれませんか? それでは護衛になりませんよ?」
そんなカイルの気持ちを知ってか知らずか、シルフィアはカイルにだけ聞こえる声で、少しだけ近付きながら言った。
カイルは、近付かれた分だけ、距離を取ってから、
「いや。今のシルフィーが、近すぎると警戒もクソも無くなるから」
「......そうですか、残念です」
カイルが近寄ってくれないことに本気でショックを受け肩を落としたシルフィアは、気持ちを切り換えて教徒達に笑顔で、手を振りはじめる。
現在、シルフィアの立場はミリス聖教トップ、教皇の地位にあるが、まだ、教徒達も、司祭達も、完全にシルフィアを認めてない。
並ば、シルフィアの聖女としての力を認めさせるしかない。
そのために聖女シルフィアは、能力 《聖女の心眼》の未来覗の力を教徒達に使う。
だが、シルフィアに反抗する勢力の中には、暗殺して次の教皇になろうとする者も中には居る。
カイルはそういった暗殺者達からシルフィアを守るために、つかず離れず側に控えていた。
見えない暗殺者への警戒は、かなりの神経を消耗するのだが、カイルはシルフィアの笑顔を見るだけで報われていた。
近くにシルフィアがいる、それだけで、カイルは高い集中力を保てていたのだった。
シルフィアがミリス大聖堂の祭壇で、何人もの衛兵達に護られ、その衛兵すら近付く事の許されない程の距離で、カイルが居るのは、カイルがシルフィアの夫と言うことになっているからだった。
カイルとしても、将来的にシルフィアと結婚するつもりなので、そこは何の問題も無かった。
ただ心残りなのは、ローゼルメルデセス王女ミリナとの約束の話をすると、シルフィアの機嫌が著しく悪くなり口も聞いて貰えなくなり、ミリナの事をどうするかを全然話し合えないこと......
そして、もう一つ。
幼なじみの女の子、ユウナがカイルとシルフィアの結婚の話を聞いて、とてつもなく辛そうな表情をした後、涙を流し何も言わずに、走り去ってしまった事......
(なんで......ユウナがあんな顔をするだよ......)
カイルの心にチクリと刺さる針の様なものだった。
カイルがユウナを思いだし落ち込んでいる間に、シルフィアは次の予定へと移る。
厳重に警戒されて居る中、教徒の一人がシルフィアとカイルの居る祭壇に上がり、シルフィアと握手を交わす。
万が一があって、困るのはシルフィアの事を守りたいカイルなので、カイルは前に出た老人の教徒を警戒し、一歩シルフィアに近付いて、老人の一挙手一投足に神経を尖らせる。
教徒はシルフィアと握手しただけで喜んで、シルフィアの未来覗の言葉を聞きいて有り難そうに下がっていく。
特に問題は無かった。
ふらり......
「シルフィー!」
シルフィアが急にふらついたので、カイルは叫びながら、すぐに細い身体を支える。
「ふふふ、カイルさん......これは、ただの副作用ですよ? そんなに慌てなくても大丈夫ですよ?」
「......俺が近くに居ると、楽になるんだよね?」
カイルは、シルフィアの能力の詳細をシルフィアから、聞いていた。
能力 《聖女の心眼》 赤眼で見た物の未来を見る能力。代わりに赤目状態の時は徐々に身体の機能を停止させる。
だが、シルフィアが心を委ねる人が近くに居るときは、そのデメリットも中和される。
「......はい。ですので、そのまま支えててくれますか......?」
「......うん。分かった。辛かったら、俺に寄り掛かってて良いから」
「ふふっ、ありがとうございます。ではお言葉に甘えさせていただきますね......?」
シルフィアはカイルの優しい気遣いに感謝しながら、後ろで背中を支えてくれるカイルに、寄り掛かって楽になった。
カイルの体温を感じることで、シルフィアの心臓の鼓動が落ち着いていく、
「役得......ですね?」
「それ、俺の台詞だから」
カイルは、苦笑しながら、シルフィアの柔らかくしなやかで細いお腹に手を回して、しっかりと支えてあげた。
何度も言うが、カイルとシルフィアは夫婦として、扱われて居るのでそれぐらいのスキンシップを咎める者は居ない。
結局、刺客も来ることなく、シルフィアは百人程の信者と握手して、未来覗を使い続けた。
日が暮れて、《聖女の審判》と言われるこの神事が終わる頃には、いくらカイルが近くにいたとしても、シルフィアは疲れ果ててカイルの腕の中でうとうとし始めていた。
シルフィアとのミリス聖教国での初日が終わって、カイルは疲れ果て寝ているシルフィアのお姫様抱っこで、シルフィアに宛てがわれた個室に運んだ。
この個室は、多重の結界で護られたミリス大聖堂の内部にある幾つもの部屋の一つで、そのどれにシルフィアが入るかは、その時、その時で変わり、今は運び込んだカイルしか知らなかった。
カイルはシルフィアをベッドに寝かせて布団をかけてあげると、静に部屋を出ようとした。
すると、眠っていた筈のカイルの手をシルフィアが掴んで止める。
「行かないでください......」
「俺が居たらシルフィアの疲れが取れないでしょ? 明日もあるんだから早く休んで元気にならないと」
今日はまだ初日。
初日なのに、シルフィアは疲労困憊になっている。
同じく、カイルも敵襲こそ無かったが神経は極限まで擦り減っている。
シルフィアと楽しくお喋りして、貴重な体力回復の時間を無くすわけには行かなかった。
だから、カイルはシルフィアの手を優しく解いて、
「隣にいるから何かあったら、叫ぶんだよ?」
「......はい。お休みなさい。......また明日ですね......?」
「うん。朝は俺が迎えに行くよ」
「......はい」
シルフィアのどこか陰の声に気づきながら、それでもカイルは、疲れているシルフィアの身を休ませることを優先させて部屋を後にするのだった。
そんな、生活が続いた七日目の朝。
ミリスでの生活に慣れてきたカイルが、シルフィアを起こしに行くと、シルフィアが、高熱を出して大量の汗をかいていた。
「シルフィー!」
「ごほっ......ごほっ......あ! カイルさん。どうしたのですか? 何かありましたか?」
カイルに気がついたシルフィアは咳込みながら身体を起こして、微笑んだ。
部屋に窓が無いことで朝日が差し込まず、明かりは光魔法を燈した、魔照灯と言われる物しかない。
だから......
「......シルフィー。もしかして、ずっと寝れてないの?」
「......ごほっ......今から寝るところですが......? はっ! もう朝ですか?」
「......いや。まだ夜だよ」
シルフィアは朝だという事に気付いていなかった。
カイルはシルフィアがそれ程追い込まれていた事に今の今まで気が付けなかった自分を怒りたくなる。
(何のために俺はここにいるだよ!)
だが、今はそれよりも、
「今日は一緒に寝ても良い?」
「っ! はい......っ!」
シルフィアを寝かせてあげたかった。
「では......どうぞ」
「え?」
シルフィアは恥ずかしそうに、もぞもぞ動いてベッドのスペースを一人分空けると、毛布をめくりあげてカイルに中に入るように合図する。
そんな、シルフィアの行動で、一緒に寝る→ 一緒の布団で寝るまでの流れだった事に今更気付いてしまうカイルは汗を流しながら、
「いや。俺は......」
「ベッドは一つしかありませんよ......?」
「......床でも」
「......カイルさんから......言ったのに......酷いです......」
「うっ!」
シルフィアの言うことがごもっとも過ぎて、カイルは従うしか無かった......
薄着になったカイルは仕方なく、シルフィアの布団の中に入ると、シルフィアはすぐにカイルの胸に抱き着いた。
「シルフィーっさん!」
シルフィアは熱で大量の汗をかいていて、ペトリと何時もより、なまめかしい感触をカイルは感じ声をあげた。
「カイルさん、私......迷惑......ですか?」
「シルフィー......」
シルフィアの悲しそうな声に、カイルは、シルフィアの頭を腕枕で支えながら、ゆっくりと撫でてあげる。
そして、不安そうなシルフィアの質問に答えた。
シルフィアが赤い目で尋ねているので、既にカイルが着いた嘘は見破られている。
それを知ったうえで、カイルは答える。
「シルフィーがかける迷惑は俺にとって、御褒美だよ。今だって、同じ布団で寝れてるし、......緊張するけど」
「......はっ!」
「ん?」
いきなり、声をあげて顔を真っ赤したシルフィアに疑問の声を投げかけると、シルフィアは赤い目を辞めてカイルの身体に更に密着して寛いだ。
「カイルさん......良いですよ?」
「何が!?」
唐突なシルフィアの許可に、驚きながらも、実はカイルはシルフィアが何を言っているのか大体予想していた。
なぜなら、シルフィアが未来を見る能力者で、カイルがシルフィアが声をあげたとき、何を考えていたか......カイルだって男で、好きな少女と同じベッドで横になっていれば、それは仕方のないことなのだが......
「良いですよ?」
「いや......俺は、シルフィーに休んでもらいたいんだけど」
カイルの呟きにシルフィアは、ゆっくりと答えた。
「カイルさんとの関係が進めば、私の能力は抑制されますし、私も、カイルさんの腕の中なら安心して休めます......それに私とカイルさんはいずれ結婚するのですよね......? それを証明してくれませんか......?」
「うん。でも......良いの? 俺......」
「良いですよ?」
シルフィアの強い眼差しに、カイルは苦笑して、
「分かった......今日はゆっくりと休んでもらうよ?」
「ふふっ......それはカイルさん次第ですよ......?」
「うん。だね? じゃあ、進もうか」
「はい......」
カイルはゆっくりとシルフィアの白く細い身体を抱きしめた......
............
「シルフィ......シルフィア。やっぱり......すぐにでも結婚しよう。とてもよかった。君を俺のものにしたい」
「カイルさん......っ......! ふふ......はい。末永く御仕えいたします」
カイルは、カイルの身体に密着している柔らかいシルフィアの身体を包むように、抱きながら純白の髪を撫て言った。
シルフィアも嬉しさで涙を零していた......
「......私もですよ? カイルさん......あなた、あなたの腕の中にいると、とても穏やかな気持ちになれます」
耳にこそばゆく響くカイルの声に言葉通り心地好い気持ちになりながら、カイルの胸に手を添えて。
カイルも、更に力強く抱きしめた。
「ふふっ......また、しますか......?」
「シルフィア......疲れてないの?」
「カイルさんの......腕の中に居ると、逆に疲労が和らぐ気がします」
「本当......?」
流石にそれは嘘だろと、カイルが疑いの声で聞くけれど、シルフィアの肌の色は確かに先程よりも、艶やかになっていた。
「......そうだね?」
「はい。本当ですよ? だから、カイルさんがお嫌で無ければ......」
「嫌なわけは無いよ......ずっと、こうしてたいくらいだよ?」
ぎゅ~っと抱きしめながらカイルが言うと、カイルに抱きしめられる心地よさで、シルフィアは眠ってしまいそうになる。
「ずっと......こうして......欲しかったんですよ?」
「......」
眠気がシルフィアの心の扉を開いて、隠していた気持ちを暴いてしまう。
弱い場所をカイルに晒してしまう。
「一人だと......恐くて......全然寝られなかったんですよ?」
「......」
「カイルさんに......近くにいて貰いたかったんですよ?」
「......ごめん。一人の方が休めるって思ったから......ごめん」
カイルが罪悪感を感じて、カイルの手が離れそうになった瞬間、眠気の消えた、シルフィアは離れて欲しくなくて、きゅ~っとカイルの肩に掴まった。
「離さないで......ください」
「あ、うん」
カイルもシルフィアが、自分と接触しているときに安らぎを覚えてくれることが分かったのですぐに、シルフィアの身体を抱き直す。
再び安心感に包まれたシルフィアは、
「カイルさん......まだ、寝たくありません......折角......カイルさんが添い寝してくれているのに......」
「大丈夫だよ。これからは一緒に寝るから、抱きしめるから、寝ていいよ?」
「............カイルさん、女性が寝たくないと言っているのですよ? 付き合ってくれる男らしさを見せてくれませんか......?」
「うっ」
突然、シルフィアが不機嫌になって、痛いところをついてきたので、カイルは仕方なく、苦笑して、
「じゃあ、シルフィア。......するね?」
「はい......あなたが、満たされるまで、私は寝ませんので」
「......えっ?」
「ふふふ、大好きですよ? あなた......」
その日から、シルフィアの調子は改善され、夜はカイルと一緒にぐっすりと眠るようになった。
■■■
ミリス歴2013年12月25日。
学院都市の、国際会議場で、四大同盟国の初の代表会議が開かれていた。
集うのは、各国の代表呑みで、護衛すら入ることは許されない中、大きな丸テーブルの上に並ぶ豪華な料理に手をつけることもせずに椅子に座るは四人。
大陸最大軍事国家ローゼルメルデセス王国代表 《女王》 アンジェリーナ・ローゼルメルデセス
大陸最大宗教国家ミリス神聖教国代表 《教皇》 シルフィア・ミリス
大陸最大都市国家メルエレン王国代表 《女王》 エリザリーベ・エルカムティ・エルエレン
そして、魔道学院同盟国代表《学院長》オーラン......
「うーむむむむ、わしだけ、場違い感があるのぅ......わし以外皆、麗らかなピチピチギャルじゃしのぅ......」
御年、八十歳を超えた白髪頭のおじさんが、長い髭を触りながら、自分以外は十三・四歳という、自体に肩身を狭くして、呟くと、
よれたシラガおじさん、とは違う、艶のある雪のような白髪で、集まった美少女達の中でも一際美しく神聖感がある、少女。シルフィア・ミリスがオーランに優しく微笑んだ。
「オーランさん。そんなこと言わないでください。まだまだ、オーランさんは若いですよ?」
「うーむ。それはそうなのじゃがのぅ......ここまで歳の差があるとのぅ......居心地が悪いもんじゃのぅ」
シルフィアの優しい心使いを蹴飛ばしたオーランの言葉に、うむ? と腕を組んで、首を傾げたのは、シルフィアに負けず劣らぬ美しさを持つ、純粋な黄金を溶かした様な金髪の美少女、アンジェリーナ・ローゼルメルデセスが、その場の空気を読まずに腕をくんだまま、
「いや、オーラン殿、今のシルフィア殿の言葉は、どう考えてもお世辞だろ......隠居した方が良いと私は思うな」
「はて? 引退? ワシはまだまだ現役バリバリじゃぞ? ほれ見てみい その幼い身体に教えるぞい、ローゼル女王よ、今晩如何かな? おっと、ローゼル女王はまだ生娘じゃたっな? 失礼じゃったかのぅ」
ピキリ。
この時。人をからかうのが好きで、何時も飄々としているアンジェリーナにしては、珍しく怒りの琴線に触れてしまった。
「この! クソジジィーがぁああっ! 私には心に決めた男が居るのだ! 老い先短いクソジジィーにくれてやる物は髪の毛一本無い!! それに、乙女の新品が男は好きなのだ! むしろ生娘の方が価値が上がると言うものだからな! そうであろう? シルフィア殿。シルフィア殿もこの際、このセクハラクソジジィーに物申すのだ!!」
バシン!
と大きくテーブルを叩いて、アンジェリーナは聖女に話を振った。
シルフィアなら、アンジェリーナの気持ちを分かってくれる筈......
「............」
「ん? シルフィア殿?」
だが、シルフィアはアンジェリーナの期待を裏切って、目を反らすと、こちらも珍しく救いを求める声に手を指し伸ばさなかった......
「アンジェリーナさん。殿方を知ることで、少女は淑女として磨かれるのですよ......?」
「む! まさか! シルフィア殿......カイルとシタのか!?......っ......!!」
「はい。ふふっ......私はカイルさんに性女にして貰いました。熱く激しい......高ぶりを知りましたよ......? あれが女になると言うことなのかも知れませんね......?」
「くっ! 私の目はごまかせんぞ《アナライズ》!!」
アンジェリーナは、シルフィアの言葉の真偽を確認するために、通常、儀式魔法で行う解析魔法を独りでしかも無詠唱で発動した。
アンジェリーナの目にアナライズで解析されたシルフィアの......
「くっ!」
解析結果は、アンジェリーナがテーブルに額をつけて、ガシガシ悔しそうに叩き始めた態度で、誰もが分かってしまった。
(ほーう。ローゼルの姫は《アナライズ》を無詠唱で当たり前のように使えるようじゃのぅ)
魔道帝オーランから見ても唸る魔法技術を見せたアンジェリーナだが、しかし、子供のようにテーブルをバシバシ叩きつづけていた。
「諦めんぞ! 私は諦めんぞ!」
そんな、見苦しいアンジェリーナの姿をみて不愉快そうに眉を寄せた、四人目の桃色の美少女が豪華な魔法の扇で扇いで突風で吹き飛ばす。
そのまま、アンジェリーナを壁に激突させたエリザリーベ・エルカムティ・エルエレンは、悪い笑みを作って言う。
「相変わらず煩くて下品な奴じゃな」
「むっ! そういう貴殿は泣き虫の小娘じゃないか!」
護衛がいないと言うことは、四国間の信用がそれだけ厚いと言うことで、そんな中で、アンジェリーナを攻撃したエリザリーベの行動は、あってはならない事なのだが......
「ハハ、妾に、生娘程度が吠えているのじゃ! 片腹痛いのじゃ! 男を知らぬ身で吠えても、発情した子犬にしか聞こえんのじゃ! ハハハ!」
「なっ! その言い方、まさか! エリザリーベ殿! 主も......なのか!」
この二人、実は、勇者学校の同居人で、出会って二分で喧嘩別れするほど仲が......とても良かった......
「この手の話に奥手だった、エリザリーベ殿が見ない間に......お主の心を開いたのは誰か聞きたいぞ」
「ほーう。そうか、知りたいか! ならば教えてやるのじゃ! 妾を少女から女にした男は......」
エリザリーベがその名を口にする瞬間、どろりと会場の空気が重くなった。
圧倒的な何かが来る!
それを、三人の少女の中で唯一、エリザリーベは感じ取り、視線をオーランへと向けた。
エリザリーベの視線の先の空間がバァリンと音を立てて割れて、異空間が開かれる。
その中から、出てきた水色の小さい幼女の姿をみて、エリザリーベは異物感で吐き気を覚えた。
「その話。わたしくしも混ぜて頂けますの?」
「っ! お師匠様!」
エリザリーベが闘士として素質があるからこそ、分かってしまう。
逆らえない死の臭い。
それが、オーランの前に現れた幼女から、吐き気を催すほど漂っている。
例えるのなら、ライオンと子ウサギ。それが、エリザリーベの神経に極上の警鐘を鳴らしていた
バチバチバチと触るものすべてを拒絶する規格外の魔力の持ち主、人類最強の一人《魔道神》 バァリロリロ。
「痛い、いたたっ! お師匠様! 乗られると痛いですぞ!」
「それぐらい、我慢するですの? わたくしに隠れてコソコソと、悪巧みをしてますの?」
「してませんぞ! それとお師匠様。今は会議中なのでお師匠様は......」
幾重にも張られているはずの、高等結界は、魔道神バァリロリロの前では、紙の壁にすらならかった。
「帰れとでも言いたいのですの? オーラン。知っていますのよ? 年若いとか、生娘とか言ってますのよね? わたくし、生娘ですのよ? 参加資格はあると思いますの」
「お師匠様......二千年以上......うう! お師匠様ぁああああ!! ワシがお相手しますぞ!」
「《黙りますの》! わたくしに触れない分際で、死にたいのですのね?」
莫大過ぎるバァリロリロの魔力は、言葉を簡単に魔法に変換させる。
オーランの口が黙れの一言で、開かなくなり、バァリロリロの死の視線が向く。
バァリロリロにとって弟子あるオーランでも、等しく有象無象に過ぎなかった。
ただの知り合い、故に、何時でも殺すことができる。
バァリロリロの小さい手が、オーランの首を触る。
バチバチバチバチバチバチ!!
魔力の紫電が弾けオーランの喉を焼いていく......
「《止まって》いれば楽に殺してあげますの」
「ぐぅ!? ぐぅううう!!」
享年八十......そうなりかけた、その時。
すっと、アンジェリーナがバァリロリロの腋の下を掴んで抱き寄せた。
「っ!」
「オーラン殿。いくら、可愛い孫だからと言っても連れて来ないで貰いたいな!」
ふさふさっと、バァリロリロを抱き抱えながら、何でもないように、バァリロリロの頭を撫ではじめる
その行動をやっているアンジェリーナ以外は全員が、驚愕していた。
魔道神バァリロリロに......触ってますの!!
「な、何故ですの! わたくしに触れるのはお兄様だけですのに......!!」
「ん? 何のことだ?」
そこで、死にかけていたオーランが起き上がり、バァリロリロの事をすべて説明した。
危険取り扱い要注意ですの!! ということも含めて、
バァリロリロの境遇をすべて聞いたアンジェリーナは、膝の上に載せたバァリロリロの頭を優しく撫でながら大笑いしていた。
「ハハハハハハハハーっ! カイルが言っていたバァリと言うのは、魔道神の事だったのか!」
「......お兄様と知り合いですの?」
「うむ。婚約者だ!」
ゾクリと、背筋を奮わせながら、オーランはバァリロリロとアンジェリーナの会話を見守る。
「まあ! お兄様ったら、こんな所にわたくし以外の、隠し妻を持っていますのね......」
......空気が重くなる。
バァリロリロを唯一抑制できる。カイルに、バァリロリロが怒り出せば、もう手がつけられなくなり、大陸は血の海に沈むことになるだろう......
「流石はお兄様ですの! もっとモテモテになって欲しいですの!」
しかし、普通なら、恋する人に裏切られたと思う盤面も、千年の価値観の差がある。バァリロリロに取っては喜ばしいことでしか無かった。
千年前は、今よりも男が沢山の女を抱えていた時代。
バァリロリロの兄も数百の妾を持っていたとかいないとか......
とにかく、バァリロリロのカイルへの恋の前には、全てが「流石ですの」の一言に変わるのだった......
「しかし、敵性を弾く《魔の化身》か......皮肉な事だな、私はあらゆる敵性をけす《治癒の化身》。表裏一体と言う奴だな」
そう、
バァリロリロが、攻撃性に特化した能力を持つ代わりに、触れ合う全てを攻撃してしまうのなら、
アンジェリーナは、防御性に特化した能力を持つ代わり、触れ合う全てに攻撃できない。
表裏一体の能力。
故にアンジェリーナはバァリロリロを触ることができ、バァリロリロもアンジェリーナを触ることができる。
実はこの二人。組んだら世界最強かもしれない......
そんな、破壊と再生の神が仲の良い姉妹のように卓についた。
「では、第一回。同盟会議を始めるぞ! 最初の議題は、魔界進出の前に友好の証として四代同盟で翌年、明けに行う《大魔闘舞踏祭》だ! 参加資格は、Aランク以上のダンジョン攻略実績、優勝者には我等同盟国が全力で願いを一つ叶えるというものだ......」
こうして、個性豊かで化け物ぞろいの同盟会議が始まった。
しかし、
(カイルよ。勿論、私が優勝して、お前と必ず結婚してみせるからな!)
......アンジェリーナの口元がニヤリと引き結ばれていることには、誰一人気づくことは無かった。
■■■
2013年12月25日。
四大同盟会議が行われている、学院都市の国際会議場の外をカイルが、聖女シルフィア護衛として、警備していると、同じく魔道神オーランの護衛として警備していた、ジーニアスとばったり出くわせていた。
「やあ。カイル。久し振りだね。シルフィアとの生活はどうかな?」
「......ジーニアスに報告する程、特には......それでも強いてあげるなら......」
「っ!」
シルフィアがカイルの事を想っている事を知っているジーニアスは、少し緊張してしまう。
なぜなら、ジーニアスは幼いときにシルフィアの騎士となると決めたときから、ずっと想いを寄せていたから、
シルフィアがカイルを好きなのも、カイルがシルフィアを憎からず想っていることも仕方ないとジーニアスは思う。
カイルは優しくて意思の強い男だし、シルフィアがずっと待ち望んでいた理想の男性だった。
だから、それは仕方ない......
しかし、二人のラブストーリーを聞きたくはない。
まだ、ジーニアスはシルフィアへの想いを諦めても、カイルにこのままシルフィアを奪われるとも思っていなかった。
「......やっぱり、何人か刺客が来た。それでも大分落ち着いてきたから、俺は今日で学校に戻るけど......ジーニアス。シルフィアを頼むよ?」
「っ!」
カイルは、あくまでシルフィアの護衛としてそこにいた。
命を懸けてシルフィアを守っていた。毎日神経を研ぎ澄ませて、刺客が送り込まれれば、剣を手に戦い、血を流した。
ミリス聖教での襲撃回数は百はくだらなかった。
その全てをカイルは返り討ちにして、シルフィアをたった一人で守り抜いた。
それを、ジーニアスはカイルの真剣な言葉から感じ取って......
「カイルに言われるまでも無いね。僕はずっとそうやって来たんだ。これからも......ずっと僕がシルフィアを守る」
「……だね」
カイルは目を閉じてから、ジーニアスの顔をまっすぐ見つめて、
「これからも、シルフィアを護ってくれ......」
自分にはしたくても出来ないことを、頼んだ。
そんな、カイルの反応は、ジーニアスには既に勝ち誇られているようで、いらついた。
「別に! シルフィアはカイルのものじゃないんだよ? そういう言い方はどうなのかな?」
「......あ! 悪い......そうじゃなくて......」
「あなた!」
カイルが、ジーニアスに言おうとした言葉を遮ったのは、四大同盟会議を終えて会場から、出てきたシルフィアだった。
ジーニアスが「あなた? ん? シルフィア?」っと二人の呼び方に違和感を感じていると、振り向いたカイルがシルフィアを見て自然に腕を伸ばす。
「シルフィア、終わったの?」
「......はい。まだ、あなたにも詳しくは話せませんが......」
こちらも自然に、シルフィアはカイルと会話しながら、そっとカイルの腕の中に吸い込まれる。
そのまま、ジーニアスに見せた事が無い、極上の幸福を感じている蕩けた表情に、仄かに赤くした頬で、カイルの胸にほお擦りする。
そんな、シルフィアの腰と背中をカイルが優しく抱いていた。
「あなた......」
シルフィアの赤い頬が更に紅く染まっていく......
無言でキスをねだって物欲しそうな顔をするシルフィアにカイルも無言で唇を近づけた。
とろとろとろ......
それを見ていたジーニアスには、二人の交わしたキスがひどく官能的で、刺激的で......腰を抜かしそうになっていた。
長かったのか短かったのかも分からないほど。
ただ一つ、分かることは、シルフィアから、カイルにキスを求めたと言うこと。
けして、カイルが一方的に嫌がるシルフィアのくちびるを無理矢理奪った訳でない、お互いの同意だった......
時間にして、約一分......たっぷりキスを味わったシルフィアは、安心と幸福感で蕩けきった表情でカイルに全体重を預けてしまう。
「......あなた......今日は何時もより......甘えさせて頂いても良いですか......?」
「良いけれど......シルフィア、ジーニアスの前だからね? 少し、引き継ぎの話をしておこうよ」
「っえ? ......はっぁぁぁっ~~!!」
そこで、ようやくシルフィアの視界にカイル以外の者が映った......
しかも、幼なじみのジーニアス......兄妹の様な関係にそういことを見られる恥ずかしさは、熱したヤカンが溶け出すほどシルフィアの頬を紅く染めた。
(カイルさんと......今日が特別な日で、最後だと思って焦り過ぎました......反省です)
それでも、シルフィアはけして、カイルから一ミリルも離れようとはせずに、その場でくるりと回り身体の向きを変えてジーニアスに向き直ると、カイルの身体に寄り添ったまま、にこりと微笑んだ。
「お久しぶり......ですね? ジーニアスさん、会いたかったですよ?」
「......」
シルフィアの事をずっと見てきたジーニアスにはその言葉が本心で無いことも、先程まで、カイルに見せていた微笑みとは、違う事も解ってしまい......胸がきゅんと少し痛んだ......
そんな、ジーニアスにカイルは、シルフィアの腰を抱き寄せると、
「話を戻すよ。ジーニアス。俺、シルフィアと正式に結婚することにした。だから、シルフィアはもう、俺の花嫁なんだ。......俺のものにした」
「ふふ、俺のものに......だなんて......ふふ、素敵です。でも確かに、私はもうずっとあなたに、身も心も全て捧げてまいました......よ?」
「シルフィア......もう少し待ってね」
抱き寄せられたシルフィアはすかさず、普段誰にも見せない方の表情でカイルの胸に手を沿えた......
「お、おめでとう......」
一言......その言葉を搾り出したジーニアスに、シルフィアは嬉しそうに丁寧にお礼を述べた。
そして、
「シルフィアと一緒に住めるようになるのは、もう少し先だけど......」
「......残念。ですが......今はまだ私はミリスの地を離れるわけには行きません......でも、ミリス聖教の体制を整えたその時は、カイルさんのいる地に、移住します......」
更に聞いても無い、予定を話し出す......
「っあ、ジーニアス。シルフィアは恐がりで一人で寝れないから必ず添い寝してあげてね?」
「添い寝!?」
「ふふ、もう、あなたった、ら!」
ズン!
シルフィアの微笑みが急に凍りつき、踵でカイルの足を踏み付けた......
「痛~~っ!! シルフィア!? 暴力反対だよ?」
「......ふふ、ジーニアスさん。カイルさんの言葉を鵜呑みにしないでくださいね......?」
「う、うん。はは......だよね」
カイルの失言にジーニアスが苦笑してごまかしていると、カイルがシルフィアの事を真剣に見つめながら、
「っえ? 一人で寝れるの? また、倒れる前に、ジーニアスに......」
「あなたは、黙っていてくれますか......?」
「でも、寝れないって涙目で何時も......」
「黙って!! くれますか?」
「っう」
普段。どうやってカイルに甘えているのかが分かる、カイルの言葉に、シルフィアはキッ! とカイルを睨みつけて、黙らせる。
(シルフィアはカイルにはそういう表情も出来るんだね......)
しかし、それがジーニアスに、シルフィアがカイルと一緒になることが、一番幸福なんだと確信させた。
誰にも微笑み以外を見せない《白い天使》は、カイルにだけは、心の機微を見せられる......
ジーニアスには絶対に引き出すことの出来ない表情だった。
「カイル。君のいない間。僕が必ず、シルフィアを守る。だから、カイルはシルフィアを幸福にするんだよ?」
「ん? うん。......」
この時。ジーニアスは今までと違う気持ちで、シルフィアの騎士となることを決意したのだった。
「では、ジーニアスさん。私達はこれで......あなた。行きますよ......?」
「シルフィア......怒ってる?」
「怒っていませんよ?」
カイルの腕を抱いて引きずりながら、立ち去ろうとするシルフィアに、ジーニアスは......声をかける。
「シルフィア」
「はい。......なんですか?」
早く帰りたいシルフィアはそれでも立ち止まって、振り返らずに聞き返す。
それが、カイルの花嫁として身を固めるシルフィアの精いっぱいのカイルへの誠意だった。
(いくら、ジーニアスさんでも、私用でカイルさん以外の殿方と、目線を合わせて長く話すのは、良くありませんよね......? 添い寝しろとかいう......お殿様ですが......)
「君は今。幸福かい? その騎士で後悔はしないかい?」
「っ! ......ふふふ」
シルフィアは、最大の笑みでジーニアスに振り返って、言うのだった。
「はいっ。ふふ、カイルさんが、私にとって最高の騎士様です。......この先、どんな過酷な未来が待ち受けていたとしても、私は生涯、この選択を、後悔することだけはありません......! 後は、この方との未来が最良の結末になるように努力をするだけですよ? 努力した結果を人は運命と言うべきですから......」
シルフィアの微笑みは、空に輝く太陽よりも、明るく綺麗で、魅力的だった......
その夜......
シルフィアとカイルに宛がわれた高級宿屋で、夕食を済ませたカイルは、機嫌の悪いシルフィアに、
「ね? 怒ってるの?」
「怒っていませんよ......?」
「なんで? 怒ってるの?」
「怒っていませんよ......?」
カイルはため息をついて、欠伸をし大きく伸びる。
シルフィアのこの感じは、割と良くあるのでもうなれていた。
「じゃあ、今日は別々で寝ようか」
こう言うときに、一緒に寝ようとすると、更に怒るのも心得ているカイルなので、明日には機嫌を直していてくれることを祈りつつ、さっさと寝てしまうことにした。
「っ! カイルさん! 怒っていませんので、今日は......共寝を......したいです」
「あ、そうなの? 良かった......。実は、夕方、シルフィアとキスしたときから、俺もムフフな気分だったんだよ」
眠るために薄い着物になったシルフィアが、カイルのベッドに入り込み、カイルの腕に頭を載せて、小さく微笑んだ。
「ふふ、......良いですよ?」
「......うん」
......ニャンニャン。
二時間後......
十二月で、季節は冬だと言うのに、汗まみれになったシルフィアは、驚いていた。
「今日......は、激しいですね......?」
「うん。今日でしばらく、シルフィアと会えなくなると思うと、ね?」
シルフィアが疲れているみたいなので、カイルは、ムフフするのを辞めて、シルフィアを抱きしめる。
そうすると、シルフィアを愛おしく感じる......
「ごめんね。色々......迷惑かけるよ」
「いえ、あなたのかける迷惑は、ご褒美ですよ......? 私と会えなくなるのを淋しいと思っていただけるのは、あなたには悪いですが、私は少し嬉しいですし......」
「っ! はは、なら、良いけど......でも、シルフィアの事も考えずに......もう、寝よっか? 明日は......早くないけど......」
綺麗な砂浜の白砂のようにサラサラな白い髪を撫でてカイルが言うと、シルフィアは、そっとカイルにキスをして柔らかく抱き着く、
「良いですよ? あなた。今日もあなたが満たされるまで続けてください」
「......それじゃ、今日は寝れなくても平気? 身体が熱くて仕方がないんだ」
「ふふ、もちろんですよ? あなたの体温が私の力になりますから......何時まででもお付き合い致します」
「......そういえば、シルフィアはそうい能力だったね......じゃあ、お願いします」
「......喜んで」
小さな明かりの中、微笑んだシルフィアとキスを交わして、もう一度ムフフ......
「でも、カイルさん。それはカイルさん。限定ですからね? 他の方が近くにいても安らぐことはおろか、安心することも出来ませんよ......? 安易に別の殿方と添い寝しろと言うのは常識を疑います」
「うっ......シルフィアが気持ち良く寝れるようにって......思って......別にムフフしろとは言ってないし......」
「それと、私は、カイルさんの事なら大体許容出来ますが、外で、家庭内の事を言い触らさないでくれますか? ......あなたにだけ、甘えたいのですから......」
「うん......」
シルフィアに怒られて、落ち込んだカイルに、シルフィアは微笑みかける。
「少し......言い過ぎましたね? すみません。まだ、満たされていないですよね?」
「うん。でも......(ちょっと怒られて気分が......乗らないから)」
「では、もう、つまらない小言は辞めにして、この身全てであなたを満たします......ね?」
がさ
「シルフィアっ!」
「ふふ、知ってますか? あなた。十二月二十五日。今日は、女神ミリス様が聖誕なされた日。ミリス聖教ではこの日を祝って聖誕祭を開きます」
「それが?」
シルフィアは、カイルの首に手を回して、ちゅっとキスをして、天使の微笑みを浮かべる。
「ふふ、焦らないでください......女神ミリス様は、世界に愛を伝えた女神。いわば《愛の女神》です」
「......」
妖艶な微笑のまま、カイルに唇を再び近付ける。
その際、カイルの身体にシルフィアの豊満で、艶やかな身体がぺとりとくっついてカイルに幸せな感触を与える。
「聖誕祭......子供に取っては、美味しい食べ物を食べて祝う日ですが、恋人達や、夫婦はもう一つ、大事な儀式をします」
「それって......」
何時に無く積極的に身体を合わせるシルフィアの言葉に、カイルも少しだけ分かってしまった。
「......ふふ、今日は沢山甘えさせてくださいと、最初から言っていましたよ......?」
「......(ゴクリ)」
「だから良いんですよ? いえ。.....今日は、こう言いますね? 良いですか......?」
シルフィアの間近から聞こえる声は何時もよりもとろりと甘く、魅惑的で、官能的だった......
「っ! シルフィア!」
カイルはその時から、我を忘れ、シルフィアに抱きしめた。
朝まで二人の部屋から明かりが消えることは無かったという......




