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#105皙さんの病?

 私たちがしゃぶしゃぶを楽しんでいるとあっという間にお肉が尽きてしまった。

 すごい美味しくてお箸が止まらないんだよ。

 なんというか…しゃぶしゃぶを付ける卵とかタレがちょうどいい感じにマッチしてめっちゃ美味しいんだよ!

「お兄ちゃん」

 美香ちゃんが皙さんのことを箸で突く。

「どうかしたの、美香?僕は牛肉でも豚肉でもそれこそ下級サラマンダーでもないよ」

 なに、その謎の応対!

 もしかして鍋に入ってるお肉の種類なのか……

 というか牛肉と豚肉はわかるよ。

 けど下級サラマンダーって何?

 この鍋の中にサラマンダーのお肉入ってたの?

「えっとね。私が片付けをしているから今度はお兄ちゃんが話してていいよ!」

「だ、大丈夫?今回は量が多いから僕も手伝うよ」

「それは問題ない。私が手伝うから!」

「けど量が多いから僕もやるよ」

 皙さんは机から立とうとする。

「大丈夫!ココくんとリックンが聞きたいことあるんだって!」

 美香ちゃんが笑顔で言う。

「そういうことだから私と雪ちゃんは一緒に片付けしてるよ」

 そういうと二人は部屋から出て行った。

「二人とも何を聞くつもりなの?」

 ポットが不思議そうな顔で聞く。

「え、僕は特に聞きたいことはないよ」

 とココくん。

「あ、そうだった。皙さんってよく人が変わりますよね。アレって役作りですか?」

 いや、なんとなくさっきの話の話題にかえることを察した。

 皙さんの雰囲気が変わる現象は私の予想外のことだった。

 いや、思い浮かんでいなかったといえば嘘になる。

 しかし実際に存在するものだとは思っていなかった。

 小説やアニメの空想の産物そう思っていた。

 今までは。

 聞けば誰しもが一度は聞いたことのあるような単語だった。

多重人格たじゅうじんかくですか?」

「そう、多重人格。正式名称では解離性同一性障害かいりせいどういつせいしょうがい。本人にとって堪えられない状況を、離人症のようにそれは自分のことではないと感じたり、あるいは解離性健忘かいりせいけんぼうのような状態……」

「解離性健忘って何ですか?」

 ココくんが問う。

 解離性って単語から何かを分けるのだろうか?

「えっと解離性健忘とは、ある一定の時期や期間の感情や記憶を切り離して、それを思い出せなくすることで心のダメージを回避しようとすることから引き起こされる障害だよ。そして解離性同一性障害は、その中で最も厄介なもので、切り離した感情や記憶が成長して、別の人格となって表に出てしまう病気だよ」

「それが皙さんですか……」

「うん、それが僕だよ」

 気まずい。

 まさか実際に存在していたとは……

 多重人格って小説の中で主人公の周囲のキャラが持ってて、自分ではない自分に恐れて困っているってイメージがある。

 けど実際に存在するとは……

「すみません」

 リックンがそっと頭を下げる。

「別にいいよ。いずれはココくんに話す予定だったから」

 けど雪さんはこのことを知っていたのでは?

 いや、雪さんはよく皙さんと会ってるって言ってたし。

「皙さん、この事は雪姉さんは知っているんですか?」

「うん、雪さんには話してあるよ」

「僕のお父さんとお母さんには話してあるんですか?」

 ココくんが続けて質問する。

「うん、ココくんのお父さんとお母さんにも話してあるよ」

 ココくんだけ知らなかったってことかな?

「どうして僕には知らされていないんですか?」

「それは親戚のお兄さんが病気っていうので気を遣ってもらいたくなかったから。だから状況が整理できるようになってから話そうと思ってた」

 確かに病気って聞くとみんな少し引き気味になって気を遣っちゃうよね。

 皙さんはココくんに気を使って欲しくなかったのかな……

「そうですか……」

「ゴメン……僕の勝手で今まで会えなくて」

 僕の勝手?

「皙さん、もしかしてココくんと今まで会ったことなかったんですか?」

 私は思わず聞いてしまった。

 聞くべきではなかったのかもしれない。

「幼い時のココくんには何度か会ったことがあったけど幼稚園入学の時を境に会わないようにした。気を遣わせたくなかったから……だけどこれだけは知っていて欲しい…………」

 皙さんはため息をひとつ吐くと力強い声で言った。

「僕は君のことが大好きで仲良くしたいって思ってるからぁ………」

 と、唐突だ。

 けどこれはもしかして……

「まぁ、あいつの言い分は理解してもらえた?」

 雰囲気が一瞬のうちにガラッと変化する。

「皙さん?」

 ココくんが唖然としている。

 これは人格の入れ替わり。

「もう一人の皙さん」

 私は思ったことをそのまま呟く。

「そうだよ、確か君はペルだよね。よく俺とあいつが入れ替わったってわかったね」

「わかったも何もさっきの皙さんと今の皙さんの雰囲気……全く違うから」

「ああ、確かにあいつは大人しすぎの真面目くんだからすぐに気付くか。それで俺からも言わせてもらいたいことがある」

 言わせてもらいたいこと?

「俺はもう一人の黒宮皙。あいつから話は聞いている」

 あいつからって……二人の間では会話可能なのか?

 さっきの皙さんの説明だとストレスとかで感情とか記憶を切り離してしまうらしいけど二人の間では会話可能なのかな。

「俺はあいつみたいなバカ真面目なやつはあまり好みじゃないし、運動音痴でヘタレなところも気に入らない。けどあいつはあいつなりにお前(ココ)に負担をかけないようにしたんだ。だから今まで知らせなかったことは許してやってくれ」

「………………」

「あいつはあいつなりに考えた結果、辛くてもお前(ココ)と会わないという選択肢を選んだ。あいつなりの最善を選んで行動をした。だから…だからまぁ、許してやって欲しい」

「わかりました」

「そうか、頭がいいから物分かりもいいな」

「だ……」

「けどこれから皙さんはどうするんですか?」

 ココくんが何か言いかけていたけどこの展開の障害になる気がした。

 だからここは私がもう一人の皙さんに質問をして言わせない。

「何をだ?」

「これから皙さんはココくんとどうするつもりなんですか?」

「どうするつもり?って俺とあいつはこれからはめちゃめちゃココと遊ぶぞ。だってココとはまだあまり遊んでないしな」

「「本当ですか?」」

 ココくんと私の声がかぶる。

 良かった。

「俺は遊ぶこととか冒険することが大好きなんだ。だからこれからはココがいつも遊んでいるメンバーで遊びたいと思ってる。良いよな、ペル」

「それは……もちろんです!」

 そんなの良いに決まってる。

 これからの生活が楽しくなりそう!

次回予告

皙さんと美香ちゃんとも遊ぶことになった。

そうと決まったら猫の世界に招待しよう!

だってまだまだ猫の世界は未開発地帯が有り余っててダンジョンも有り余ってるらしいしダンジョン攻略だ!

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