#124ココくんは……
「ペルさん、無事ですか?返事をしてください!」
ダンジョンに僕の声が響く。
けど一向にペルさんから返事は返ってこない。
「ペルさん!壁の向こうにいるんですよね?」
「…………」
「ぺ、ペルさん!僕をからかわないでくださいよ…………」
けれど返事は返ってこない。
もしかして扉がすぐに修復したのは一人になったペルさんを………
「ココくん、大丈夫?」
「ココくん……」
「ペルさん怒りますよ!返事してください!」
「………………」
「ココくん………」
そんな……まさかペルさんは………
「ココくん!」
トン……
僕の背中に抱きついてきた。
このミカンの匂いはミカンの匂いだ。
ミカンが抱きついてきたのかな。
「ミカン……急にどうし………」
「ココくん、ペルちゃんはきっと無事だよ!だって女の子の中で一番強いと思うから!」
確かに……けど………
「けど……声が返ってこないよ………」
「声が返ってこないのはきっとモンスターから逃げてるからだよ。大丈夫!きっと無事だから」
ミカンが笑顔で答える。
「きっと………」
「そうです。ペルさんならスタミナもありますから大丈夫ですよ……きっと!」
ポットも…なんでニッコリして言えるんだろう。
まだあってあまり日は経ってないのに………
「きっと……本当に大丈夫でしょうか?」
「うん、だってペルさんだよ!まだ出会ってから数時間しか経ってないけどすごい優しい人だと思うよ!」
だってペルさんって……
けど確かにペルさんはすごく優しいと思う。
「ポットもペルさんがすごいいい人だと思わない?」
「はい。たまにおかしなところもあるけど優しくていい人だと思います」
「ほら、大丈夫だよ!」
何でだろう。
駅で一人ぼっちになった時みたいな気分………
胸にぽっかり穴が空いちゃったような感じがする。
なんでこんな気持ちになってるんだろ……僕………
「けど僕がペルさんの様子も見ずに2人の元に走ったから…ペルさんが………」
「そんなこと気にしてたの!ココくんは悪くないよ」
悪くないのかな……
ペルさんのそばにいれば問題がなかったかもしれないのに………
「あれはきっとダンジョンの仕組みだから仕方がなかったんだよ!」
「そうです。仕方なかったんです!ココくんがそれでがっかりすることはないよ」
そうだと良いんだけど……
「それにね」
「それに?」
「落ち込んでる暇があったらダンジョン攻略しよ!そうすればペルさんと途中できっと会えるよ」
ミカンが僕から抱きつくのをやめて杖を構えて言う。
………………………
けどこのままずっとここにいても状況は変わらない。
ダンジョンを攻略していればきっとペルさんと出会えるはず……
それで謝らないと!
「うん」
「けどどうする?今の私たちでどうやって役割分担する?」
ポットが周囲を少し警戒しながら言う。
「確かに……」
「私は支援系スキルしかないから戦えないよ………」
「私も接近戦は避けたいなぁ…………」
今ここにいる僕とポットとミカンは接近戦が得意な人が全くいない。
僕は中距離が得意だけど、ポットとミカンは後方支援が得意。
近接戦闘をするプレイヤーが誰一人いない。
ポットは短剣技を取得しているけど、女の子を危険なところで戦わせるわけにはいかない。
「じゃあ僕が接近戦をするよ」
「え、けどココくんは魔術師じゃないの?」
ポットが心配そうな顔で僕を見る。
「うん、魔術師だけど短剣技のスキルもそれなりに高いから」
「ココくん、無理をしなくて良いんだよ」
ミカンも不安そうな顔をしていた。
ペルさんとはバラバラになっちゃった。
けどペルさんのおかげで二人と合流できたんだから絶対に守ってみせる!
「大丈夫!僕が二人を守るから!」
次回予告
迷子ナウなのだよ!
誰かいないの〜
ダンジョンだよ!
ゴブリンとしか出会ってないよ!
ココちゃんセーブンが足りないよ。
今すぐ補給せねば!
溶けてしまうよ〜