#12パーティー戦
私たちは冒険者登録所に向かっていた。冒険者登録をすると待ちとかに入ったりするのがただになるらしい。
そういえば志太くんってお姉さんいたはず…なのになんで一人なんだろう。一緒にやるって言ってなかったけ…
「ココくんお姉さんはどうしたの?」
「お姉ちゃんは夜中並んでて風邪をひいてしまって、今日はおとなしく寝ています」
確かに昨日寝る時、意外に寒かった…
「ペルさん。ちょっと聞いていいですか?」
「なに?」
「ペルさんの腕の中にいる猫さんは何ですか?」
「ミケだよ!」
「ペルさんはビーストテイマーで、ミケさんは使い魔ですか?」
ビーストティマーって確かモンスターに指示をして戦う人たちだっけ…
「違うよ。ミケはプレイヤーだよ」
ココくんは少し驚いた後ミケに
「す、すみませんミケさん。初期設定で猫さんに出来ましたっけ?」
「できないと思う。ミケは今、変身のスキルを使って猫になってるの。ドラゴンになってここまで来たから疲れちゃったの」
「そうなんですか。変身のスキルって飛んだりもできるんですか」
「うん。変身のスキルは変身したい物を強く想像すると出来るらしいよ。
「すごいですね」
「そういえばココくんは何の種族なんですか?」
「ぼ、僕ですか?僕は熊の獣人です」
「ココくんも獣人なんだ」
「うん。ほら…」
ココくんは魔術ローブのフードを脱ぐ。
頭の上には茶色くて丸い熊の耳があった。モフモフしてて可愛い…
「ココくん…可愛いよ」
「そ、そうですか?恥ずかしいです」
ココくんは顔を赤くしながら言う。
「僕は女の子に思われるのが恥ずかしいのでいつもフードを被ってるんです」
「そうなんだ。ココくんに魔術ローブ似合ってるよ!」
「あ、ありがとうございます。見えてきましたよあれが冒険者登録所ですよ」
ココくんは指をさす。指をさした先には他の建物とちょっと雰囲気が違う建物があった。ミケが目を覚ました。ミケは眠そうな声で言う。
「ペルちゃんここどこ?」
「ここは冒険者登録所だよ」
「ね、猫がしゃべった…」
ココくんはちょっと驚いていた。急に猫がしゃべったら驚くか…
「とりあえず入ろうか?」
「はい」
ココくんは笑顔で言う。ミケは
「ここで何するの?」
ミケはまだ寝起きで状況を理解できていないようだ。
私たちはとりあえず中に入っていった。
中は明るくて意外にもきれいだった。受付には受付嬢が立っていた。
「こんにちは。ここは冒険者登録所です。今日はどうゆう用件ですか?」
ココくんはまたフードを深くかぶっていた。ミケが何か言うと状況がおかしくなりそうだから。
「冒険者の登録をしに来たのですが。どうしたらいいですか?」
「試験を受ける必要があります。試験は一人で受けることもパーティーで受けることも出来ますがどういたしましょうか?」
「では3人で試験を受けます」
「わかりました。では試験官に伝えてきます」
受付嬢は奥の部屋に向かった。
「とりあえず流れで頼んだんだけどこれで良かったかな?」
私は二人に言う。
「ペルさんありがとうございます。僕一人じゃたぶん言えませんでした」
「試験って何するのペルちゃん?」
ミケはまだ寝ぼけてる…
「試験は冒険者になる試験だよ。監督官と戦闘だと思います」
ココくんがしっかりミケに説明する。ミケは解ったように言う。
「つまり勝てばいいんだね!」
「そ、そうだよ」
ココくんは少し苦笑していた。
「試験の準備が整いました。裏手にある模擬戦場にお進みください」
「わかりました。ありがとうございます」
「ありがとうございました」
私とミケとココくんは裏手にある模擬戦場へ歩いて行った。模擬戦場は冒険者登録所を一度出て建物の後ろにあるらしい。
「ココくんの戦闘スタイルは何なの?」
「僕の戦闘スタイルですか?僕は魔術師ですね。火炎魔術が得意です」
「そうなんだ…私は剣を使う近接戦闘型だから私が接近戦するから二人で援護して…」
「わかったよ。ペルちゃん!」
「わかりました。お願いします」
私達は作戦を決めて外に出ると
「貴様らが冒険者志望の者か!」
そこにいたのは世紀末の覇王のような筋肉モリモリの大剣使いと弓兵と魔術師の男のパーティーがいた。
「はい!」
「俺はダンだ。お前らはこれから俺達と戦ってもらう。そこで実力を見せろ!実力があれば冒険者。なければ…わかるな」
「ヒィー」
ココくんが小さな悲鳴を出した。大剣使いは
「やめるなら今のうちだぞ。怪我してもこちらは一切責任を取らないからな」
「大丈夫です。よろしくお願いします!」
私たちはそれぞれ構えた。私はエクスカリバーを上段に、ミケはサウザンドステッキを口に咥えて、ココくんは手を前に出した。
受付嬢が私達と試験官の間に入って
「これから冒険者登録テストを始めます…始め!」
ミケはバックステップで下がる。私はエクスカリバーを上段に構えて、ダンに突っ込む。ダンは全力で私に振り下ろす。私はその大剣をエクスカリバーで受け止める。重たい…
「ほお。私の大剣を受け止めるとは貴様なかなかの強い剣の使い手だな」
「ありがとうございます」
今の私はほとんど剣の力に頼ってるだけなんだけど…
「しかし俺の後ろに仲間がいることは忘れるな」
ダンの背後から矢とエネルギー弾が飛んでくる。
「氷結魔術…アイスシールド」
ミケが大剣使いの背後に氷の盾を使用する。矢とエネルギー弾は全て氷の盾に当たった。氷の盾は粉々に砕け散る。
「雷魔術…サンダーショット」
ココくんは人差し指から黄色い雷を放って相手の魔術に応戦する。
「ミケ、氷結魔術で相手の行動を封じて!」
「わかったよ!」
ミケはスキルの技の欄を見ながら言う。
「どれにしたら良い?」
「ミケさん。氷魔法にフリーズチェインという相手を拘束する技があると思います。それを発動すれば相手を拘束できると思いますよ!」
ココくんが応戦しながら叫んだ。あれ…ミケって氷魔法のスキル持ってたっけ?
「ありがとう…誰だっけ?…まあいいや、氷魔法フリーズバインド」
ミケずっと寝てたからココくんのことわからないんだ…ココくんごめんね。ミケの杖から氷の鎖のようなものが出てきた。まるで滝のように鎖が流れ出てくる。お、多い…鎖が…
「な、なんだ。あのフリーズチェイン」の鎖の量が多すぎる。あれが本当にフリーズチェインだというのか…」
ダンは唖然としていた。今だ!
「せやー!」
私は気合いを入れて剣を大剣使いに振り下ろした。しかしダンは見事に剣を受け止める。さすが試験官
「残念だったな。試験官を甘く見るな…」
ダンは私の剣を吹き飛ばした。カランカランと遠くで剣が落ちた乾いた音が響く。
やばい。このままだと間違いなく斬られる…
「とどめだ!」
私は手を頭の上にやって目をつぶる。そういえばお母さんに怒られるときもこうやってたな…
今はあの攻撃怖いもん…あれくらったら絶対に死んじゃうよ。しかし攻撃は来なかった。
私は目をそっと開ける。目の前は氷の鎖でダンが拘束されていた。他の二人はどうなっているのか周りを見渡す。他の二人も氷の鎖で拘束されていた。そして今まさにココくんに電撃で気絶させられているところだった。
「ペルちゃん。今だよ!」
ミケの声が響いた。そうだ剣…
「わかった!」
私は後ずさり飛ばされたエクスカリバーを拾って、大剣使いの前に行って
「覚悟してください!」
私はエクスカリバーの腹でダンの頭を思いっきり強打する。するとダンの力が抜けて、鎖同士の当たる音が聞こえた。どうやら気絶したようだ。
「ペルちゃん何でこのおじさん斬らなかったの?」
剣で突きとかすると怪我しちゃうから…
「これはあくまで冒険者登録試験だから、試験官をわざわざ傷つけなくても良いかなって?」
「そうなんだ…」
「流石です。ペルさんとミケさん」
「そんな私は実際ダンを足止めしてただけだから。ミケのおかげだよ!」
ミケはサウザンドステッキを地面に置いて
「そんなことないよ」
と尻尾を垂直に立てて笑顔で言った。ミケ…相当喜んでいるんだ…
しばらくするとダンたちは意識を取り戻した。結果、私たちの試験は合格。受付嬢が冒険者登録の申請をしに行った。その間、ミケは魔術師から
「師匠にしてくれ」と付き纏われていた。
ミケは
「やだ。絶対にやだ!」
シャーと全身の毛を逆立てて嫌がっていた。
次回は猫さんたちの尻尾で何を表しているのか伝えます!