＃118壁の向こうにいるの？
「ペルさん、ここはどこですか？」
ココくんが私に聞いてくる。
「わからない」
本当にここはどこだろう。
ダンジョン内ってことはわかるんだけど、ダンジョンのどの辺りなのかがわからない。
「それよりペルさん、ダンジョンの仕組みがわかったって本当ですか？」
ココくんは私にしっかり抱きついて言う。
うん、迷子だけどここは楽園だ。
さっき私が煙の中でココくんに抱きついたら抱き返してくれたんだよ。
めっちゃ幸せ。
「ペルさん、しっかりしてください！」
わ〜ココくんが私に抱きついた状態で揺すってきた〜
「え、あ、うん。リックンのおかげでわかったよ」
そのリックンは今や行方不明。
まぁ、私たちも迷子なんだけどね。
「それでどんな仕組みなんですか？」
「まだ確信は掴めてないんだけど、このダンジョンはモンスターを殺しちゃいけないんだよ」
「それってどういうことですか？」
「さっきリックンがダンジョンの角を曲がった後、しばらくして何かを刺したような鈍い音がしたじゃん。あの音はきっとモンスターに刃物を突き刺した音なんだよ」
「モンスターに刃物を突き刺した音？」
「うん」
「けどそれだったらモンスターに攻撃したらいけないとかモンスターにダメージを与えてはいけないとかも考えられますよ」
確かにそう。
だけど流石にそれって鬼畜過ぎない？
だってダンジョンだよ。
ダンジョンでモンスターにダメージを与えちゃいけないってどんなダンジョンだよ！って思わない？
しかし私には完璧なまでの憶測がある！
「た、確かにそうだよ」
「それにダンジョン内の壁にセンサーが仕掛けられてるかもしれませんよ」
その可能性も捨てきれない。
「ココくん、ここからは私の憶測なんだけど聞いてくれる？」
「そんな聞かないわけないじゃないですか」
ココくん、可愛い。
ココくんを見るとココくんが真剣な顔で私を見つめている。
すごい可愛い……興奮しそう。
「ペルさん、少し顔赤いですよ」
「そうかな〜」
ああ〜このまま時が永遠に止まればいいのに！
「………あ、僕いつまでくっついてるんだろう…す、すみません！」
き、気づきおった！
「大丈夫。怖くなったらいつでもお姉ちゃんにくっついていいんだよ！というか離れなくていいんだよ！」
「いや、離れます！このダンジョン、すごい暑いので」
ああ〜ココくんが離れちゃった。
「それでペルさんはどんな憶測をしているんですか？」
「私がさっきモンスターを殺しちゃいけないんだよ、って言ったじゃん」
「はい」
「その理由はリックンの言動。多分、すぐに倒そうとして心臓に刃物を突き刺したんだよ」
「うーん……」
「それにちょっと鈍い音がしたじゃん。あれはきっと心臓めがけて刃物を振り下ろした時、骨に当たって貫いた音なんだよ。心臓のあたりって骨がいっぱいあるからたまたまその一つに当たったって感じ……かな」
「うーん…………ペルさん」
「ん？」
「焦げ臭くないですか？」
焦げくさい？
いや、ダンジョン内はあまり臭いとかがないと思う。
「特に何も臭わないけど……」
「そうですか……」
これはもしかしてクマの獣人特有の感覚？
クマって鼻がすごい良い動物なのかな？
けど壁の向こうの臭いなんて
「何か臭うの？」
「はい……木が燃えてるような臭いが壁の向こうからします」
ココくんが壁を見ながら言う。
壁の向こうからって臭うものなのかなぁ……
「壁の向こう？」
「はい」
「木が燃えてるような臭い？」
ダンジョン内に存在する木。
木……木材……松明！
「それって松明が燃えてるんじゃないの？」
「はい、それに近い。多分それです！」
そんな松明なんてダンジョンにかなりの数あるから特に関係ない。
ここは松明ごとの間隔がすごい空いてるけど何か意味があるのかな？
「けど少し違う臭いもするんです」
違う臭い？
ああ、不完全燃焼的なやつかな。
良く出るよね、木を燃やすとすごい黒いやつ。
あれってすごい臭いだよね。
「なんかミカンのような匂いが……」
え！
ミカンって果物の方じゃないよね。
だってここはダンジョン。
ミカン畑ではない！
それに誰もミカンを持っていなかった。
ということはミカンちゃんの匂いってことだよね！だよね！
ココくんってそんな女の子の匂いをクンクンしてる変態さんだったの！
は、初めて知った。
けど二人はかなり幼い時から知り合いだったんだよね。
ということはいずれ私のことも押し倒してクンクンしてくれるはず！
「ココくん、それでミカンちゃんがいるの？」
「はい……おそらく」
そんなわかってしまうほど嗅いでいたんだ……
私の知らないところで！
「ココくん」
「はい、どうかしましたか？」
「ココくんはいつ私のことをクンクンしてくれるの？」
「はい？」
ここで聞き返すということは時が経つまで待てということか？
理解した！
「な、なんでもない！」
「そうですか？とりあえず大声で呼んだら反応するかもしれません」
「う、うん」
「ミカン、そこにいるんですか？いたら返事をしてください！」
ココくんが壁に向かって大きな声で呼びかける。
そんなミカンの匂いがするって言ったって流石に壁の奥にいるはずがない。
そう思っていた。
「その声はココくん？ココくんなの！」
え、ミカンの声が聞こえる。
本当に壁の向こうにいるの！
次回予告
いやぁ〜まさか本当にいるとは思わなかったよ。
クマさんって意外と鼻がきくんだね。
いや、これはココくんがミカンちゃんへの執着心が強いのでは？
次回はいよいよ合流出来るのか？
お楽しみに！
作者より
感想をくれぇ〜
誰か我に元気をくれぇ〜
感想が欲しいです！
いや、最近予定が多くてね。
心がプチュリそうなんだよねぇ……
というわけでこの小説への意見などがあったらどんどん送ってくれると嬉しいです。
私のTwitterに送ってくれてもオッケーだよ！
というわけで次回もお楽しみに！
