#106「ミカン、押すなよ。絶対に押すなよ」
「ミカン、押すなよ。絶対に押すなよ」
「それってフリ?」
「フリじゃない。落ちたらマジでシャレにならないからな」
「え〜なんで……別にお兄ちゃんの戦闘能力だったら落ちても服がちょっと溶ける程度でしょ」
「あのな、マグマの温度が服をちょっと溶かす程度ってぬる過ぎだろ!というかこの黒い皮防具とかマントは俺のトレードマークなんだからな!これが無くなったら俺の知名度とかが………」
「ちょっと早く行ってよ、お兄ちゃん!後ろが詰まっちゃうでしょ!」
「あ〜はいはい」
私たちは今、猫の世界のダンジョンに来ている。
あ、ミカンっていうのは美香ちゃんのキャラクターネームらしい。
国の人に聞くと、なんか理屈はよくわからないけど急に火山型のダンジョンが生えてきたらしい。
まぁ、ダンジョンには大体ボスがいて攻略すると金銀財宝ザックザクってことがあるらしい。
ちょうど国では新しい金貨を作るために金銀がかなり必要らしいからナイスタイミング!って感じ。
火山ダンジョンは、火山深くのマグマだまりのそばに入口があるらしい。
だから火山深くまで下りなければならない。
だが、普通の山ではなく火山だ。
下るにつれて気温が変化して辛くなってくる。
「クロ〜ダンジョンはまだ見えないの〜」
雪さんの死にかけた声が後方から聞こえてくる。
獣人には種別によって苦手なものがあるらしい。
例えば、猫の獣人だと水に少し危機感や恐怖を感じる。
雪さんはシロクマの獣人。
寒いところや水中移動は大の得意だけど、気温の劇的な変化や熱いところは苦手らしい。
「あと300メートルぐらい下りればマグマだまりに到達する」
「あと300メ〜トル〜」
「雪さん、大丈夫ですか?」
「しっかりしてください、雪さん」
後ろの方からリックンとポットの声も続いて聞こえてくる。
「リックン〜」
「はい」
「ポット〜」
「だ、大丈夫ですか、雪さん?」
「これ終わったらかき氷奢ってよ。じゃないと私、暑過ぎてスライムに転生しちゃうよ」
暑過ぎてスライムって……
「別に良いっすよ〜」
とリックン。
「じゃあどこのパフェ食べに行きますか?」
とポット。
それよりも暑い。
雪さんほどじゃないけどすごい暑い。
「ほんと暑いですね」
私の前を歩くココくんも汗をたくさんかいている。
「ココくんも帰りにパフェ食べてく?」
私はココくんに後ろから聞く。
「僕ですか?そうですね……パフェというよりかき氷が食べたいです」
「かき氷か〜」
こっちの世界にかき氷機あるかな?
「そういえばここってどうやって出来たんだろう……」
「なんかよくわからないけど生えてきたらしいね」
「山って生えるんですか?」
山って生えるんですか?ってすごい不思議な疑問だ。
だ、だって商店街のおじさんが……
「あの山が急に生えてきたんだっぺ!」
って言ってきたんだもん。
「きっとアレだよ。地盤沈下的なやつじゃないのかな」
「ペルさん、地盤沈下だったら普通地面が凹むはずですよ。地盤沈下とは、地下水や天然ガス、自然的な現象などが起きて地表面が凹むことですよ」
さすが、ココくん。
博学だ。
難しい四字熟語をこんなに簡単に説明して理解させてしまうなんて……
「なんて恐ろしい……」
「はい、とても危険です」
じゃあ何だ。
こういう時は地盤沈下的なやつの逆だから沈下の逆の単語……浮上。
「じゃあこの状態だと地盤浮上じゃない!」
「それは……違うと思います」
「ココくん、何を話してるの?」
前を歩いているミカンがココくんの方を振り返る。
「えっと。山が生えてくるのはどういう原理で生えてきたのか?を考えていたんです」
「それってジバンチンカってやつじゃないの、ココくん」
わ、私と同じ発想だと!
「それは違います。地盤沈下だったら地面が凹むはずです」
「え、じゃあ……魔法!」
「魔法?」
「そう、魔法で地面が上にズドーン!って伸びて山になったんだよ。そして最後に地面深くからマグマがドバ〜って!」
あ、新たなる発想が!
今時の女の子は想像力豊かだなぁ〜
まぁ、私には到底及ばぬが!
何故なら、私には個性豊かな想像力とともに妄想力を兼ね揃えている。
そんな私に勝てるなんて……考えてはいないだろう。
「あ、そういえばペルさん」
「どうかしたのポット?」
「なんでペルさんっていつも制服姿なんですか?」
なんでって言われても特に理由はない。
最初のガチャで出たから。
ただそれだけの理由なんだけど……
「普通に1番最初に手に入れたお洋服だし…動きやすい。そして防御力もなんだかんだである!からかな」
「1番最初に制服が出たんですか?」
「うん、もうちょっとごっつい鎧とか露出度の高い防具が出ると思ってたよ〜」
「そ、そうなんですか……けど新しく防具とか買おうとか思わなかったんですか?」
「いや、だって初期の所持金って0円じゃない。だから防具とかにお金回すよりもそのまま戦闘しに行って稼いだ方が良いかと……」
あの時はミケとゲームで遊べるって喜びと武器の知名度にテンションが上がって鎧にまで目がいってなかったんだもん。
「こ、ココくん!だ、大丈夫?」
私の前方からミカンの悲鳴にも似た声が聞こえる。
なに、ココくんが怪我をしたのか?
ならばその曲者を殺さねばならない。
我がエクスカリバーが火を噴くぜ!
「だ、大丈夫ですよ。ちょっと鼻血が出ただけなので……」
は、鼻血だと!
これはどこからか精神攻撃とか特殊攻撃を仕掛けてきた類か!
「ココ〜今、絶対にペルさんのエッチな姿想像してただろ」
リックンが意地悪そうに言う。
わ、私のエッチな姿の想像だと!
ココくんもそういうお年頃なのかぁ〜
「そ、そんなことないし!普通に歩いてたら急に出たんだよ」
「いや、ないな。絶対に露出度の高い防具の装備姿を想像してたんだなぁ……きっと」
「そ、そんなこと………」
ばたり………
ココくんはその場で正面に倒れる。
「「こ、ココくんが死んじゃう!」」
火山ダンジョン到達前、私たち攻略パーティの可愛い担当のココくんが重症で直ちに治療をすることになった。
次回予告
次回は久しぶりのココくん目線!
なんとなんとそこには………
作者より
お絵かきイベントはまだまだ行なっています!
絵の上手な人もそうではない人もふるってご参加ください!
詳しくは山田小雪のTwitterをチェック!
それででない場合はTwitterで『猫愛好家がVRMMOに猫を連れてきました!」と検索すれば出てきます。
あ、あとそれとですね。
私は今ですね。
今年の夏休み向けのホラー小説も書いてます。
お楽しみに〜です!