ありえないことが決断させる
ハッピーエンドなんて綺麗事である。現実であってはいけない。
「あなたは本当にそれでいいの?」
「なっ、誰だ!」
「ふふっ、まあ考えてみなさい」
辺りも見回してもいない。声は女の子の声だった。
しかし本当にそれでいいというのはどういうことなのだろうか。誰だか知らないけどあの声の通りそれでいいのか。
「だめだ、俺はもう決めてるんだ」
俺は誰にいくら言われようとハッピーエンドを認めない。二次元では確かにいいだろうけど現実ではない。
「君は本当に頭が堅いね」
「だから誰だ!姿を見せろ!」
また同じ声が聞こえた。やっぱり周りには誰もいない。
「もう、お堅い上にせっかちとか。そんなんだとモテないわよ」
「うるさい、別にモテるとか興味ない」
実際興味ないのは意地とかではなく事実だ。
「俺はあの子以外に興味ない」
「そう、まだ奈実ちゃん好きなんだ」
奈実、それは俺が一目惚れした女の子の名前だ。
「奈実ちゃん、今のあなたを見たらなんて言うでしょうね」
「うるさい!奈実と言うな!」
声はクスクスと笑い始めた。
奈実はもういない。俺の前に現れることなんてもう二度とない。あの子はいないんだ。
「とりあえず俺の前にもう現れるなよな!」
「現れてはないんだけどなぁ」
はっ.....確かに姿を見せてないから現れてはいない。
「それと、現れろとか現れるなとか我儘だよ悠くん」
う、嘘だろ。何で奈実の声がするんだよ。それに悠くんとは奈実しか呼ばないはずだ。
「奈実、奈実なのか!」
「ごめんね、幸せになって悠くん」
奈実、奈実奈実奈実。
何でお前は今頃俺に声を聞かせたんだよ。何で、今頃。
「うあああああああああああ」
そこからはとりあえず泣き叫んだ。そのあとはよく覚えていない。
奈実、俺はやっぱお前が好きだ。他のやつは好きになれない。俺が好きなのはお前だけだ。だから...
「だからずっと好きだ、奈実」
奈実の前で、奈実の墓で俺は告白した。