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金髪と魔剣と冒険とカイルのハーレム!!  作者: オジsun
三章 魔法学院の聖女
27/58

十七 魔道王ジーニアス

 立ちのめる硝煙が香ばしい香を発生さている、半径百五十メトル程の円型の魔道競技場で、二人の少年が百メトル程の距離で向かい合う。


 魔道を極めて王級に至る魔道師ジーニアス。

 敗北の屈辱を乗り越えた、勇者候補カイル。

 二人の戦いは熾烈を極めていた。

 

 少ない才能を磨き上げ遂にカイルは、新たな力、鉄魔法(特殊魔法)を手にしたが、ジーニアスも天才の力、六属魔法(シックス・マジック)を使って圧倒した。


 六属魔法の全ての物質を分子に還すという、とんでも魔法に対して、カイルは内心の怯えを理性で押さえ付けて一歩を進める。

 だがそれは、ただの悪あがきでも、無謀でも、考え無しでも無かった。


 『六属性を束ねる、ジーニアスさんの固有魔法は確かに強力無比ですが......強すぎる故に人を狙えば必殺にになってしまいます......。だからこそ、ジーニアスさんは絶対にカイルさんには当てて来ません。落ち着いて対処してください』


 試合前のシルフィーの言葉を思い出してカイルは至って冷静に思考しながら詠唱する。


 《鉄の精霊を、俊足の弾となって、かのものを打ち滅ぼせ!!》

 

 中級鉄攻撃魔法メタル・バレット

 カイルは鉄魔法の詠唱をほぼ知らないが、それは鉄魔法に対する圧倒的な適性と、シルフィー直伝、心層の形を魔法にする、改編魔法の知識で魔法を発動する。


 バレット系統の魔法は威力、速度、共に高い。

 発動させてしまってから後攻で防げる魔法は殆ど無い。

 そんな、超高速で迫る、メタル・バレットをイグニードは


 《六魔の壁よ!》


 一瞬で詠唱を終わらせ、分子還元属性を持つ壁を作り出し防いだ。

 それが、最強の盾であることはカイルも一瞬で理解した。


 ......アレは鉄魔法じゃ無理だ!


 《炎の精霊よ、俊足のーー》

 

 カイルはすぐに炎属性に切替、詠唱を始めるが、ジーニアスは既にカイルに付き合うつもりは無かった。


 《六属の化身よきたれ!!》

 

 瞬間、ジーニアスの四方に三メトル級の六体の魔法創造体(ゴーレム)が出現した。

 通常一体ごとに一詠唱必要なゴーレム錬成だが、ジーニアスは一度に六属性全てを使う。

 同じ詠唱で同じ系統の魔法を同時に発動する高等魔道技術【重属詠唱】それをジーニアスは六属性全てで行うのだ。


 

 「《......っ、炎の玉で、焼き払え!!》 ええーーっい!! 粉くそ! くらいやがれーーーっ!!』


 カイルも詠唱を終わらせ神速の炎弾を飛ばすがそれは、六体のゴーレムの内一体、水のゴーレムの身体に当たって爆散すらせず防がれてしまう......


 じりじりと首が締まっていくのを感じながらカイルはそれでも勝利を模索する。


 「君が僕を越えると言うなら、僕は君に全力で相対するよ!!」

 「うるせー!! ユウナが見てる前で......二度も負けられないんだよ!! ......俺を信じるシルフィーの為に、俺は何が何でもお前を越えるぞ! 魔道王!!」

 「シルフィー......ねぇ.......」


 にやりと笑い、挑発して来るジーニアスに、カイルは魔力を練り上げる。


 「というか、それ(ゴーレム)反則だろ流石に! 魔法じゃ無いじゃん! 生命体じゃん!」


 しかし、カイルも流石に今から六体のゴーレムとジーニアスを相手どるには状況が悪いと、せめてもの口撃にでる。

 それが......


 「そうですわ!! ジーニアス! ズルは行けませんわ!! 正々堂々と闘うのですわ!」

 「そうなのさー。編入生のカイルに対して大人げ無いのさー」

 

 そうだ、そうだ、と波紋を呼んだ。


 (おっ!? これはイケるか? 正直ありがたいぜ! 皆! もっと言え! もっと煽れ!)


 そんな、カイルの思惑は審判の学院長オーランの一言。


 「魔法で生み出したゴーレムだからありじゃ! 魔法闘技戦は殺人と禁忌魔法以外あらゆる魔法の使用が可能なのじゃぞ」


 それで瓦解した。

 が、


 「つまり......魔法を使えばなんでもありと?」

 「そうじゃな......魔法ならのうぅ」


 そこでカイルは唇を歪めた。

 そのカイルの笑みをみて、マリンがブルリと身体を震わせる。


 「あわわわ......カイルさんが、金髪の女性を見るときの顔をしています......」

 

 ......どんな顔だよ。


 というツッコミを入れる人は居なかった。そりゃあ居ない。

 なぜなら、マリンの隣で


 「......カイルの方が凄い......すごい......すごいんだから......もしも、があれば......ジーニアス......コロス......わ、ケタケタケタケタ」


 ............。



  そして、カイルは、


 《鉄の剣よきたれ》


 魔力を練り上げて、紫電を弾けさせながら片手剣を創造した。

 白銀にギラギラ輝くその武器をみて一同。


 「「「「もろ武器やん!?」」」」


 と思ったが、やはり突っ込めない。なぜなら......以下略。


 「ほーう......創造魔法......いや、錬成魔法かな? カイルは鉄魔法に関しては天才的だね」

 「そりゃあどーも」

 「まぁ。鉄魔法は特殊魔法の中でも一番、地味で意外性の無い魔法だけどね」

 「......ほっとけ! それより、そろそろ決着にしよう。魔力が限界だ」



 カイルは錬成した、剣を中段に構える。

 遠距離戦がセオリーの魔道師としては剣を使うのは、邪道も良いところだが、カイルはやはり剣士だった。


 「行け! 僕の魔力達!!」

 「はぁあああああっーー!」


 向かって来るジーニアスの水のゴーレムを一刀で両断し、続く土のゴーレムも返す刀で切り裂く。

 そこで、魔力で作った片手剣の耐久値がなくりバリンと割れる。


 が、カイルは後ろに飛び下がりながら、


 《鉄の精霊よ、頑強な鉄の槍で撃ち抜け!!》ーー《きたれ鉄の剣よ》


 メタル・ランスと錬成剣を連続で詠唱する。


 メタル・ランスが炎と雷のゴーレムを貫抜いてそのまま、ジーニアスに迫るがそれは、


 《六魔の壁よ!!》


 シックス・マジックの分子還元の壁に阻まれる。

 が、その間にカイルは着地。

 そして、その反動を利用してかける勢いで最後の光のゴーレムも切り裂いた。


 「剣を使えるなら、まだまだやれるぜ!」

 「ふっ。面白い! だけど僕の魔力もまだまだ余裕だよ! 《魔弾の雨よ!》」


 距離を詰めて畳みかけようとするカイルに、ジーニアスは冷静に対応する。

 ジーニアス専用創作魔法シックス・レイン・バレット


 ジーニアスが生み出した魔法だ。

 そして、六属性の魔弾が大量に展開しそのまま発射される。


 《鉄弾の嵐よーっ!》


 対抗すべくカイルも鉄魔法で似たような魔法を使う。

 奇しくも、ジーニアスとカイルの攻防は開始直後の炎弾の撃ち合いと似た状況になる。

 しかし、今度はお互いが得意な魔法同士の撃ち合いだ。

 炎弾との数の差は言うまでもない。

 【重属詠唱】で単純に六倍の魔弾、それに対抗すべくカイルも同等の鉄弾、それが一斉に放たれ激突する。


 その雨の中をカイルは走る。


 《鉄の槍をもって貫け》


 走りながら魔方陣を詠唱するカイルに、ジーニアスは戦慄する。

 同じ属性の魔法を使えば使うほど、魔力暴発の危険性が増す。

 だが.......カイルの鉄魔法は何度使っても、途切れることをしない。


 「くっ! 何連続目だ......っ! 《六属の.......くっ! 無理か》なら! 《六精よ、集まり合わせ混ざり合え!》 行け! 僕の魔力達!!」


 シックス・マジックの魔弾が音も跡形もなくメタル・ランスを分子に還す。

 だが、


 「っハハハ! まだ行けるぜ!! 《鉄の槍をもって貫けーーーっ!!》」

 「くっ! クソっ!」


 そこで初めてイグニードがメタル・ランスを避けるために脚を動かした。

 

 ......勝機!


 カイルはその空隙を見逃さない!

 鉄の錬成剣を握り締めて、接近し、そして、叩ききった!!


 ドスンッ!!

 

 対人間用に刃を潰した錬成剣は見事にジーニアスの身体に当たり鈍い音を発てて地面にたたき付けた。

 そして、カイルは剣をジーニアスの喉元に突きつける。


 「ぐっ......」

 

 呻きをあげるジーニアスに、


 「俺の......勝ちだ。天才! ......降参しろ。俺には、なぶる趣味は無い」

 「......僕だって無いよぉ......。アレは君が倒れなかったから......ぐっ」


 まだ口八丁手八丁で逃れるつもりのジーニアスに剣を少し喉に突き当てる。

 すると、ジーニアスは身体の力をスッと抜いて手を挙げた。


 「降参......僕の負けだよ、カイル」


 ......勝負あり! 優勝カイル! オーランの宣言。



 その瞬間、競技場が大歓声に包まれてカイルの勝利に酔いしれる。


 そんな、喚声の中、白い少女がカイルへと走った。

 ギリリと奥歯とハンカチを噛むユウナはそれを、何も言わずに見届ける。

 

 (ま、今回、カイルの近くに居たのはあの子よね......感謝するわ......シルフィー)


 バリンと砕ける剣の代わりに、ふわりと白い天使がカイルの手をとった。

 

 「シルフィー......よかった......俺、勝てたよ?」

 「ふふ、最初から私は勝てると言ってしましたよ?」


 嬉しそうに微笑むシルフィーの顔をみて、やっと勝利が現実となりはじめたカイルは、一気に身体の力が抜けていく。

 魔力欠乏症......今の今まで立ててた事が不思議な位の重傷具合だった。

 

 そんな倒れる、カイルをそっとシルフィーが受け止めた。

 とても甘くて柔らかく、どこか.......はかない。


 「ごめん......聖女......様」

 「聖女はやめてください......ふふ、でも......今日だけは特別に貴方だけの聖女になっても良いですよ?」


 プツン。カイルの意識は極限の疲労と魔力欠乏症によりそこで切れる。

 そんな、意識を失ったカイルを聖女の様に優しい手つきで頭を撫でていた。

 

 「やれやれ......負けたよ。どっちが天才だか。で? 何故君は、カイルに肩入れするんだい?」


 服に着いた埃を払って立ち上がりながらジーニアスは尋ねる。

 これは、A組の誰もが疑問だった事だ。


 「君は、何時も不正を許さず、誰にでも、平等に優しいけれど、それは誰に対しても平等なはずだった気がするよ? 《白天使》の名が泣くね」


 シルフィーのあだ名、「白天使」はシルフィーが誰に対しても平等に正義の優しさを振る舞う姿からつけられた......のだが、本当の所は、シルフィーが誰に対して心を開かず一歩距離を置いていて、近付きづらい高貴な存在を揶揄しているのだ。

 そんな、シルフィーが今回、一転入生にとった態度は既に平等とは言い難く、明らかにカイルに肩入れしていた。

 

 その理由を《白天使》の春が来たと見る人物も多かったが。

 ......魔道帝オーランの息子にして魔道王ジーニアスだけは、シルフィーのある秘密を知っている。

 だからこそジーニアスは気になってしまう。


 「あなたの騎士である僕の立場も考えて欲しいかな?」

 「......」

 「守り続けてきた僕ではなく、カイルを選ぶのは勝手さ、カイルは僕に勝ったしね。けれど僕に筋ぐらい通すべきじゃ無いかな?」

 「......」


 ジーニアスとシルフィーの会話は喚声に掻き消され誰にも届かない。

 だからシルフィーはジーニアスだけに聞こえる小さな声で呟く。


 「私も、貴方も、運命に縛られています。それでも......私は全てを受け入れます。これから先も貴方が私の騎士であることに代わりありません......」

 「そうか......良かったよ。僕は君の騎士であることは本望だから......でもそれなら、たまには僕にもそういう態度をとって欲しいんだけれどね? ほら僕負けたばっかりで凄く凹んでるんだけど?」 


 肩をすくめて言うジーニアスにシルフィーは無視し、ギュッとカイルを抱きしめて言う。


 「でも......この方は運命に縛られていません......この方の未来は決まっていません」

 「......っ!! 本当かい?」

 「はい......まるで、伝説の物語に出てくる【背徳の騎士】の様です」

 「それは......【望叶剣伝説】の裏切りの騎士の名だ......ハハハ、それとカイルを比べるのは可哀相だと思うけれどね? 最後は親友に殺される騎士なんだからさ」


 ジーニアスはカイルの事を認めている為に、シルフィーの言葉を否定しようとして......


 「......でも、私は、彼の話が好きなんですよ? ふふ......もしかしたらカイルさんは......私の運命を......いえ。......私は全てを受け入れるだけでしたね」


 そういいながら、シルフィーは大事に大事にカイルを抱いていた。

 そんな、シルフィーにジーニアスが口を開こうとして、


 「い! つ! ま! で!! カイルを抱いているのよ!! 返しなさい!」

 「ひゃぁっ!! ......ユウナさん......ぁっ......」


 ユウナがカイルをぶん取った。


 「全く! あんたは趣味が悪いわ、カイルは変態よ? 女の子の金髪を集めてクンスカ嗅ぐのが趣味なんだから! とっーても気持ち悪いわ! だから......やめておきなさい。カイルとは私が『......』のよ」

 「あわわっ! すみません。すみません。ユウナさんはーー」


 カイルを奪われて言葉にならない衝撃を受けていた、シルフィーはそこでようやく落ち着いて、ニコリと笑って、


 「っえ? 良く聞こえませんでした......? ふふ、カイルさんは私が? 何ですか?」

 「っれは......カイルは私が」

 「あら、すみません、思い出しました。『結婚する』でしたか? ふふっ違いました......?」

 「っ~~!!」

 「おめでとうございます。ユウナさん、私、ふふ、カイルさんにもそういいますね? おめでたいですから」


 ニコニコ。


 「っ~~~!! ......何をすれば良いのかしら?」

 「そんな! 何も要りませんよ。カイルさんを返して欲しいなんて言いませんよ? まさか花嫁様から取るわけにも行きませんし.......?」

 

 ドスん。

 ユウナはカイルの身体をシルフィーに返した。


 「あらあら? 良いんですか? そうですか、では結婚......は聞き間違いの様ですね?」

 「......っく。貴女......何時か泣かすわ」

 「ふふ。......こんなに楽しいのは初めてです。これから皆でカイルさんの優勝祝勝会と.......皆さんの歓迎会をします......もちろん、ユウナさんも、来て......」

 

 チラリとカイルを見てからシルフィーは微笑みを消さずに、


 「くれますね?」

 「......こんなに楽しく無い歓迎会は初めてよ。謹んで参加させてもらうわ」

 「あわわわわわわっ。カイルさ~ん。修羅場......ですよ!」


 とまあ、こんな感じに祝勝会が開かれる事になったのだった。 


 ■■■■

 十二年前。

 大陸の東の山脈にある、ミリス教の総本山。

 ミリス神聖教皇国の大教会で、ある修道女が、子を産んだ。

 

 その子には特殊な能力スキル)が宿っていた。

 それはミリス教団が根底から崩れるほどのモノだった。


 だから、ミリス教団、異端審問会は独断で【異端】認定して、殺処分したのだった.......

 

 ■■■■


 学園都市に並ぶ、都市。学院都市のオーラン魔法学院の魔法コンテストの様子を見ていた集団があった。

 真っ黒いローブに見を包み、個人を認定出来ないようにマスクを被った集団が、学院都市の路地裏の闇に紛れ込んでいた。


 その中でも三人。他とは違う黒いローブを纏った者達が声をひそめて言葉を交わしていた。


 「.......どうだった? 魔道王と魔道帝は? やれそうか?」


 最初に喋ったのは、赤黒い大きな両手剣を背に差している壮年の男だ。

 それに応えるのは、既にかなりの年老いた白髪の老人。

 老人は苦しそうに顔を歪めて言う。


 「まさか.......この年で戦うことになるとは.......のぅ.......。まあ.......不意打ちで、ワシの世界に拘束できれば大丈夫そうなのじゃ」


 それに続くのは、ドクロの仮面を被っている男。


 「オレッちも、不意打ちで失敗なんてしないぜ! クラークの兄貴」

 「やめろ.......フォーイ。お前に兄貴なんて言われたくない」


 やけに軽い男の言葉に、クラークと言われた男は、嫌そうに顔を歪める。

 

 「酷いぜ。クラークの兄貴。.......兄貴、この任務。本当なんですかね? 十二年前に死んだ。聖女が生きている.......なんて」

 「それを、今から確かめるんだろ。儀式の準備は?」

 「魔力適性の高いイケニエさえいれば.......」

 

 ドクロの男フォーイに、赤黒の大剣の男は詰まらなそうに魔法学院をみて言う。


 「ふん。それなら、平気だ。あそこに、いくらでもいるからな。贄と聖女は私が揃える。問題ない」

 「へへへっ。どうせならイケニエも女にしてくだせぇ。遊ぶんで」

 「.......ゲスが。まあ良いだろう.......」


 不吉な会話をしていたのだった。


 ■■■■

 

 魔法コンテスト終了後の夜。

 魔法学院の一年Aクラスの生徒達は、カイルの魔法コンテスト優勝と、カイル達編入生の歓迎会を、学院都市の酒場で開いていた。


 がやがやとコンテストを振り返り、白い麦のジュースをビチビチ煽る生徒達の中心で、何故かカイルは白い天使に絡られていた。


 「.......シルフィー? ちょっと離れてくれない? なんかニヤニヤしてる皆の視線が痛いから」


 事ここに至って、カイルは周りからの殺意に満ちた視線に気付いた。

 勿論、その理由も概ね正しく察しはついている。

 

 「ふふっ.......カイルさぁ~ん。ナデナデしてくださぁ~い」

 「.......飲み過ぎだよ! キャラ壊れてるよ! 天使じゃないよ、もう!」

 「ふふっただのジュースでぇ~す」


 カイルはシルフィーに絡まれていた.......

 カイルの勝利に酔った、シルフィーが白い麦のジュースを飲み過ぎて、呂律が回らなくなっている。

 そんな、シルフィーに絡まれるカイルをAクラスの生徒達は、羨まけしからんと、攻撃魔法の詠唱を開始している。


 カイルは、そんな、攻撃を鉄魔法で防御しつつ、そっとシルフィーを押し退ける。

 カイルの苦悩はシルフィーだけでは無いからだ。


 「カイルゥ~っ。えへへっ。カイルゥ~。何、イチャイチャしてるのよぉ~っ。私を撫でて.......よ?」


 どでんと、カイルに体当たり気味に飛びつくのは、ヨロヨロとシルフィー以上に出来上がっているユウナだった。

 カイルはユウナの事を、抱き留めて背中をさすってあげる。


 「ほら。水飲みなよ。その調子で他の男に飛びつくなよ」

 「優しいなぁ......えへへ。カイルゥ~。飲めなぁ~い。飲ませてぇ~口移しでぇ~」

 「おいっ! ユウナ。本当に大丈夫か?」

 「だぁいじょ~ぶぅ、アハハッ。カイル変な顔~。そんなに心配なの? なぁ~ら。カイル~。もっとぎゅ~して?」

 「.......」

 「うふふっ。私ね~カイルにねぇ~言いたいのぉ? 聞いて?」

 「.......」

 「あのねぇ~私ね~。ずぅーっと前からぁ.......カイルがぁ.......カイルがねぇ」

 「.......」

 「カイルの事がぁ.......だめぇぇえ。やっぱり言えな~い。アハハ.......zzzzz」

 「ユウナ!?」

 

 本格的にユウナが潰れてきたので、カイルが真剣に心配しはじめる。

 ユウナはカイルにとって何より大事な人なのだ。家族以上の人なのだ。


 と。心配していると。

 どで~んとシルフィーがカイルにしな垂れかかる。


 「ずる~い。カイルさぁん。私もぎゅうってぇ~欲しいでぇす~」

 「ええぃ! マリン!!」

 「あわわわっ!?」

 「回復魔法でシルフィーを癒せ。流石に正気に戻った時が憐れだよ」

 

 

 カイルは頭痛を抑えてシルフィーをマリンに治療させようとする。


 「あわわわっ。ユウナさんは?」

 「え? ユウナは良いよ。こっちの方が俺得だから」

 「あわわわっ」


 酔ってるとは言え、ユウナに抱き着かれるのはまんざらでも無いカイルだった。

 

 「僕がやるよ」


 マリンがモタモタしていると、見かねた、ジーニアスがシルフィーの肩を取り回復魔法を使い出す。

 

 《癒しの精霊よ、聖なる光をもって、彼の者に安らぎを与え給え。ヒール》


 回復魔法の光がシルフィーを包み込み、シルフィーの上気していた表情が元の固い表情に戻っていく。

 そして、


 「っ.......!」


 我に返るシルフィー。

 この時。シルフィーの脳は走馬灯に様にカイルに面倒臭い絡み方をしていたことを思いだしていた。

 それから数秒固まった後。


 「離してください.......少し、外の風に当たってきます」

 

 そういって席を離れた。

 そんな、シルフィーにジーニアスが哀愁感の漂う視線を向けてから、カイルに振り返る。


 「こんな時間に女の子一人は危ないな。カイル。少し様子を見てきてくれよ?」

 「は? なんで? ジーニアスがいけよ。俺にはお前が.......」

 「僕は.......彼女に......。.......彼女はカイルを気に入っているみたいだし、どうかな?」


 そういわれて、カイルは頭をガシガシかいてから、


 「気に入ってるって.......シルフィーは誰に対しても優しいだろ?」


 と、論点をずらす。今のカイルはユウナから離れたく無かった。

 が。


 「女の子を待たせるのは最低ですわ!」

 「そうだよ、カイル。シルフィーちゃんはきっとカイルを待っているのさ~」


 と、ツイテールとカーキに言われて仕方なく、立ち上がる。


 「マリン。ちょっと行ってくるから、やっぱりユウナに回復しといて」

 「は、はい。《癒しの精霊よ、ーー」


 騒がしい喧騒の店を後にして、カイルは外に出る。

 すぅ~っと冷えた、夜の寒さが身体を冷やす。


 寒いなぁ~っと思っていると、カイルは夜空の星を見上げるシルフィーを発見した。


 「シルフィー。風引くよ」

 「ふぁっ.......ふふ。心配して来て、くれたんですか?」


 シルフィーはカイルに声をかけられ、驚くが、すぐに微笑みを浮かべはじめる。


 「うん。ジーニアスが心配そうだったよ」

 「.......そう.......ですか」


 シルフィーは意味ありげな笑みを浮かべた後、空に視線を向けた。


 「カイルさんは、『運命』って信じますか?」

 「.......一番、嫌いな言葉だ」

 

 カイルは声のトーンをオクターブ落として言い切る。

 すると、シルフィーはクスクス笑って、


 「私は、信じるか、信じないか、聞いたのですが.......?」

 「.......」


 シルフィーの真剣な瞳に、シルフィーに取って大事な事だとカイルは感じとった。

 だから、カイルは真剣に答える。


 「信じるよ」

 

 そう、答えた。

 それに、シルフィーはニコニコ、微笑んで。


 「神様は? .......どうですか?」

 「信じない」

 「ふふっ.......神罰が下りますよ」

 

 まるで、本物の天使の様に微笑むシルフィーに見取れそうになっていると。


 「カイルさんは.......本当に、面白い人.......ですね?」

 「褒めてるの?」

 「はい.......とっても。カイルさんと話していると、運命を忘れられますから」


 そこで、シルフィーがポロポロと涙を流した。

 

 「シルフィー.......。君は俺の事を救ってくれた。だからシルフィーが困っているなら、俺はシルフィーに力を貸すよ?」

 「なんの、事ですか?」

 「最初から.......君の微笑は何処か悲観的に感じていた。何か悩みがあるんでしょ? 教えてよ」


 シルフィーの微笑みは美しい。それは誰もがそう思う。

 けれど、絶望を知っているカイルは、シルフィーの微笑みに曇りを見る。

 それが、シルフィーの美しさを引き立てているのだろう。

 少しだけ、はかない、その感情の根源をカイルは問い質す。


 自分に似ている。白い天使のその内面を。


 シルフィーは一瞬、息を呑んで瞳を広げてそして、目を閉じる。


 「では、貴方は私の為に『背徳の騎士』になれますか?」

 「背徳の騎士?」

 

 シルフィーの声が、とても鋭く、冷たく、そして、重くなる。


 「私の為に、全てを、捨てられますか?」

 「.......っ」


 ゾクリ。


 背筋が凍り、言葉は出ない。

 シルフィーの言葉の意味がわからない。

 

 シルフィーは、答えないカイルにそれでも縋るようにいう。


 「私、以外の全ての人類を敵に回してくれますか? 私だけを守る騎士になれますか?」

 「.......」

 「ふふふ.......そうですよ、ね。貴方には既に、守るべき姫がいるのですから.......無理ですよね?」

 「.......シルフィー」


 何も、分からない、けれど、名前だけを叫んだ。

 それに、シルフィーは再び、目を開き、悲しさの乗った微笑を浮かべて言った。


 「忘れてください。ただの言葉遊びです」

 「.......」

 「戻りましょう。寒くなってきましたから」


 そして、カイルはシルフィーの騎士には慣れないと理解したのだった。

 遠くなるシルフィーの後ろ姿にカイルは一人つぶやく。


 「大切な.......全てを犠牲にしないと.......いけないのかよ.......」


 呟き、カイルは空に浮かぶ星を一人眺めた。


 

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