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金髪と魔剣と冒険とカイルのハーレム!!  作者: オジsun
二章 ローゼルメルデセスの姫
18/58

十話   『兄は妹を愛さなければ許されない』

「《ウォール》!! ミリナっ! カイルのソレは『魔力欠乏症』だ!」


 混沌とする状況の中、アンナはただ一人冷静に結界を張り、体制を整えようとする。

 だが。


「アンジェリーーーーーーナ!! 我が愛くるしい妹よ! 私が迎えに来てやったぞ! ハハハハハッ!」


 ダンッ!


 空から着地した金髪の男が、簡単に結界を破壊してしまう。

 その男こそ、アンナの兄にして、ローゼルメルデセス第一王子にして、『七騎士』第二騎士団団長ゴルドン・ローゼルメルデセス。


《炎王》イグニードと双璧をなす最強の一角。

《光王》ゴルドンだった。


「ムッ! 寄るなッ! 《ハイ・ウォール》」

「フハハハーーッ! 照れるでない。解っておるぞ? 私と会えて嬉しいのだろ? 私も嬉しいぞ!!」

「断じて照れてなど無いッ! だから兄様に会いたくなかったのだ!」

「そうか! ならば結婚しよう!」

「断る!!」


 全く噛み合ってない二人の会話。

 しかし、どこか和やかな対峙は、ゴルドンの視線に、カイルとミリナが、映ったことで終わる。


「アンジェリーナ。王命だ。その賊共を差し出すのだ」

「断ると言っておる!」


 鋭い視線が、アンジェリーナとゴルドンの間で交わされ、


「ふっ。じゃじゃ馬でも可愛いぞ! しかしならば! 私が直接、処刑しよう!」

「……例え兄様にも! させん! 《テン・ウォール》」


 ゴルドンが、騎士剣を向けて駆け、アンナが、結界を十重に重ねかける。

 重なりあった結界は、準帝級級の防御力にまでなっている。

 しかし……


 スパンッ!


「私と姫を阻む壁など存在しないのだ!」


 ゴルドンは一太刀で、結界を半壊させた。

 瞬間的に結界を張るアンナも、それを一瞬で斬ってしまうゴルドンも、ローゼから見れば異次元のやり取り。


「さあ! アンジェリーナ姫! その下衆の命をもって! 私と婚姻を結ぶのだ! 子供は十人は作るぞ!」

「気色の悪いことを言うな! 私は近親婚などしないぞ! 《テン・ウォール》」

「ならば! イグニードと結婚するつもりか! 奴のマラがでかいからなのか! そっちの方が! 姫が満ちるからか! 私も奴と対してかわらんぞ!」


 絶え間無く、結界を生み出し斬り裂かれる。

 現状は互角……だが、アンナにはその性質上、攻撃に回れない。

 結局はジリ貧。


「殿御の価値はナニのでかい小さい等という小さい話ではない! ……心の有り様。それがすべて!」

「……では! 何故! イグニードを選ぶ!」

「選んでない! 奴が勝手に、私の婚約者を名乗っているだけだ!」

「ではッ! 誰のナニを受け入れると言うのだ!」


 ゴルドンは一度攻撃を辞めて、期待しながら妹を見る。

 自分を受け入れると言う事を疑っていない。

 そんなゴルドンにアンナは言う。


「……そうだな。誰かと結ぶならば! 私はカイルとそうなろう!」

「ム!」

「つまり、兄様よ! 人の恋路の邪魔をするでない! それをゲスと言うのだぞ!」

「ムムムムッ!」


 ローゼルメルデセスの血を引き継ぐ、ゴルドンの秀麗な顔が醜く歪み真っ赤に腫れ上がれる。

 愛する妹の好きな男……それが、カイル。対してかっこよくも、強くも無い下賤の少年。

 ならば!


「亡き者にして、姫を手に入れる!」

「ッ!」


 その瞬間、ゴルドンのスイッチが切り替わった。


 ゴルドンの本気の一線!!

 それは、アンナの結界を一振りで両断した。

 そして、もう一度、結界が張られる前に……ミリナごとカイルに剣を振り下ろす。


 その一撃はもう、アンナの結界では止められず、他に防ぐ手だてもない。

 カイルの死……


 直前。


 カンッ!


 差し込まれた騎士剣が、ゴルドンの剣を止めた。


「……なんのつもりだ。ローゼ! 王を裏切るのか!? 貴様に騎士としての誇りはないのか!」


 そう、止めていたのは白髪の姫騎士ローゼ。

 ローゼは、ゴルドンの剣を弾いてから、カイルとミリナを背に護るようにゴルドンに、立ちはだかった。


「ゴルドン様。私は……騎士として……いえ。私の信念が! 護れと言った方を護る盾となります」

「……」

「それが、私の騎士道ですから!」

「くだらん! くだらん! くだらん! 私と姫の邪魔をするなぁあああああああ!!」


 血迷った瞳でゴルドンが、ローゼに猛攻をしかける。

 それを、ローゼは捌きながら……


「姫様っ! 今までの非礼をお許しください。その少年に教えられました。私はもう! 迷いません!」

「ローゼ。貴殿は……うむ! ゆるす! だから! 私に力を貸すのだ!」

「はいっ! お任せください! この窮地、必ず切り開いて見せましょう!」


 ローゼが動いた事で、戦場の戦況も大きく変わる。

 ローゼの部下、千人が、軒並みアンナを護りはじめる。


「アンジェリーナ様! 罰は後で必ず受けます! だからどうか我々にも」

「うむ! うむうむ! それでよいのだ! 騎士ならば! 各が信じる信念にしたがえ! それが主の覇道となる!」

「「「ハッ!」」」


 その離反は、ゴルドンの《ライトニング・メテオ》から、カイルが騎士達を護ったことが大きい。

 つまり、カイルのやったことは無駄ではなかったのである。

 騎士達は、アンナに、そしてカイルに感謝をもって剣を取る。


「……」


 ゴルドンとローゼ。その部下達の闘いが始まった。


『七騎士』二人の音速を越える剣激が火花を散らす。

 しかし、同じ『七騎士』とは言え、ローゼはゴルドンに一歩劣る。

 その差は少しずつだが確実にローゼの傷となって現れる。


 騎士団達の闘いも、グーリヌとイグニードの二つの騎士団を相手にするローゼの騎士団が些か以上に分が悪かった。

 一手足りない、不利な戦況……だが。


「好機だな」


 今までの孤立無援にくられべれば、この戦況は好転しているようなもの。

 そして、コレを打開するにはあと一手打てばいい。


「ミリナ。どくのだ! カイルを起こす」

「ッ!」


 ゴルドンとカイルは実力差が有りすぎて一体一ではどう足掻いても勝てないが、ローゼと二人ならば、僅かだが、カイルに勝機がある。

 だから、アンナがカイルの魔力を回復しようと腕を伸ばすと……


「辞めてください!」


 ミリナが、カイルに抱き着いてソレを拒んだ。


「もうっ! カイル様は十分、闘いました。これ以上、危険なことをさせないでください!」

「……」


 魔人でも見るかのようにアンナを睨みつけ、カイルを護ろうとする。

 その意志は固く、カイルを思う気持ちは尊かった……

 だが、


「闘うか闘わないかは、カイルが決めることだ」

「……」


 アンナは諭すように、それでいて厳しい視線で語りかける。


「カイルは、ミリナを護ると約束したのではなかったか? 殿御が決めた約束を、女御が邪魔してどうするのだ」


 姉として、妹を思う優しく厳しい言葉。


「そこまで言うのなら、選ぶのはミリナでいい」

「選ぶ?」

「カイルの安全か、約束か……どちらかを選び、どちらかを捨てるのだ! それが王族の選択と言うものだ」

「……安全か……約束か……」


『魔力欠乏症』でこのまま寝ていれば、カイルが闘いで危険な目に会うことは確かにない。

 アンナだってそれは解っている。

 だが、このまま寝ていれば、カイルがミリナを護ると言った約束は果たせなくなる。

 だからこそ、アンナはカイルの意志を組む。


「私は……カイル様に……」


 でも、ミリナは既にボロボロのカイルを闘わせたくない。

 傷つく姿を見たくない。

 

「ミリナよ。一つ良いことを教えてやろう」

「……」

「殿御……いや、殿方のやりたい事をさせてやる。それが良い女御の甲斐性と言うものだぞ?」

「……カイル様」


 選ぶのはミリナ。

 もう、アンナはカイルを起こさない。

 ミリナの責任で、選ばないといけない。

 カイルが大切ならば、大切なだけ、その選択は重い。


『俺はミリナを護る。俺を信じてくれるか?』


 カイルがミリナに誓った約束が、ミリナの脳内で再生され……ミリナは、


「私は……カイル様を信じますッ!」


 決断した。

 

「起きてください。カイル様。そして、どうか! 成したいことをなさってください」


 ミリナは、震える唇を、涙で濡らしながら、カイルの唇とくっつけた。

 ……接吻。

 

 ちゅ……っ。


 それは、(あで)やかで、見るものすべてに息を呑ませる魔性の魔力があった。

 丁寧に、親愛と愛情を注ぎ込む様に、唇の隙間から舌を差し込み、唾液を流し込む。


「……ッ!」


 ドクンッ!


 カイルの血脈が大きく脈動し、瞳が開かれる。


「……んっ。まだです! 私の全てを今こそ貴方に捧げます」


 急な覚醒で、驚くカイルを抑え付け、更に唾液をカイルの口の中に濯ぐ。

 とろとろの熱い液体が、ミリナの柔らかい舌を通して濯がれる。


「だからカイル様。私を貰ってください」

「ッ!」


 そして、濯がれれば濯がれる程、カイルの魔力が満ちていく。


「ミリナッ!」

「……はい。お好きなだけ……」


 ミリナの能力(スキル)《接触付与》

 接触した相手と特殊なパスを繋ぎ、魔力を付与する能力。

 

 それに、気付いたカイルは、自分からミリナと接触を交わし、唾液を啜って魔力を回復させる。

 ゴルドンを倒せるほどの『鉄刀丸』の力を使うには、それ相応の魔力が必要。

 吸っても吸っても無くならない膨大な魔力は姉譲りのもの。


「ミリナ……もっと……」

「……はい」


 ちゅ……っ。


 長い接吻を終えてから、カイルは腰の抜けたミリナを抱きしめて言った。


「ありがとう、ミリナ。コレで俺は闘える!」


 そっとミリナを抱いたカイルは、《鉄刀丸》の力を解放し『鉄神の鎧』を纏った。

 

「カイル様……御武運を……ッ!」

「うん」


 短く答え、もう一度、抱きしめてからゆっくりと離す。

 ……ミリナの事を大切に思ってしまっている。

 それはもう、アンナの妹だから、約束だから、そういうことじゃない。

 カイルはただ、ミリナだから護りたい。

 ミリナが見せた、無邪気な笑みをもう一度見たい。

 そのために剣を取る。

 命をかける!


「カイル。今こそ、お兄様を倒すのだ!」

「ああ。俺とお前で、な?」

「ふふっ。そういうことだ! 《マックス・オーラ》」


 総合強化魔法オーラの最上位。

 その強化値は単純に十倍。

『鉄神の鎧』と《マックス・オーラ》の強化値を合わせたカイルは、暫定的に階級が王級上位まで到達している。

 その力をもって、ローゼとゴルドンの闘いに乱入した。


「ハァアアアアアアアーーッ!」

「「ッ!」」


 カイルの一振りが二人の中心を裂き、地面を割って攻防を止めた。

 新たな強者の出現に、ゴルドンとローゼの視線がカイルを捉える。

 向けられた視線にカイルは、悠々と鉄刀丸を向けて言う。


「終わらせよう。このくだらない闘いを」

「ッ! 調子に乗るなぁああああーーっ!!」


 既に勝ち誇るカイルの態度に、ゴルドンの怒りが炸裂。

 騎士剣を構え、音速でカイルに迫った。


 斬激。


 風を切り裂くゴルドンの一撃をカイルは、合わせて払う。


「なっ!」


 驚くゴルドンの隙を逃さず、帰す刀で斜め左上から斬り下ろし。

 間一髪。

 ゴルドンがソレを避けつつ、


《目を潰せ!》


 至近距離からの強烈な発光魔法。

 光属性は七つの属性で、最速の魔法。

 しかも、攻撃属性に割り振らなければ、それは亜光速の領域。

 瞳で捉えた時には既に効果を受けてしまう。

 しかも、その、瞳を潰す事が今回の目的。


 真っ白な光に目を焼かれたカイルがうろたえる間に、背後に回り、回転斬り。


 ガンッ!


 第六感で危機を察知し、鉄刀丸を差し込み致命傷を防ぐ……が、大きく弾き飛ばされてしまう。

 空を舞うカイルに、ゴルドンは手心を加えず詰めろをかける。

 騎士剣の切っ先を向け、高速詠唱。


《波動よ》


 しかも、超略式詠唱の上級光攻撃魔法ライトニング・ノヴァ

 その威力は、鋼をも貫く。

 切っ先に光が収縮し、


《嵐となれ!》


 追加詠唱で、切っ先の光が、百に分裂する。

 それら全てが、《ライトニング・ノヴァ》


「私の姫を誑した報いを、死を持って受けよ!」


 ゴルドンの冷たい捨て台詞と共に、一斉に《ライトニング・ノヴァ》が掃射される。

 刹那、百回死ねる光線が、カイルに直撃した。


「ふんっ。男が穴だらけとは、誰も得しないがな……」


 光線の光が散って、穴の開いたチーズの様になっている筈のカイルを予想した、ゴルドンの目に映ったのは……


「なっ! 鉄程度で! 防いだのか!」


 鉄刀丸の鉄の壁によって、片膝を着くに留まっているカイルの姿だった。

 だが、光魔法が早過ぎて、鉄の壁も完全には防ぎ切れず、身端の所々を消失している。

 血を吐きながら咳込むカイルは、ぐらつきながら立ち上がり、鉄刀丸を握り直して……


「おいおい。アンナ。ふざけんなよ! 今のは俺が圧勝する感じの流れだったろ! なんで俺が負けそうなんだよ!」


 逆ギレ。

 そんなカイルに、アンナは長いため息をつき、


「当たり前だ! そやつを誰だと思っている!」

「イケメンだろ? 俺の嫌いな分類だ」

「違う!」

「違くない!」

「こだわるな!?」

「当たり前だ!」


 カイルの言う通りゴルドンは麗人。

 王宮でも、何人もの美女に慕われて、囲っている。

 だが、アンナが言いたいのは……


「違う! イケメンだが、そこじゃない。ひがむな!」


 ひがんでねぇ~よ!

 と、カイルが突っ込む前に、


「私の自慢のお兄様。七騎士第二位ゴルドン・ローゼルメルデセス。異常性癖(シスコン)を除けば、完璧超人。美少女の私の強化を受けたところで、元々ゴミ屑のカイルが、一人で勝てる訳無いだろう」

「……お前。絶妙に俺をけなしているのは気付いているか? しかも、アンナも、ちょっと異常性癖(ブラコン)――」

「黙れッ! 良いから、自分が雑魚なのを認めて、ローゼと連携しろ! ローゼのアシスト役をするんだ! 脇役」

「脇役って言うんじゃねぇ! 泣くぞ! この野郎!」

「脇役でも、私はカイル様を愛していますよ!」

「脇役やめて! 主役にして! 主役を愛して! 俺、本気だせば最強だから!」

「クズの台詞だな! と言うかカイル。貴様、どう見ても本気だったぞ? ノリノリで格好つけてたぞ!」

「そんなことありません~~ッ。俺はやれば出来る子なんですぅぅ」

「カイル様! 私はカイル様が何も出来なくても愛します!」

「何か出来るよ! 何かは出来るよ! とりあえずゴルドンを倒せるよ!」


 とは言いつつ、ゴルドンに勝てないことは、冗談ではなく既に、身端を消失するほど解らされた為に、ローゼの隣に後退する。


「って、事で。脇役(アシスト)を勤めるカイルです」

「は、はい……私は――」

「俺をボコボコにした第五騎士団長ローゼだろ? 覚えてる」

「ッ! そのせつは……」


 アンナとミリナに虐められた事で、微妙にハイになっているカイルに、戸惑うローゼ。

 

「良いよ。それより、アンタは味方で良いんだな?」

「ッ!」


 しかし、カイルの真っすぐな瞳に射ぬかれると、何故か気が引き締まった。


「はいッ! この剣を貴方に捧げるつもりです。誰でもない。貴方の理想を信じます」

「……?」


『剣を捧げる』とは、ほーうっと、遠くでアンナが喉を鳴らす程、ローゼル騎士にとって重大な誓いなのだが、カイルには解らなかった。

 だが、意味は解らなくても、その誠実で固い、意思は伝わった。


「わかった。じゃあ、一緒に、あいつを打ち倒そう」

「御意!」

「御意!?」

「では、私が隙を作ります。お殿様は、その剣で止めをお願いします」

「お殿様!?」

「《癒しの光よ》いきますっ!」


 仰々しい言葉遣いにカイルが困惑している間に、カイルに回復魔法を掛けたローゼが駆ける。

 

「療王ローゼ! 貴様。謀反の罪は重いぞ!」

「謀反? 私はただ、姫殿下の友を護るだけです!」


 言いながら、騎士剣を横一線。

 カイルが戦っている間、少し休むことが出来た為、ローゼの技にキレが戻っていた。

 

「我が! 姫に!」


 しかし、ゴルドンは垂直に跳躍。

 危なげなく躱し、


「友などいない! 《閃光の槍よ・雨となれ》!!」


 中級光攻撃連続魔法ライトニング・ランス・レイン、光の槍が空を多い尽くす。


「くっ! 《我が身を護れ》」


 それらが一斉に降り注ぐ、一瞬前に、ローゼが防御魔法ウォールを発動した。

 

「それは、ただの害虫だ! 害虫は駆除すると相場が決まっておる! 《光の槍よ・嵐となって・殲滅し給え!》」


《ライトニング・ランス・レイン》が降り注ぐ上から、更に新しく魔法を発動する。

 そしてそれは、《ライトニング・ランス・レイン》の上位版、《ライトニング・ランス・ストーム》


「ムム!? また、超広範囲魔法を! カイル、動くな! 私が防ぐ! 《オメガ・ウォール》」


 戦場全体に降り注ごうとする、千を越える光の槍に、アンナも戦場全体に結界を張った。

 それを予測していたゴルドンが、騎士剣を構え……


「フハハハっ。姫よ! 私の愛を拒むでない。剣神流、二の太刀《空絶》」


 一線。

 すると、騎士剣の軌跡が、アンナの結界を斬り裂いた。


「ムム!?」


 砕ける結界の合間を縫って、《ライトニング・ランス》が降り注ぐ……

 が。


「《鉄刀丸》! 護れ!」


 すぐさまカイルが鉄の壁で、全ての槍を防いでしまう。

 超級魔法メテオならまだしも、中級魔法ランスでは、『鉄刀丸』なら簡単に対処が出来る。

 

「ローゼ! アンナ! 防御は捨てて良い! 俺が護る!」

「っ! 恐悦の至りッ!」

「ムム……仕方ない。《オーラ》」


 カイルの意図を悟ったローゼは、防御魔法を解いてゴルドンに斬り掛かり、アンナは苦い顔をしながら、ローゼを強化する。


(カイルめ。無茶しおって。力を使いすぎればまた、気絶するかもしれんのだぞ!)


 二つ以上の魔法を同時に発動する『二重魔法』は高等技術、流石に《マックス・オーラ》使えない。

 が、《オーラ》だけでも、能力値を二倍にする。


「ハァアアアアーーッ!」

「くっ!」


 元が強いローゼが加護を受ければ、カイルとは比べものにならない上昇値となり、それは、ローゼとゴルドンの力関係を逆転させるほどのものだった。

 しかも、ゴルドンの攻撃は物理・魔法問わずカイルが全て防いでいく。

 カイル、アンナ、ローゼの連携が確実にゴルドンを追い詰め……


「《輝け!》」


 閃光。


「「「ッ!」」」


 勝利が見えて来たところで、再びの《ライト》

 光速の光が三人の瞳を焼いて視界を潰す。


「ハァーッ!」


 ザンッ!


 目を覆うローゼの隙を逃さず、斬激。

 カイルも目を潰されているため、防げなかった。

 命中。


「次は貴様だ! 《ライトニング・バレッド》」

「グッ!?」


 高速魔法バレッド系。

 光の弾丸によって、速度で《鉄神の鎧》の防御をすり抜け、カイルの胸部を貫いた。

 

「カイル! ローゼ! 《ダブル・オメガ・ヒール》」


 身体が裂かれ、血を撒き散らしながら落下するローゼと、急所を貫かれ、血を噴き出しながら倒れるカイル。

 あれほど勝勢だった状況を一瞬で覆してしまえるゴルドンの実力。

 それが、イグニードと双璧を成す、七騎士第二団長の底力だった。


「ふん。やはり威力よりも、速度か。案外に脆いな……次で打ち止めだ」

「く……っ。ざけんな……ただの低級魔法の癖に! やっかいすぎるだろ!」


 アンナの回復魔法で、傷を癒したカイルが跳びさがってゴルドンから距離を取り直す。

 それに、ローゼも追随。


「むぅ……お兄様は『光王』。低級魔法でも、極めれば凄まじい効力を発揮するのだな」

「素直に感心してんじゃねーよ! 対策は? アレをなんとかしないと、勝ち目なんかない」


 アンナの様に無詠唱とまではいかないが、超単文で放たれる魔法の数々。

 中でも一番、凶悪なのはやはり低級魔法ライトによる超発光による目つぶし。

 直接の攻撃力はないが、不意に発動されれば、どうしても回避することは不可能……

 

「さて……私もお兄様と闘う事などなかったのでな……正直、対抗策が思いつかん……目を閉じて闘うのはどうだ? 潰される前に潰しておくのだ!」

「目を閉じてどうやって戦えと!?」

「そこは、なんだ? 音とか気配とか? 気合いとか? 剣士ならわかるのであろう?」

「んな。無茶苦茶な……」


 呆れるカイルだが、そこまで無茶苦茶な事をしなければ、ゴルドンの魔法を攻略出来ないという事でもあった。

 

「姫殿下。格下ならともかく、ゴルドン様程のてだれ相手に、視覚を断つのは自殺行為です」

「で、あろうな……」


 ローゼの一言で、アンナは押し黙り次の手を考える。

 が、


「姫! 敵前で、作戦会議とは愚作だそ!? 《ライトニング・ランス》」


 ソレをわざわざ待つ必要は、ゴルドンにはなく、追撃を狙った。

 ……が!

 カイルが生み出した鉄の障壁が、ゴルドンの攻撃を受け止めた。


「なぬ!? 小癪なっ!! 姫の吐いた息を吸った大罪人がぁああああーーっ!」


 魔法ではカイルの鉄は撃ち抜けないと見たゴルドンは接近し、騎士剣を振りかぶる。


《断絶》


 ローゼル騎士団に伝わる異空間を斬り裂く剣技を放った。

 その技、物理では捉えられない魔法を斬れる。

 

 ガン!!


「ぬ!?」


 しかし、その一撃もカイルの鉄は防いでしまう。

 

「お兄様。私は敵前で作戦会議などしておらんぞ? 愛しの殿御の庇護の中で、逢い引きをしているだけなのだ! ハッハハハハーーッ!」

「なぬぬぬぬーーッ!? みとめんぞ! みとめんぞ! 妹は兄のものなのだぁああああーーッ!」

「きぃぃぃぃーーッ! 認めませんッ! 認めませんッ! カイル様はミリナのものなんですぅぅーーッ!」


 嘲笑に狂う……アンジェリーナ・ローゼルメルデセス。

 嫉妬に狂う……ゴルドン・ローゼルメルデセス。

 同じく狂う……ミリナリア・ローゼルメルデセス。


 カイルは三人の言動を見て聞いて……


「何? この一家……全員、狂ってる。変態一家かよ。お前ら実は凄く仲良いだろ!」


 戦慄。


「おいおいゴルドン兄さんよ。兄妹喧嘩はそろそろ辞めて、妹達の話を聞いてあげる気はないのかよ!」

「貴様に兄さんと呼ばれる筋合いはない!!」

「そこかい!」


 連激。連激。連激。

 怒りに駆られて暴走しているだけのように思えるが、一撃、一撃、確実にカイルの力は削られる。

 この拮抗は後、数秒で崩れ去る。


「じゃあ、ミリナ! お前から言え! アンナと同じ、妹である立場から! 殺そうとして来る兄に向かって一言言ってやれ!」

「ムム……妹だと?」

「お兄様……」


 カイルの言葉を聞いて、ゴルドンの瞳が、


 ギロリ。


 ミリナを捉える。

 ミリナもカイルの背中から顔を出して、ゴルドンと対面した。

 そして……


「お兄様……お久しぶりです。やっばり……私のことを嫌いになったのですか?」

「……ムム」

「一つだけ聞きたいです。……『呪い』が無ければ……お姉様と同じように愛していただけたのですか?」

「……」


 沈黙。

 ゴルドンが剣を止めたことで、一瞬……音が完全消えた。

 ミリナの問いの答えに、アンナですら息を呑んでいた。

 

「貴様は……」


 呟き、ヨロヨロと後退していく。


「貴様は……妹? ……ウッ!」

「……っ! なんだいきなり!? だが、チャンス――」

「むっ! カイル……少し待つのだ」


 突然、頭を抱えて小さく呻く。

 隙ありと攻撃しようとする、カイルをアンナが手で制す。


「私の妹!? 貴様が? うっ……。妹ならば等しく天使(キューピット)……愛さないはずなど! 有り得る筈が……うあああああああああああああああーーッ!」

「「――ッ!」」


 発狂。

 

「うあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああーーッ!」


 バチンッ! バチンッ! と、ゴルドンの魔力が暴走し空気を弾いた。

 大きく大きく絶叫し……


「ハハハハハハハッ! 知らん! 私はっ! 貴様などしらんわ!」

「っ!」


 開き直った。

 魔力を暴走させながら、剣を構え、眉間にシワを寄せる。


「ゆるさんぞ! ゆるさんぞ!! 妹を世界一愛するこの私の前で! 妹に偽るとは絶対に許さん! 『忌み子』の分際で! 我が姫を語った罪! 死を持って地獄に堕ちろおおおおーーッ!」

「やっぱり……私が『呪いの子』だから……」


 ゴルドンの激しい憎悪を帯びた視線がミリナに向き、ソレを受けたミリナが涙を流しながら、そっと、カイルの背中に隠れてしまう。

 悲しみを誰にも見せたくないように、カイルの背中で涙を拭う。


「大丈夫です。カイル様。私には、カイル様が居ますから……大丈夫です……大丈夫です」

「……ミリナ」

「……」


 カイルは、ミリナの耳を塞ぎ、眼をふさぐ。

 そして、激情のまま突進して来るゴルドンに、


「お前……兄として……失格だ。絶対に許さねぇ。絶対だ! 『鉄刀丸』《奴を捕らえろ》!」


 カイルも激情で応戦した。

 望叶剣はその激情こそが最大の力となる。

 カイルの言葉通り、ゴルドンを鉄檻メタル・プリズンが拘束する。

 

「ぐぅ! 邪魔をするなああああーーッ!」


 しかし、ソレも長くは持たない。

 だが、


「アンナ。ローゼ。一つ策がある。危ない橋だけど……乗るか?」

「「っ!」」


 それだけ言えれば十分だった。

 そんなカイルに、アンナとローゼは即答する。


「もちろんだ」

「御意に従います」


 カイルは、静に頷き、ミリナを撫でる。


「ミリナ……泣かないで。もう、終わらせるから……少し、眼をつぶってて」

「はい……信じています。カイル様……」


 こうして、ゴルドンとの最終決戦が始まった。

 

 「この程度ッ! 《断絶》」


 斬ッ!


『鉄刀丸』の鉄檻をゴルドンが斬り裂いて、囲いを突破。

 そこを、


「《ファイア・ボール》!!」


 ローゼが、予め詠唱をしていた炎弾魔法で狙い撃つ。

 奇襲攻撃。


「くだらんッ!」


 しかし、ゴルドンは身体を少し動かしただけで回避し、


(敵は二人。だが、姫の力で強化されているとはいえ、くそ餓鬼の方は無視で良い。先ずはローゼを始末する……)


 狙いを絞り、突貫した。


「裏切りの報いッ! 死をもって償えええぇーーッ!」


 それは神速の一撃だった……

 同じ七騎士のローゼでも、見切ること出来ない一撃だった。

 必死……直前。


「ココッ!」

「ム!?」


 ゴルドンが壊した鉄壁の残骸に身を隠していたカイルが、背後を取った。

 それは絶好のタイミング。

 ローゼへの攻撃は止められず、攻撃してしまったら、カイルの剣に斬られてしまう。


 カイルの持つ『鉄刀丸』は、一撃決まれば必勝の魔剣。

 対グリーヌ戦で見せた、《鉄化》

 もちろん、ゴルドンもソレを見ていた。


(ローゼの命を犠牲にして、私の首を取りに来たか……愚策)




「《光よ》 糞餓鬼がぁあああーーッ!」

「っ!」


 閃光ライトニング


 ゴルドンはローゼの瞳を潰し、攻撃を途中で中断すると、くるりと半回転しながらカウンター。


 ガンッ!


 カイルを取り巻きながら空中に漂っていた鉄の粘土が、自動防御するも威力は殺せず、地面にたたき付けられる。


「ぐぅ……っ。なんで……!?」

「私の狙いは最初から、姫を誑した貴様だけだぁあああーーッ!!」


 カイルとローゼで、厄介なのはローゼ。

 最初に倒すべきもローゼ。

 それでも、ゴルドンは、妹に付いた悪い虫を潰すことを選んだ。

 ……妹が想いを寄せる男。それは王への裏切りと言う大罪よりも、大罪。


 だからこそ、カイルの奇襲を予測し、カウンターまで入れられた。


「終わりだ――」

「終わりなのは、お前だよ」


 ブスり……


 ゴルドンが勝ちを確信したその瞬間。

 背後からカイルの声と共に胸を一差しされていた。

 ……『鉄刀丸』で。


「なっ! 貴様!? 何故!」


『鉄刀丸』の能力でみるみると身体が鉄化していく中、ゴルドンは強い困惑で、止めを刺そうとしていた筈のカイルを見る。

 そう、ゴルドンの目の前にカイルはいる。

 しかし、後ろから貫いたのもまたカイル。


「……分身魔法!?」


 確かに、上級魔法の《アバター》なら説明が出来る。

 しかし、


「俺に、そんな高度な魔法は使えないよ」


 そう、カイルは分身魔法なんて使えない。

 そもそも、カイルには、上級魔法は一日一回の使用制限があり、それはもう、ゴブリンの群れに飛び込む際に使って打ち止め。

 だから……


「ただの炎幻影魔法イリュージョン


 ネタばらしと共に、カイルは魔法を解き、元の姿に戻った。

 ゴルドンの目の前にいたカイルがローゼに、後ろにいたローゼがカイルに。


 それは対象の姿を入れ替える魔法。

 ただの目くらまし。


「あんたほどの実力者だったら、簡単に見破れた筈だけどな……あれだけ動揺していなかったらだけど」

「むぅ……私の姫への愛を利用したのか!! この卑怯者め! 正々堂々と闘わんか!」

「喋るなよ! 卑怯だろうがなんだろうが……関係ない! ミリナを……妹を呪い程度で切り捨てた! お前を俺は許さない!」


 ゴルドンの怒りを助長し、冷静さを奪い、判断力を鈍らせる。

 そのうえで、カイルとローゼの姿を入れ替え、一撃必殺の『鉄刀丸』から注意を反らす。

 そうすれば、閃光で瞳を潰されようが、目の前にいるゴルドンを突くだけで、勝利が転がって来る。


 それが、カイルが考えた、対ゴルドン用戦術。


「お前が兄?」


 カイルの脳裏に浮かぶのは、頼れる(レンジ)(ユウナ)の姿。

 カイルがどんなに失敗をしても、レンジは、何時も支えてくれた。

 ユウナがどんなに面倒臭くても、レンジは、笑って付き合った。

 ……そんなレンジの姿こそが、カイルが思う最高の兄の姿。


「ふざけんな! お前はただアンナが好きなだけの異常性癖者だよ!」

「……むぅ。なんとでも言え。私が妹を世界一愛していることに偽りはないのだからなっ! ハッハッハハーーっ!!」


 首上以外は全て鉄と化し、もう打開策も無く、絶体絶命だと言うのに、ゴルドンは豪快に笑った。

 ……偉そうに笑った。

 その姿はどこか……誰かに似ていた。


「終っておけ……妹の為に、な」


 言いながら、断罪の剣を創成し、ゴルドンの首に振り下ろした。

 ……ゴルドン死――


「まつのだ! カイル!」


 ピタッ。


 突如響いたアンナの声に、剣を止め、振り返る。


「……どういう事だ? 今の俺に情けをかけろって?」


 カイルの氷の様に冷たく、炎のように烈しい激情の篭った瞳がアンナに突き刺さる。

 それは、返答次第で、アンナすらも敵に回すと言うように。

 ……それほどまでに、兄を名乗り、(ミリナ)を殺そうとしたゴルドンに激怒していた。

 

「そうだ。私の兄様なのだ……殺さないで欲しい」

「……わかったよ」


 溜息を吐いて『鉄人の鎧』を解き、鉄刀丸を鞘にしまう。

 何があっても兄は兄。

 カイルは、本当の家族が死ぬ苦しみを、良く知っている。

 アンナがそれを望むなら、カイルにゴルドンの首を落とすことは出来ない。


「感謝する」


 アンナは短く言って、カイルと入れ替わる様にゴルドンの前に出る。


「兄様。闘いは決着した……」


 アンナの言う通り、ゴルドンの敗北によって騎士団の闘いは止まっている。

 もう、剣を振るものは居なかった。


「むぅ……姫。私は……私は! 姫にあだなす不埒者を成敗するのだ!」

「兄様……そんなにも――」

「姫! ようやく私の想いを……」


 アンナとゴルドンが視線を合わせ、通じ合った様に声を奮わせている。

 二人の想いが遂に……


「――気持ち悪い事をよく言えるな」

「むぅ!?」


 ゴールインしなかった。

 ぺっと唾を吐いたアンナが、ゴルドンの頭に手を当てて、


「やはりな。兄様は洗脳されている」

「洗脳……っ!?」

「ああーーっ。愛しい我が妹の神手だ」

「「……」」


 アンナの手に触れられた事で恍惚としているゴルドンを、カイルがシラけた瞳で指を指し……


「そうか、洗脳……されてるから、こんな異常性癖なのか。いやはや納得、納得」

「いや、そっちは素だ」

「やっぱりかいッ! ていうかじゃあ、素じゃないのはなんなんだよ!?」

「ふん……」


 意味ありげに微笑んだアンナは、そのまま魔法を発動する。


解呪魔法ディスペル

「むぅうおおおおおおおおおおおおおーーっ!」


 シューーッとゴルドンの頭から、黒い煙りが抜け出ていき、全て抜けるとぐったりと首を落とした。

 そんなゴルドンにアンナは言う。


「兄様。私を愛しているか?」

「愛している!」


 迷いのない即答!

 そしてアンナは、カイルの背中を支えるミリナの肩に手を置いた。


「ミリナを……ミリナリアを愛しているか?」

「むぅ……」

「どうなのだ?」

「……世界一愛している」

『えっ!?』


 心底無念そうに表情筋を歪ませながら言った言葉に、ミリナが目を開いて驚きの声を上げた。

 ぎゅ~っとカイルの袖を握り締めて……


「お兄様? 本当ですか?」


 恐る恐る確認する。

 もう一度、酷い言葉をかけられるかも知れなかったが、確認しないわけには行かなかった。


「むぅ……っ。今更、信じろとも許せとも言わんよ。しかし……謝らせてくれまいか? すまぬ」

「っ! お兄様っ! お兄様っ!」


 アンナがまだ、ミリナの存在に気付いて居なかった幼い頃。

 ゴルドンは毎日の様に、ミリナの部屋に通って可愛がっていた。

 その時の、優しく暖かい記憶は、ミリナの中で一番と言っていい程幸せな記憶。

 

「もう良いです。もう良いんです。お兄様……私は、お兄様に感謝しかありませんから……ううっ……お兄様~」


 ゴルドンに泣きつき全てを許すミリナ。

 そんな中、カイルの隣に舞い戻ったアンナがいう。


「嘘だと思うか?」

「……ううっ。良い話だなぁ~」

「涙脆いなッ!」


 ミリナもアンナも全てを許す腹積もり、それならカイルも許すしかない。

 そう思い、ゴルドンの鉄化を解こうと――


「すまぬ。すまぬな。ミリナリア。ただ……その餓鬼は殺す!」

「っておい! そこも洗脳じゃないのかよ!」


 するのは一旦保留。

 ……危ない。危ない。


「ミリナリアとアンジェリーナは私が結婚してやるのだからな。ハッハハハ」

「……いえ。それは遠慮します」

「うむうむ。恥ずかしがるではない」

「……いえ。全く恥ずかしがってません。普通にお兄様と結婚したくないのです」

「うむうむ。照れてるのだな。『私、将来。お兄様と結婚します』と、言っていた――」

「いやあああああああああああああーーっ!」


 ベチンッ!

 

 悲鳴。

 そして、カイルの胸に飛び付き耳をふさぐ。


「カイル様っ! 聞かないでください」


 何故か、恋人に母親が恥ずかしい過去を、語ってしまうあるあるみたいな状況……に、カイルは呆れて片を揺らした。


「全く……なんにせよ。これで一見落着……」


 バタリ……っ。


 落ち着いたからか、鉄刀丸を使った代償か、カイルは再び倒れ、ピクリとも動かなくなる。


「カイル様! カイル様っ! カイル様ぁぁっ!」


 ミリナの悲痛な声が山々に木霊した……



 

 





 



 


 


 

 





 




 


 


 

 

 



 

 








 

 


 


 





 








 


 

 

 





 


 

 

 

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