#126転移したメイリアスは……
「ニャー………」
転移した黒猫は火の海に呑まれた港町メイリアスの中、ただ呆然と立ち尽くすことしかできなかった。
一体何が……ほんの数時間前まではすごく綺麗な港街だったのに……
私は変身を使って元の姿に戻る。
「なんで……こんなことになってるの?」
いや、街の人は……
というか街全体がこんな火事になった原因は何!
周りには瓦礫がたくさん落ちてる。
大地震か何かが起きて火事になったんじゃ!
このゲームの世界感は魔法や魔術がある明治時代ぐらいではないだろうか?
そんな時代で大地震が起きたら街の人は慌てて外に逃げ出すだろう。
だから火事になっ………
「おい、そこのJK危ねぇぞ!ここから逃げろ!」
え、私?
あ、私だ!
私、ゲームの中でもJKの格好だ。
「だれ!」
私は周囲を見回す。
見渡す限り人はいない。
いや、いた!
瓦礫の下!
一人の青年が瓦礫の下敷きになってる。
多分、この人だ!
というかこの時代に多分JKは存在しないからきっとこの人はプレイヤーだ。
私は青年の元に駆け寄りこの現状について問いかける。
「大丈夫ですか?一体、この街で何があったんですか!」
「この街に魔王の軍勢が襲撃して来た。街の冒険者は街の住民を船で陸から避難させた………そして俺たちはこの街を襲撃して来た魔王の軍勢から街を防衛しようとし………た…………」
「そしてどうなったんですか!」
「………………」
「早く話してください!」
「………………」
肩を揺らしても全く反応がない。
徐々に体温がなくなっていってる……
私は青年の口元に手を当てる。
この人…もう息がない。
これはこのゲームにおいて死んだってことなのか。
このゲームだと死体が残るんだ。
いや、それより魔王の軍勢がなんで襲撃して来たし!
さっきは魔神族で驚いたけど、今度は魔王か!
なに、魔が付く人たちって空気読めないの?読めてないよね!
どうしてこんなに頻繁にイベントが起きるかね。
イベントが起きることは嬉しいよ。
暇な日常に変革をもたらす物だからね。
けどこんなに立て続けにイベント来られても対処出来んわ!
どうして?
どうしてこのタイミングで魔神族のどこぞの騎士団長と魔王軍の軍勢がくるの!
そういう強くて悪そうなやつって一緒のタイミングに来ないでしょ……普通!
……………………………
待て、ペル。
一旦落ち着こう。
目を閉じて落ち着こう。
だけど周囲の警戒は怠るな。
何が起きるかわからない。
ここは今や戦場と化している。
耳だけで警戒しながら落ち着け………
私は肺の中に入っていた空気を全て吐き出す。
そして勢いよく酸素を取り入れ……
「ゲフ……ゴホゴホ………」
むせちゃった………
よし、だいぶ落ち着いた。
どうする?
街を襲撃している魔王軍をぶっ潰してからクロを救いに行くか。
けどその間にクロが力尽きて死ぬ!
いや、別にクロが死んでも良いけど……あのままだと絶対またおかしな展開になるよね!
絶対あの変態中二病は上手いこと言われて魔神族に入るよね!
「あ、魔神族カッコいい!よし、世界を魔神族に染めてやるぜ!」
的な………
十分予想できる事態だ。
そんなことになったら妹のミカンが可哀想だ。
よし、先にクロを回収。
そして変態鎧騎士の首を切り落として殺害。
ダンジョン攻略後は速やかに魔王軍を壊滅させる。
うん、これが一番の最善手。
「よし、やるか!」
時間がない。
今はこの考えしか思いつかない!
こういう時にココくんが居れば冷静に状況を判断してくれるのに………
メイリアスが後どれくらい持つかわからないけど、きっとあの戦闘狂をこっちに連れてくれば勝手に魔王軍なんて壊滅するだろ。
だってあの戦闘狂だもん。
…………………うん。
私はエクスカリバーを鞘から引き抜く。
エクスカリバー……こういう時に見るとすごい美しい剣だと思う。
華美な細工。
鋭く伸びた綺麗な頭身。
そんなこと言ってる場合じゃない。
とりあえず戦闘のしやすいように剣を中段に構える。
「これで準備オッケー!」
一回深呼吸……こういう大変な時こそ深呼吸だよね。
ふぅぅぅぅぅぅ……………
よし!
「いざ、戦場へ行かん、異世界転移!」
次回予告
ペルは変態鎧騎士とメイリアスの存亡をかけて行動を開始し始める!
変態鎧騎士の首は綺麗に落ちるのか!