#150シロさんの行動
「良かった。まだ商店街は壊されてない……」
気づいたらすごい息が上がってた。
僕がいるのは南地区。
僕とクロとミカンのお店がある区域。
万が一のために商店街全域に強力な結界を張っておいて正解だった。
それに人の気配も少しする。
おそらく商店街の人たちが商店街の地下にある巨大避難所に避難させたんだ……
結界の方は……だいぶ結界の効力が弱ってしまっている。
この調子だとおそらく中級魔術を一発放たれただけで粉々に砕け散ってしまうだろう。
「とりあえず結界を張り直して地下に避難した人たちの安否確認………」
いや、安否確認はしないで結界だけ張り直そう。
おそらく僕は誰かにつけられている。
きっと魔王軍も地下室にたくさんの人間がいることに気づいている。
僕が地下室へ向かえば魔王軍にも居場所が割れてしまう。
そしたら被害がもっと増えてしまう。
まず今ある結界を還元しよう。
「ユニークスキル、還元」
僕は商店街の結界を魔力へと還元する。
僕の魔力量が少し回復した。
これで僕が使用する魔力量がほんの少しだけ少なくなった。
「結界魔術、強力防御結界!」
僕は商店街全域に強力な結界を張り巡らせる。
これで商店街への襲撃を少し先延ばしにできたはず!
今は商店街周辺には敵の姿はない。
けどいずれまた現れるだろう。
その魔王軍のモンスターが結界を破壊する前にこの襲撃を一任されているリーダーを倒す!
視界がボヤけて見える………
これは……元の体のHPが3割をきった…………
「クロが危ない!」
それにクロのHPが3割をきるなんてありえない。
あの戦闘が得意なクロのHPを7割以上も削るなんてどんな化け物なんだ………
ペルさんとクロからはボスの名前はアロイトで黒騎士だと聞いている。
けど黒騎士であれば対人戦の一対一の可能性が大きい。
一対一であればクロが負けることは絶対にない。
そのクロが圧倒されているだなんて………
ドクッ……ドクッ……ドクッ………
この動悸はなんだ。
普段よりもかなり早い。
数倍早い。
もしかしてクロのHPが1割をきりそうなのか!
「そんなことが……あり、ありえ…………」
こ、呼吸がしづらい。
なんで僕に影響が………
感覚が徐々に薄れていく。
もしかしてクロのHPが0になった瞬間、僕も死ぬ……
けど確かに僕とクロの共有ユニーク機能は他のプレイヤーには実装されていない機能。
代償がない訳でもないと思っていたけど、そういうことだったのか!
「し、死……死ぬ………のか…………」
まだ僕は魔王軍を倒すというやるべきことがあるんだ。
こんなところで死んでられない!
そう、心で思っていても体の感覚が消えていく一方。
視界もどんどん暗くなっていく。
これが……死。
人という生き物の死。
けどこの暗闇。
僕は慣れている。
いつからかこの暗闇と明るい世界を行き来するようになったんだ。
耳を澄ませど、何も聞こえない。
目を凝らせど、何も見えない。
今だって……そうだ。
耳を澄ませど……………………………….……………………………………………聞こえた。
確かに聞こえる。
志太くんの心配する声が。
ポットちゃんが「助けに行きます」という声が。
ミカンの……ミカンがクロの名前を呼ぶ声が。
そうか、クロが敗れたのか。
つまり僕の体はこの後、斬られて死ぬのか。
『おい、誰が負けたなんて言ってんだよ!俺はまだ負けてねぇし!』
え、クロ?
次回予告と豆知識
シロさんとクロさんが言葉を交わす回だよ。
多重人格だから互いに言葉を交わすことはありえないんだけど、それが可能となった。
流石は世界的に有名な天才プログラマーと称された時期があった白宮幸雄さんの技術だね。
このゲームが作られた目的の一つらしいよ。