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本当の俺は   作者: i
4/13

第4話 【決断と手術】

11月も後半になって少し寒くなってきたな……


病室の窓から見える歩道の木も葉っぱが無くなって寂しい感じがしてきたし……

時間がたつのは早いなぁ

今日の夕方までには決めないと……


俺は期限の2週間が今日だったので切羽詰まっていたが、未だに気持ちの整理がつかないでいる……


身体の事はもう悩んでも変えようのない事実だし、先を考えたら女の子になる事が一番自然だって思えて性別を変える決心はついたんだけど、踏ん切りがつかないよ……

気持ちを切り替えるなんてなかなか出来ないよな……


時計も14時を回ってるし…… 時間が無さすぎるっ!

腹も今は痛くないし、このまま決めなかったら手術しなくていいかも!

いや…… 薬で症状抑えてるだけだしやっぱり決めないと……

でも気持ちは男の子な訳で…… あれっ?でも俺女の子になるつもりなんだよな?

俺のままで女の子になれるのか??

あーっ もう!ワケわからなくなってきた!

頭の中でぐるぐると一人で自問自答している


駄目だ…… 母さんが来たら話を聞いてもらおう、そしたら気持ちも切り替え出来るかもな……?


今日は母さんとなんだか話をしたくて来てもらうように頼んだのだ

あいにく父さんは仕事で来れないけど……


多分頼まなくても来てくれたと思うけど心配だったから……

一人で考えてても埒が明かないし……


ベッドの上に寝転がって備え付けのテレビをつける

母さん来るまでテレビ見て待つか……





時計をみるともう15時を過ぎていた


テレビ観入ってしまった…… それにしても母さん遅いな……

病室に居ても息が詰まるし、少し気分転換にでも行くかな……


俺はテレビを消してベッドを降りた


歩けるし車椅子は要らないな……

確か廊下の一番端にフリースペースがあったから行ってみるか


俺は病室のドアを開けて廊下へ出る


丁度廊下に出たところでナースステーションを曲がって歩いてくる女の人に気づいた


「あれっ? 誠どっか行くの?」

母さんは手を振りながら近づいてくる


「病室にいてもなんか嫌だし、気分転換に行こうと思ってさ」


「そう、それじゃ母さんも一緒に行くわ」

そう言って俺と一緒に廊下を歩く


「母さん今日は遅かったね」


まぁ仕事をしてれば仕方がない事だけど……


「あはは…… ごめんね、珍しくお客さんが沢山来ちゃって……」

母さんは申し訳なさそうにしている

でもお客さんが来てくれるのはいいことだよな、そのお陰で暮らせてるんだし


会話しながら少し歩いて俺はフリースペースのベンチに座った

母さんはフリースペースの自販機でお茶を買って俺に渡してくれた


「お茶、温かいのでよかった?」

そう言って俺の横に座る

俺は寒くてもいつもは冷たいのを飲むけど、身体の事もあるから母さん気を使ってくれたのかな?


「いいよ、母さんありがとう」

そう言って俺はお茶を一口飲んだ


「あちっ!」

温かいって書いてあるけど結構熱いな、このお茶……

思わずベロ出しちゃった……


「あんた昔から猫舌だったわね、反応だけ見てると女の子だね」

笑みを浮かべて母さんが言った


まぁ身体は女の子みたいだし間違えじゃないけど……


「母さん…… 俺本当に女の子になれるのかな?」

母さんの“女の子”って言葉に反応して俺は思っている事を声に出してしまった


気持ちも考え方も俺変わっちゃうのかな?今の俺とは違う人間になっちゃう気がする……

気持ちを変えるのって難しいよ……


「なれるもなにも身体は女の子なんだし問題無いんじゃない?私もお父さんもそれでもいいって思ってるよ?」

そう言ってお茶を一口飲んだ


そんなのは俺も納得してるしわかってるよ!

例えようがない怖さと言うか、わからない事に対する恐怖と言うか……

自分でもよくわからないけど……


「身体の事じゃないよ…… それはもう納得してるし…… 何て言うか…… 今の俺が俺じゃなくなる気がしてさ……」


俺何言ってるんだろ?わからないのに何を母さんに話をしたかったんだ?


「う~ん、でも変わっても誠は誠でしょう?ほとんどの人は途中で性別を変えるなんて経験しないし、母さんが誠の立場になって考えても…… 難しい事よね……」

母さん複雑そうな顔してる


そりゃ母さんでもわからないよな……


「俺、女の子になるのが怖いんだと思う……」


頭では身体が女の子なんだからなるしかないって思ってるけど、本当のところ女の子って何なんだ?男の子と何が違うんだ?


「初めての事はなんでも怖いと思うよ、誠が抱えてる問題は特にね…… 経験もないしお手本もない、尚更不安だよね?でもそれは母さん達も一緒なのよ?立ち止まっていても何にも解決しないわ、気持ちだって同じ事だと思うのよ、経験してみて初めて気持ちって変わるもんでしょ?」


「う~ん……」


「なってみなきゃわからない事だらけだけど

新しく稲垣誠を作ってみればいいじゃない?そう考えたら少し楽にならない?誠には相談出来るお父さんもお母さんも忠志もついてるじゃない、家族みんなで誠の事バックアップするし一人で悩ませるような事は絶対しないわよ」


モヤモヤな気持ちはまだあるけどなんか少し気が軽くなった気がする……

そうか一人で悩まなくてもみんなに相談してやってけばいいのかな?


「母さん、俺決めたよ、女の子になる手術受けるよ……」

なんかよくわからないけど、きっと間違えた選択じゃないと思う

なんとかなるだろって思えたし……


「そう?わかったわ、お父さんと忠志には今日帰ったらそう話しておくわね」

母さんはお茶を半分まで飲んで大きく息を吐いた


多分2時間位話してたと思う、疲れたよな……

俺も喉カラカラだし……


「それじゃ中西先生に手術の話してこなくちゃね、母さん先生呼んでくるから誠、病室に行ってなさいね」

そう言って母さんはフリーがスペースを出ていった


気付けば外はもう暗くなり始めてるし、俺も部屋に戻るか……



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



俺は病室に戻ってベッドに座った

喉がカラカラだしさっきの残りのお茶でも飲んで母さんと先生を待つか……


なんか簡単に決めちゃった気がするけど

もう迷ってても仕方ないよな、心強い家族もいるしきっと大丈夫だ


俺は気持ちを断ち切るようにお茶を一気に飲み干した……


30分位して、母さんと先生が一緒に部屋に来てくれた……


「誠、先生連れてきたわよ」

そう言って母さんは先生の邪魔にならないようにベッドの横に移動する


決めたとは言ってもいざ話すとなると緊張するな……


「やあ誠君、どっちの手術を受けるか決められたかい?」

いつも通り優しい口調の先生だ、いつもなら凄く安心出来るのだが今の俺は緊張してしまって


「先生…… 俺…… その…… おっ、女の子になる手術受けます!」

頭が真っ白だ……

なんかたどたどしくなってしまった……


「頑張って決めたんだね、わかったよ、誠君の身体も手術をすれば必ず治るからね」

先生は落ち着いた表情で言ってくれた


俺は女の子になっちゃうけど身体が一番いい方向でちゃんと治るなら…… きっとこの先も頑張れると思う!


「誠君の場合もう女性器はついているから女性の適合手術なら早く終わるからね、後はお腹の血の塊を取り除いたら全て終了だから恐らく2時間も掛からない位で済むよ」


女の子になる手術って意外と早く終わるんだな……

俺の場合はもともとの作りが女の子だから早いって事か……

確か先生も負担が少なくて済むって言ってたな


「手術の日程は予約が今月は一杯なんだが、明後日の予定が一件キャンセルになってるんだよ

急で申し訳無いが、お母さんと誠君がよければ明後日に手術が出来るんだがどうかな?」

俺が母さんの顔を見ると


「はい、その日でお願いします……」


「わかりました、手術には私と形成外科、泌尿器科の先生も一緒にやることになるから話しをして予定を組んでもらうようにするよ」


そうかぁ…… 手術って一人でやるんじゃないんだな

沢山の人の力を借りて俺は女の子になるのか

なんか申し訳無く思ってしまう


「では明後日手術になりますのでよろしくお願いします、今日来られていないご家族の方にもお伝えしてください

じゃあ誠君、明後日頑張ろうね」


「はい先生、よろしくお願いします」





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





翌日、両親と俺は手術の説明を聞いて承諾書にサインした

明日はいよいよ手術だ

俺の男の子としての生活が終わる……

学校も嫌だったし、いじめもあった良いことなんかなかったな……


女の子になったら生まれ変わったつもりで今まで面倒でしてこなかった事をチャレンジしてやってみよう……


そう心の中で決意し手術をむかえた……












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