プロローグ
カタカタカタ……
聞きなれたキーボード音が暗い部屋に響く。
今は午前三時頃だろうか。
俺はいつもの日課通りに深夜アニメを見て、その批判に没頭していた。その後はゲームをし、日が昇れば寝るつもりだ。そして午後二時、三時に起き、一般的な生理活動を始め身体を整え、また深夜アニメに備える。
これが俺の一日のサイクルだ。
この生活を始めてもう一年ぐらい経つだろうか。こうなる前まではしっかりとした昼型人間で学校にも行っていたし、勉強と運動も不得意なくこなしていた。友達もいた。
まぁそれはもう昔のことだ、どうでもいい。俺は今のこの生活が気に入っている。しっくりきている。独りのこの時間が心地いい。
どっかの偉い人が『人は独りじゃ生きていけない』とか言ってたけど、結局人はひとりの為にしか動かない。そう、自分の利益のためだけにしか。そんなやつが多人数集まっても自分の利益の害になると分かった瞬間、全力で排除しようとするんだからそこに意味なんてない。信用なんてない。
まぁだから今の人は害だと思われないように無理して自分を偽り抑え込みながら多人数に合わせて生きてるんだろうけど。
「ははっ……」
多人数に合わせるために自分自身を犠牲にするぐらいなら独りでいい。独りなら害が及ぶこともないし、及ばすこともない。多人数で生きるか、独りで死ぬかなら俺は喜んで独りの死を選ぶ。
「まぁ俺はもう害とみなされて排除されちまったからな。選択肢は元よりひとつしか残ってねぇか。でもただ死ぬのもなぁ……」
どうせなら、いっそ死んでこの世界ではないどこかの異世界に生まれ変わって本当に信頼できる仲間と過ごして生きたい。
「神様、どうか俺に第二の人生を……!」
と、色々馬鹿みたいなことを考えている内に部屋は少し明るみを帯び、外では人間社会が動き始めていた。
さて、明日も夜は遅い。俺もそろそろ寝──
椅子から立ち上がった瞬間、とてつもない轟音とともに俺の意識はそこで途切れた。