#99とある村では一人の少女が悩んでいた
「うわ…どうしよ〜〜…」
私は一枚の紙の前に苦悩していた。
「進路……どうしよう……」
私の目の前に今立ち塞がっているのは第一回進路希望調査票。
去年、美由紀が苦悩していた理由がやっとわかった。
これは勝ち目のないモンスターじゃないか!
どうしよう……ホントにどうしよう………
「行きたい高校なんてないよ!」
私はスマホを操作しながら言う。
だって家から近い高校の偏差値が極端過ぎるんだよ!
片方は偏差値65の化け物校。
もう一つは偏差値30の超モブ校。
正直、どっちも通いたくない。
私はどうすれば良いの?
出来ることならこのまま家の仕事を手伝って毎日ゲームしたいなぁ……
というか引きこもりたいなぁ〜
FPSするためにずっと引きこもってたいんだけど……
私は進路希望調査票を持って一階に下りていく。
「お母さん〜」
「なに、夏菜子?」
「進路希望調査票になんて書けばいいの?」
「何書けばいい?って夏菜子のやりたい道に進みやすい高校に入ればいいじゃない」
「私のやりたいことはゲームだけだよ。ゲームで始まりゲームで終わるんだよ」
「何馬鹿なことを言ってるの……美由紀お姉ちゃんを見習いなさい」
「美由紀は頭が微妙だったじゃん」
「微妙って確かに去年の美由紀(あの子)は夏菜子の成績以下だったわ。けどやりたいことのために一生懸命頑張っていたわよ」
「確かに美由紀は頑張ってたけど都会に行くなんてずるい!」
「ずるいってそれだけの学力を身につけたから行けたのよ。悔しかったら東京の偏差値の高い学校に進学できるように夏菜子も努力しなさい」
べ、勉強はやだ。
私は反論できず自室へと撤退していく。
去年の美由紀は偏差値30と超お馬鹿で近くの偏差値30の高校に進学する予定だった。
新任の先生に当たるまでは。
私が中学二年生のゴールデンウィークが終わると美由紀の担任の女性教師が産休に入ったため高校から新しく先生が入ってきた。
真山先生と言って東京の高校教師が大人の事情で中学教師をすることになったらしい。
真山先生は授業態度の悪い生徒や進路に悩んでいる生徒の家に度々唐突な自宅訪問をするという熱血系?教師だった。
授業態度の悪い美由紀は当然のように自宅訪問を度々されていた。
そこで真山先生が美由紀に言ったことは……
「美由紀ちゃんはやれば出来る子だと先生思ってるから」
って。
その時思えば…
「いえいえ、うちの姉はやっても実りませんよ」
って思ってた。
けど真山先生と二人で放置すると謎に学力と集中力が上がっていた。
まるで何か謎の力によって洗脳されたかのように……
そして入試の一ヶ月前の成績は5教科の点数の合計が470点と化物に変貌していた。
美由紀は入試を受けに東京の名門私立高校に単願。
そして優等生となり授業料を無料で進学することとなった……
村ではもうお祭り騒ぎ。
村で初めて名門私立高校に優等生で入学した人が出たと。
村長もわざわざうちに来て讃えた。
しかし美由紀の顔は真顔だった。
その程度のことはどうでも良くて、それよりも他のことが気になっているようだった。
「いや、美優紀はなんか真山先生に洗脳されてたじゃん」
「洗脳?何を言ってるの?美由紀はしっかり毎日勉強してたじゃない」
「それは夏休み終わってからでしょ。いくらなんでも偏差値66の高校に向けてそれから勉強したら間に合わないでしょ」
「それを間に合わせるように頑張ったから受かったんでしょ。それより後、10分で夕食できるから。進路希望調査票に書く高校を少し考えておきなさい」
私に合う高校なんてないって……
将来の夢もない。
得意教科もなければ苦手教科もない。
好きな者は小さな女の子とかサバゲーとか?ってそんなんじゃどこ行っても変わらないじゃん。
ゲームが好きだったら工業高校の情報科とかかなぁ……
けどそれじゃ小さな女の子がいないに等しい。
じゃあ女子校か……
けど女子校に行っても小さな女の子が多いという確証がない。
どうしよう…どうしよう!
解説
今回は猫沢美由紀の妹、猫沢夏菜子ちゃんについてです。
夏菜子ちゃんは美由紀ちゃんとは一歳違い。
絶賛志望校に悩み中の女子中学生。
兄弟や姉妹というものは互いに否定することが多いと思います。
なので今回は美由紀ちゃんのいちじるしい学力の向上について否定しているのです。