第5話 【女の子と高校と】
麻酔が効いているのか周りの音がエコーがかかったように微かに聞こえる……
確か俺、手術してるんだっけ……?
その音を微かに聞いてまた意識が遠退く……
「……事に手術終わり……からね」
ん?俺手術終わったんだ……?
あ…… また眠くなってきた……
「こと…… まこと……!」
あれっ?なんだか周りが明るいな……
音もさっきよりよく聞こえる……
「……う……ん?」
俺はまだボヤけて目が見えにくいが、自分が目を覚ましたのは感覚でわかった
呼んでたのは母さんか……
手術終わったの……?
「誠~、おっ! 目覚めたかな?」
「手術よく頑張ったな」
「兄貴?俺忠志わかるか?」
そうか父さんと忠志も来てたんだった……
俺がボーッとしていると
「誠!よく頑張ったね!身体どう?違和感とかある?」
「えっ?いや…… まだよくわかんないな…… まだ目が覚めたばっかりだし……」
「そりゃそうよね…… 先生も無事に終わりましたって言ってたから後は身体が良くなるの待つだけね」
俺、女の子になったのか?イマイチ実感ないけど……
股間と下っ腹辺りになにか巻いてあるみたいでゴワゴワするな……
身体の股間辺りからチューブも出てるし、完全に病人って感じだな……
「兄貴、暫く見てなかったけど、なんか少し縮んだ?」
「えっ? そうか? まぁ1ヶ月も病院のご飯食べてたら嫌でも痩せるよ、毎日量も少ないし……」
「病院飯は美味しくないみたいだしな、それにしても…… 見た目は少し縮んだけど、そんなに前の兄貴と変わらんよね?暫く会ってなかったからもう女の子っぽくなってるかと思ったのに」
忠志のやつ久しぶりに会ったのにズバズバ物言ってなんか腹立つな……
「それはこれからの経過次第よ、むくみもあるんだし時間が経てば見た目もスマートになるんじゃないかしら?」
まぁ見た目はそんなにすぐに変わる訳がない魔法で女の子になったんじゃないし……
むくみが出てるって先生言ってたし、手術はしたんだから身体が治ってくれば少しスマートになると思うんだけど……
「母さんも忠志も少し静かに出来ないのか?誠はまだ手術明けで身体も本調子じゃないんだ、また落ち着いてからそういう話はしたらいいだろう?」
「そうだったわね……」
「兄貴に会ったの久々だったからつい……」
父さんはいつでも真面目だな……
起きてから色々聞かれたけど正直身体が怠いし頭も少し痛い……
父さんが割ってこなかったらいつまで話していたか分からなかったな
「誠騒がしくてごめんね、母さん達、先生が来るまで病室にいるから誠は少し休みなさいね
先生、15時位には様子見に来てくれるから」
「わかったよ、俺少し休むね……」
俺は先生が来るまで眠る事にした
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
俺の周りで話し声が聞こえるな……
目を覚ますと白衣の人が見える、どうやら中西先生みたいだ、家族と先生が話をしている
俺、結構寝てしまったみたいだ
でもお陰で少しスッキリしたかな
俺は話のタイミングを伺って、少し静かになったところで先生に話し掛ける事にした。
「先生…… ありがとうございました……」
「おや?誠君起こしてしまったかな?気分はどうだい?」
「だいぶいいみたいです……」
「誠君は若いから回復も早いみたいだね、顔色も良さそうだし麻酔もだいぶ抜けたようだね」
そういえばさっきより股間の辺りがジンジンするな……
麻酔が切れたからか……
「先生俺、ちゃんと女の子の身体になったんですか?」
「手術は無事に終わったからね、身体は完全に女の子になってるよ
身体の症状もこれで確実に良くなるから安心だね」
ちゃんと治るんだ、先生の話を聞いて安心した
健康にならなきゃ女の子になった意味ないしな……
「誠君、ご家族にも話しをしていたところだけど、切開した箇所と症状の経過を診てホルモン治療とリハビリも平行してやっていくから2ヶ月は入院してもらうが頑張ろうね」
うっ…… まだ2ヶ月もここにいるのか……
まぁ急に退院してもいいって言われても困るし……
まぁ先が見えただけでもよしとするか……
でも2ヶ月って…… 俺もう1ヶ月入院してるし学校どうしよう……
まぁ嫌な奴等に会わなくて済むのはいいんだけど……
「母さん、俺中学校どうしよう、暫く行けないし……」
「心配しなくてもいいよ、学校には先々週に事情話してお休みの話はしてあるから
それに誠は高校も合格してるんだからなんにも心配ないじゃない?」
「えっ?高校って…… 俺が倒れる前に受けたとこ?」
「ごめん、色々あったから誠に話すの忘れてたね、受かってたわよ、高校
早くに決まって良かったわね」
色々あったのはしょうがないけどさ……
俺にとって大事なイベントだから通知が来た日に聞きたかったな……
「良かったけど…… 入学の手続きってもう終わっちゃったんじゃ…… 」
「母さん変わりに手続きしといたから誠は心配しなくていいよ」
「でも俺、男として願書だしたよ?もう女の子になっちゃったし……」
「それも高校には話はしてあるわよ?性別が変わっても同一人物なら問題ないってさ
退院したら高校で面談をしたいって、誠から直接話を聴きたいみたいよ」
男でも女でも同じならいいのか?まぁ高校入れるみたいだしそれはそれでいいんだけど……
結構寛大な学校なんだな
「誠君は中学3年生でしたね、無事に高校合格できて良かったですね
高校は何て言うところに行くのかな?」
「あの…… 大和大学附属学院ってところです」
偏差値で見たら真ん中位だけど二年生になるとコースが選べるところで、特進コースと一般コースがあってそのまま附属の大学に行けるし、特進コースに行って更に上の大学を目指せるみたいなので俺みたいな目標が無い人間でもある程度は将来に希望が持てる学校なのだ
「あれっ? うちの娘と同じ高校だね~」
「えっ?先生、娘さんいるんですか?」
俺と母さんが同時に言う
「まぁね、あまり身内話は患者さんにはしないからね
中学校も誠君と同じ学校なんだよ」
「えっ!? そうなんですか!? でも俺、中西って女の子知らないんですけど……
中学校だと俺、大体独りでいることが多いし…… あんまり周りと話しした事ないので……」
「確か誠君の隣のクラスだね、知らなくても仕方がないね」
驚いた…… 先生の娘さんが同じ中学にいて同じ高校に行くのか……
娘さんは俺の事知ってたりするのかな?
あれっ? て事はもし俺の事知ってたら俺がもともと男の子だったの知ってるって事になるよな?
女の子になったの言いふらされて高校でもいじめられるのか?
折角人生やり直せると思ったのに……
お先真っ暗だ
「そうだ、うちの娘に誠君が退院したら女の子の生活の面倒を見て貰うのはどうかね?
同年代で同じ高校なら外で何か困った事があっても直ぐに相談できるしいいと思うんだが
」
「でも俺男の子だったんですよ?女の子になって会ったら娘さんが嫌がりますよ……」
「私の娘だから大丈夫だよ、身体の事で偏見を持つ子じゃないからね
まぁこれも何かの縁でしょう、娘には私から話しておくので誠君が退院したら連絡をするよ」
先生もなんか強引だな、でも手助けしてくれる同級生が出来るのはありがたいな
女の子の生活なんて想像もつかないし、高校で独りじゃ心細いし……
先生の娘さんなら信用してもいいよな?
「誠良かったわね、母さんも家の中なら手助け出来るけど学校始まっちゃったら流石に無理だったしね」
「そうだね……」
「では誠君、明日からリハビリ頑張ってやっていこうね」
そう言って先生は病室を出ていった
俺頑張って早く良くならなきゃな!
高校も決まったし手助けしてくれる人も出来たし!
なんか少しやる気が出てきたな、明日からリハビリと治療頑張るぞ!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
そして翌日から俺はリハビリと治療に専念する……
大変な病院生活も瞬く間に2ヶ月が過ぎようとしていた……