#11志太くん
四角いテーブルの前に正座して1時間半ぐらいたったかな古文の万葉集は難しい。私は文系だけど古文がまだちょっと苦手だ。私がさぼっていた時期にやっていた内容だったからかな…
「とりあえず一回きりをつけてお母さんに電話しよう!」
私はベットのVRをテーブルに置き、横になってスマートフォンをポケットから取り出した。私は家に電話をかけた。
「もしもし猫沢です。どちら様ですか?」
「もしもしお母さん。私美由紀だよ。こっちの生活にも慣れたよ」
「あら美由紀。大丈夫?家事とかしっかりできてるの?」
「うん。大体は出来るよ」
料理を除いて
「よかった。あなたの事だからだらしない生活してるかと思ったわ」
一応家事は一通りやってるからだらしない生活はしていないと思う。
「そんな掃除、洗濯一生懸命やっているよ!」
「良かった。困ったら何でも言ってよ。私に出来る事なら何でも協力するから。あなたは村の誇りなんだから」
村の誇りって恥ずかしい。
「恥ずかしいこと言わないでよ」
「ごめんね。けどみんなから『美由紀ちゃんはどんな感じなの?』って聞かれて嬉しいのよ。村で東京の私立高校に首席で進学する人は村ができてから初めてだから。村長さんだってあなたの事気にかけているのよ」
お母さんが嬉しそうに言っている。
私が頑張ったのはVRMMOをやるために頑張ったのに…そんな村の誇りって言われるとちょっと心苦しいというか、心が痛い。なんか嘘ついてこっちに来たような気がして…
「ただいま~」
遠くからお父さんの声が聞こえた。
「今お父さんが帰ってきたからお父さんに電話をかわるわね!お父さん~美由紀から電話が来たわよ!」
「な、なんだって!」
遠くから足音がどんどん近づいてくる。お母さんの声が徐々に遠ざかっていき…耳に大きな声が響く。
「もしもし美由紀か大丈夫か!しっかり家事は出来ているのか?しっかり勉強はしているか?お父さんがいなくて寂しくないか!」
「大丈夫だよ」
「そうか良かった。寂しくなったらいつでも電話してきていいぞ。仕事中でもお風呂入ってる時でもでるから!」
「安心して私は大丈夫だから。困ったら電話するよ」
「わかった。じゃあしっかり勉学に励むんだぞ!」
「うん」
「電話をくれてありがとう」
「うん」
「じゃあきるぞ」
お父さんは変わってない。前から私のことを心配して、家にいる時は勉強を教えてくれたりしていた…思春期でイライラして文句とか言ったけど最終的に支えてくれた。離れて初めてお父さんの愛を理解できた気がする…
とりあえず私はきりがついたからスマートフォンでワールドホリゾンを検索した。えーと
「えーと『ワールドホリゾン星の所有権』検索」
星の所有権の情報は出てこなかった。使い方をたずねるのが3件だった。しかしそのコメントには解決法は書いていなかった。まだゲームが開始されてから時間がたってないからかな…
とりあえず次、変身の解き方を調べよう。
変身の解き方は元の自分の姿を強く想像する必要があるらしい。とりあえず現段階では変身を解く方法はないらしい。とりあえずずっと我慢していたけど…一旦
「トイレ行ってこよう」
私はベットから起き上がってスマートフォンを机に置き、トイレに向かった。ゴミ箱の下の方でミケは良い顔で寝ている。可愛い…写真撮りたい。けどトイレに行かないと漏れる…
「間に合った」
私は洗面台で手を洗った。もう少しで漏れるところだった…家で漏らすのは誰も見ていなくても恥ずかしい。
テーブルに置いてあるスマートフォンを見ると着信が来ていた。
「誰だろう?」
私が確認しようとするとスマートフォンに再び電話が来た。着信音が部屋で静かに響く。恐らく着信が来ていた人だろう。私はスマートフォンの応答ボタンを押して
「もしもし、猫沢です。どちら様ですか?」
電話からおどおどした声が聞こえてくる。
「あの夜遅くすみません。猫沢美由紀さんですか?」
「はい。私が猫沢美由紀です」
私が一度あった事がある人かな?
「僕、白宮志太です。この前はありがとうございます」
「志太くん…どうかしたの?」
「あの…その…」
なんか言いづらいのかな…
「どうかしたの?私に出来る事なら何でもするよ」
「あの…僕とワールドホリゾンで遊んでもらえませんか?」
「うん。やろう!」
そこで私は気づいた…ワールドホリゾン内で会うにはどうしたらいいんだろう…
「どこに行けばいいかな?」
「美由紀さんは今どこにいるんですか?」
そういえばなんていう村だっけ…覚えてるのは…
「今は海沿いの街…確かミヨーンっていう魚は多く釣れるところ」
「それってメイリアスですか?」
「多分そうだと思う」
「僕もそこの街にいます。じゃあ街の出入り口のあたりで待ち合わせにしませんか?」
「わかった。今からログインして向かうね」
「あ、ありがとうございます。ま、待ってますね!」
「うん」
私は電話を切ってミケが入っているゴミ箱に寄っていった。寝てる…可愛い。
「ミケ、ゲームやるよ」
ミケは起きなかった…どうしたら起きるかな。そうだ!
「ミケ、ゲームやるよ!」
ミケのほっぺを引っ張りながら言う。柔らかい…意外に伸びる。ミケは私にほっぺを引っ張られてやっと起きた。
「シャー」
ミケは相当怒っていた。可愛い…
「ミケ、待ち合わせしてるから早く!」
私は机の上にあるVRを頭に付けて、ベットに横になる。機械についているランプが点滅し始めた。
次の瞬間、目の前が真っ白になる。
しばらくすると目の前の景色がはっきりとする…ログアウトした時の路地裏の景色だ。私達がログアウトしてから約2時間15分後でこっちの世界では朝だった。ミケも数秒後に入ってきた。ミケは猫の状態だった…どうしたらスキル変身は解けるんだろう。
「人と待ち合わせってどういう事?」
「私がワールドホリゾンを買いに行った日に迷子になっていた子と待ち合わせしてるの」
「だから急いでるんだね」
「うん」
私はミケを抱いて急いで待ち合わせ場所に向かった。
待ち合せ場所に向かっているとPCが少しずつ見えてきた。エルフのお姉さんやケンタウロスのお兄さんなどがいる。
待ち合わせ場所に行くとそこには茶色の魔術ローブを着ていて、首から黄色いポーチをさげている男の子がいた。周りをキョロキョロしている上にフードを被っている。ちょっと怪しいけどきっと志太くんだ。私は志太くんを背後からそっと近くによって話しかける
「もしかして志太くん?」
「ひゃい。ぼ、僕が志太です」
な、なんか志太くん動揺してる。
「会えて良かったよ」
「み、美由紀さんですか?」
「美由紀です。こっちの世界ではペルです」
「僕はこっちの世界ではココです」
「ココくんよろしくね!」
「はい。ペ、ペルさんよろしくお願いします」
「とりあえずココくん何をする?私何も考えずに来ちゃったんだけど」
「僕も考えてません…と、とりあえずフ、フレンド登録してもらっていいですか?」
「うん。良いよ」
私とココくんはフレンド登録していた。ミケはというと私の手の中で寝ていた。
VRMMOあるある➉
人と待ち合わせすると見つからないことがある…
実はそばにいた