#148メイリアスを襲っている魔王軍の総大将
「お前がメイリアスを襲っている総大将か!」
僕の声が響く。
「うん、私がこの海辺の街メイリアスを襲うことを魔王様に進言して命を預かった者です!」
あの女の人は鳥なのかな……それとも人間なのかな。
腕と足が鳥。
だけど顔から胸までが人間の女の人。
そしてなんかテンションが高い………
後ろにいる魔獣や魔物よりも温厚そうに見える。
「人間ではないということだけはわかった」
「私が人間?あんな貧弱な生き物と一緒にしないでよ〜」
「それでこの街を襲った理由は何?」
「この街を襲った理由?そんなの人間を殲滅するために決まってるじゃん。ここは港町、物流の行き交うここには沢山の人がいるはず。そこを襲えば大量の人間が死ぬし、物流もストップ!そうなれば人間の抵抗力も減少。まぁ、だから一石二鳥ってわけだよ〜あれ、これって一石三鳥かも!」
「そ、そんなことをされたら人間が全滅しちゃうよ!」
「そうだね。魔王様の目的は人間を全滅させ、私たち魔物の住みやすい世界を作ることなんだから〜」
「交渉は可能?」
「無理だね〜この街の人間を全滅させるのと等しい交渉材料はいくらでもあるけど、私は獣人の娘なんかの交渉は受け付けないよ〜」
「じゃあ僕は君を討つ」
「え、貴女が私を?無理無理、だって私は魔王様の側近だよ。むしろ逃げるなら今だよ。まぁ、逃がさないけど」
「僕は逃げないよ。だって約束したから」
「ププッ、約束ね〜魔王様の側近である私とただの獣人の魔術師の娘が約束一つを理由で戦って勝てると思ってるの?」
「思ってる!」
勝てるかは分からないけど、きっとなんとかなるはず!
「貴女はわかっているよね。もう残りの魔力残量が少ないことぐらい。そんな魔術師を倒すのなんて人間を標本にするより簡単だよ〜」
「魔力量はまだまだ残ってるけど、僕は剣で戦うよ」
僕は雪さんからもらった巾着袋の中から雪さんの提案で作られた片手剣を取り出す。
この片手剣は魔力を込めると刃の部分が鎖に変化する便利な剣。
通称、チェインブレード。
「貴女、本気で言ってるの?プププッ、魔術師が剣で戦うって…正気?」
「うん、正気だよ」
「貴女、面白い。面白い!」
「そう?僕は僕の戦い方で君に勝つ!」
僕は剣を相手に向けて言う。
そういえば名前なんだろう……
「そういえば君の名前は?」
「私の名前はフィーだよ。貴女は?」
「僕はミケ!」
「そう、ミケね……」
温厚そうな見た目に油断しないで相手の動きをしっかり目で追って一撃で仕留める。
余裕があれば交渉する。
「準備はいい?」
「もちろん」
フィーが僕に向かって飛んでくる。
かなり早い!
よし、まず相手の行動を制限する。
僕はチェインブレードに魔力を込める。
チェインブレードの刃の形がぼやけ始める。
この状態で!
「くらえ!」
僕はフィーに向かって刃が鎖になったチェインブレードを思いっきり振った。
フィーは腕を振りかぶって勢いよく手を振り下ろした。
パリン……
フィーが手を振り下ろした瞬間、僕のチェインブレードの鎖の部分が粉々になってしまった。
こ、こんなに温厚そうな笑顔をしていたフィーが僕の剣を……一回で。
「金属変形〜鎖で私を捕まえようとしたわけね。その程度の魔鋼で私を捕まえられるとでも思ってたの〜」
「僕の剣が壊れちゃった……」
「ミケちゃんに残されたのは魔術だけ。近接戦闘を得意とする私は勝ったも同然だね」
「僕はまだ負けてないよ」
なんか海の方角から人の足音がする……
もしかしてまた小さな子供かな。
それとも敵かな。
「う〜ん〜その希望に満ち溢れた目……いいなぁ。あ、じゃあミケが負けたら私の下僕になってよ!」
まだ剣はあるにはあるんだけど………
あの剣しかない。
あれを使ったら危ないからどうしよう。
土魔術で土壁を作って身を守りながら戦う………
難しいよ……
「そしたらミケの身の安全は私が責任を持って保しょ………」
「ミケは私のものじゃ!」
カーン……
剣と爪が火花を散らしながらぶつかり合う。
「この声とその姿はペルちゃん!」
「助けに来たよ!」
ペルちゃんは笑顔で答えると剣に力を込めてフィーを吹き飛ばす。
フィーはペルちゃんから遠ざかる。
「貴女、何者?至近距離に来るまで存在に気づけないなんてありえない……それにこの場にいる全員が気付けないなんて………」
「私はペル。この街の危機に馳せ参じた助っ人的な存在だったけど、いまやこの街の英雄レベルの存在になろうとしている者だよ!」
「ペルちゃん!」
「もう大丈夫だよ。さてここからは私の時間だ!」
次回予告
私とハーピーのフィーの戦闘だよ。