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本当の俺は   作者: i
10/13

第10話 【中西先生の娘】

この間はなんだか変な話をされちゃったよなぁ……


俺はリビングでテレビをつけて、今日もあの日の学院の出来事を考えていた……


学院のモデル生徒か……

頼られるのは悪い気はしなかったけど、そんな大役、俺に出来るのか?

いや…… その前にそもそも何で俺なんだっ!?

美人な学生なんて探せばいくらでもいるじゃん!!


人から頼られる嬉しさとなんで俺なのか?と言う憤りで何とも言えない感情になる……


俺はソファーの上で寝転んで、手足をバタつかせて気分を静めた


最近毎日同じ事考えてるな……いい加減考えるのも疲れた……

はぁ…… 3月も今日で14日目だし、俺の入学式まで2週間ちょっとか……

俺以外にいい生徒が見つかる事を祈ろう……

どうか俺のモデル生徒の話が無くなりますように……


こんな事をソファーの上で考えていると突然……


“プルルル、プルルル、プルルル、……”


電話がなって、俺はドキッとした


今日は父さんも母さんも仕事で居ないし、忠志も春休みで友達と遊びに行くって少し前に出ていったから居ない……

俺が出るしかないのか……


俺は嫌々カウンターに置いてある電話器まで行き、受話器を持った……


“ピッ”


「はい、稲垣です」

電話に出てみると、何も聴こえてこない……


「あの…… どちら様ですか?」

すると、知っている声が向こうから返ってきた


「もしもし?成実?母さんだけど…… 」

電話のディスプレイを見ると、“陽子”と母さんの名前が出ている


電話出る前に確認しとけば良かった……


「あ…… ごめん、母さんか、どうしたの?」


「ちょっと話があって電話したんだけど

成実、中西先生の娘さんの話覚えてる?」


確か俺と同じ学院に通う事になってる娘さんだよな?

名前は知らないけど……


「うん覚えてるよ、それがどうかしたの?」


「その娘さんなんだけど、今、母さんの店に来てるのよ」


「そうなんだ、それで?」


「それで?じゃないでしょ!わざわざ娘さん家の場所聞きに来てくれたのよ!」


「えっ?だって中西先生は自宅に連絡するって言ってたよ?」


「連絡は来たわよ、自宅は留守にする事が多いから母さんの電話に連絡くれるようにお願いしたのよ

家の場所、教えてもなかなか1人じゃ行きにくいと思って、中西さんの自宅が母さんの店に近いからここで会ってみたら?って提案したのよ

先生の娘さんにはここで待ってもらうから、成実はすぐに母さんの店に来なさいね」


「え~っ! そんな急に言われても……! それに俺、母さんの店何処にあるか知らないし……」


「場所は電話器が置いてあるカウンターの1番左端に書類の入ったケースがあるでしょ?その中に、母さんの店の地図が載ったチラシがあるからそれ見て来て頂戴」


「うーん、わかったよ、これから行くよ……」


「あんまり待たせないようにね、それじゃ、お願いね」

そう言い終ると母さんの電話は切れた


はぁ…… 俺の女の子の生活の手伝いをしてくれるのは有り難いけど、俺の知らないところで勝手に決めないでほしいよ……


それにしても、まさか1人で外に出る事になるとは考えもしなかったな……

女の子になってから1人で外に出た事ないのに、いきなり来てくれって……

母さんも厳しい事言うよな……

でも行くって返事しちゃったし、中西先生の娘さんも待たせる訳にもいかないよな……


俺はカウンターの1番左端にあった書類ケースを開けて、母さんの店のチラシを探した


あった、チラシって言うかパンフレットみたいだな


カウンターにパンフレットを置いて表を見てみると“雑貨屋ジェメリー”と書いてある

中には店で扱っている商品の写真が載っていて、裏面に店のアドレスと地図が載っていた


関外(かんがい)マリンモール商店街か……

母さんの店ってそんなに遠くないんだな

関外駅の西側の商店街の東側の入口の近くだな


電車で行けば1駅で着くけど、人目も気になるし、お金もあんまりないし……


仕方ない…… 歩いていくか……


俺は昔から使っている2つ折りのカーキ色の財布と、母さんが買ってきた無地でライトブルーのトートバッグを自分の部屋へ取りに行き、外に出る準備をする


玄関まで降り、姿見で身なりを少し整えてから自宅を出た……




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




野比山の坂を下って、人通りの多い、県道の歩道をマリンモールに向かって歩く


女の子になってから1人で出歩くのは初めてだから、どうも気持ちが落ち着かない……


俺は自然とはや歩きで歩いていた


それにしても、なんだか若い人がよく目に付く

この中で性別が変わった人間なんて、きっと俺だけだろうな……


俺は周りの人から見てどんな風に見えてるんだろ?


そんな事を考えて暫く歩いていると、歩道ですれ違う人となんだか目線がよく合う事に気付いた


目が合った途端に、みんな慌てて目を反らす……


何なんだ? そんなに俺は変に見えるのか?


俺は立ち止まり、ビルのガラス越しに映った自分の姿を確認してみた


足元は、白基調のピンクのラインが入ったスニーカー

服装は、膝上丈のスカートの部分に、腰から膝下までレース生地が巻いてある白い半袖のレイヤードワンピースで、それにモスグリーンの7分袖のカーディガンを合わせて着ている

毎朝、母さんに見立て貰って着ているから問題ないと思うけど……

となると、変に見えるのは顔か髪型か……

眼鏡を掛けて目立たない様にして顔を隠しているけど、顔立ちは普通だよな?

となると…… やっぱり髪型かな?

毎日綺麗に整えて貰ってるけど、伸びっぱなしだしな……

やっぱり変に見えるのかも……


ガラス越しに映った自分の髪が風に吹かれてサラサラと揺らめく


やっぱり髪型だな、こんなに長くなってるし……

学校通う前に、ちゃんと整えて貰わなきゃいけないな……

やっぱり女の子って身だしなみはキチンとしてないと変に見られちゃうんだな……

人に見られるのも嫌だし、母さんの店に行ったら美容院にいつ行けるか聞いてみよう……


俺は出来るだけ目が合わないように気を付けながら、母さんの店に向かった




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




はぁ…… なんだか人目が気になって疲れちゃったよ……

なんとかマリンモールにたどり着けて良かった……


俺はマリンモール商店街の東側の入口で、母さんの店の名前を探して辺りを見回した


確か入口近くだったよな?人が多くてなかなか店の名前が見えないや……


人が切れるのを待ってもう1度モールの方を見ると、左側の細い路地がある角に母さんの店の名前が見えた


俺は人を縫って母さんの店に歩いて行った


「母さん毎日ここで仕事してるのか……

人通りも多いし、忙しいんだろうな」


店はブラウンの外壁で、入口の廻りがホワイトになっていて落ち着いた雰囲気がある

綺麗な建物で大きくはないけど人目を引く佇まいだ


なんとかここまで着けて良かった……

急な事で始めは1人で外出るの嫌だったけど、ここに来れた事が自信になったし、母さんの店の場所も覚える事が出来たから結果的に1人で来て正解だった


さてと…… 緊張するけど待たせちゃ悪いし早く母さんところ行かないと……


俺は緊張をほぐすのに深呼吸をして息を整え店の中に入って行った



店舗に入るとなんかいい香りがする……

外と空気感が全然違うな、なんだか凄く落ち着く……


目の前の“おすすめアイテムコーナー”と書いてある所から香ってるみたいだ


コーナーに近付いて香りの元を探してみる……


これだ、アロマデフューザーだって……

ラベンダーの香り実演中って書いてある……

いい香りだな、世の中にはこんなステキアイテムがあるんだな!

他にも色々なアロマオイルがあるみたい

他の香りもなんだか体験したくなっちゃうよ


俺がこの1画でウロウロしていると……


「こんにちは、他にも色々ありますのでどうぞ店の中もご覧になってください」


「あっ…… すみません…… わ…… たし、お客じゃなくて……

あの…… 母がこちらで仕事をしているみたいで……」


「あ、もしかして店長の娘さんですか?」


「は…… はい!」


「確か待ち合わせでしたね、奥に店長いますから案内しますね」


「あ…… ありがとうございます!」


なんだか可愛いらしい店員さんだな……


ショートボブの髪型に整った顔立ち、垂れ目が印象的で、白いブラウスに動きやすそうなデニムのパンツ姿が良く似合っている


店員さんに案内され、レジ横の部屋の前に着いた


“コンコン”


ドアを開けると母さんと女の子がテーブル越しに向かい合って座っている


「店長~、娘さんがみえましたよ」


「あら、美紀(みき)ちゃん案内してくれてありがとう

私も少ししたら店に戻るから、後ちょっとだけ1人で店番頼めるかしら?」


「いいですよ、この時間帯はお客さんも少ないですから」

そう言って店員の美紀さんは店に戻った


「思ったより着くの早かったわね、ここの場所はすぐ判った?」


「うん、パンフレット見て来たし、すぐに判ったよ、意外と近かったし」


はや歩きで来ちゃったから早く着いただけなんだけどね……


「あっそうそう、この子が中西先生の娘さんよ」

そう母さん言うと、女の子は立ち上がって俺の前まで歩いて来た


「こんにちは!中西歩美(なかにしあゆみ)です!」


俺よりも頭1個分位背が高く、細身の身体に目鼻立ちの良い顔立ち、中西先生に似ていて目がとっても優しい

ロングの黒髪を後ろでお団子にして青いリボンで留めている

デニム生地のロングワンピースで高い身長が際立っている

とても元気で和服が似合いそうな女の子だ


「稲垣成実です、はじめまして……」


「ふふっ!やっぱり稲垣君だね!見た目が変わっても真面目な所は変わってないよね!」


「えっ? そっ…… そうかな?」


「そうよ! クラス違ったけど会話も少しした事あるのに、改まって挨拶するところが稲垣君っぽいなって!」


「は…… 話した事あったっけ?」


全然覚えてないや…… 中学の時なんかまともに人の顔なんか見てなかったし、どうでも良かったから……

仲が良かった奴以外は、名前もうる覚えだし、俺が覚えてるわけないよな……

身体が不調だったとは言え、だいぶ失礼な事してたよ……


「覚えてないかな?稲垣君、生徒会の書記1回だけ頼まれて来てくれた時あったでしょ?

あの時、少しだけ会話したんだよ?

私、生徒会長だったんだけど、その時も改まって挨拶してくれたし、同い年なのに律儀で真面目な人だなって……

稲垣君って、いつも黙ってクールな感じで話掛けづらかったけど、髪の色とか見た目も目立ってたから私はずっと覚えてたよ」


中西って生徒会長だったんだ……

まったく覚えてないや……

それにしても、俺ってそんなに目立ってたのか……

毎日気分がのらなかったのもあるけど、わざと目立たないように黙ってたのにな

やっぱり俺の見た目って目立つみたいだな……


「そうだったんたね、ごめん…… 」


「いいよ、身体の事情があったんだし、これから私の事知ってもらえればいいから」


「ありがとう、そうだね!」


身体の事あんまり知られたくなかったけど、中西みたいな優しい子なら上手く付き合っていけそうだ

家族以外で事情を知ってる人間がいるって案外心強いかも


「なかなか気が合いそうね、それじゃ母さん仕事に戻るから、歩美さん、成実の事宜しくね

ここの休憩室、特別に暫く使って貰っていいからゆっくり話して頂戴ね」

そう言って母さんは休憩室を出ていった


「ねぇ、立って話すのもなんだし、そっち座らない?」


「そうだね……」

そう言って俺と中西は椅子に腰掛ける


それにしても中西って美人だな、和風美人って言葉がピッタリだ

俺とほとんど接点がなかったのに、元生徒会長が俺の手伝いをしてくれるなんて、縁って言うのは不思議だよな


テーブル越しに中西を見ると俺を見ながらニコニコしている


「稲垣君って取っ付きにくい印象だったけど話すと素直でなんだか可愛いいよね!」


「俺ってそんな印象だったの?取っ付きにくいって……」


「あっ! 今、俺って言ったね?おばさまが言ってた通りだ!

言葉使いは直さなきゃ駄目だよ、ねっ?成実ちゃん?」


中西笑って言ってるけど目が全然笑ってない……


「なっ…… なんだよ、急に……」


「おばさまにまずは“言葉使いを直させて”ってさっき頼まれたんだ、私は今日から成実ちゃんの教育係だから、間違えはどんどん注意するからね」


「間違えって…… 俺そんなに言葉使い悪い?」


「あっ!また!“俺”なんて女の子は使わないよ?」


「…… じゃなんて言うの?僕の方がいい?」


「成実ちゃんが僕っ子になりたいならそれも面白そうだしいいけど」


面白いって…… 何が面白いのか全然解んないんだけど……

“俺”だから“僕”でも変じゃないと思うし

“わたし”は普通の会話の時に使うとなんだか凄く女の子っぽい感じで抵抗あるしなぁ

どうしよう……


「良く解んないけど、“僕”か“わたし”ならいい?」


「いいと思うよ、その場の雰囲気で使い分けたらいいんじゃないかな?」


なんか笑ってるけど、まぁいいか……

別に変な事言ってないし


「あと名前なんだけど、お互い下の名前で呼ばない?」


「下の名前で? なんか抵抗あるなぁ

それになんだか女の子みたいじゃん…… 」


「ほんとにまだ自覚がないんだね、成実ちゃんもう女の子でしょ?

下の名前で呼ぶのは仲が良い女子にとって当たり前なんだよ?」


そうだった…… 俺、女の子なんだ……

それが女の子の礼儀ならちゃんと覚えないといけないな


「わかったよ、それじゃ…… 歩美でいいかな?」


「そうだね、良い感じ!」


ふぅ…… 女の子って変なところにこだわるんだな……

呼び方まで直されるとは思わなかった……

それにしても、男と違って言葉も、服装も、髪型も、全身気を使わなきゃいけないし、俺ちゃんとやっていけるのかな?


そう言えば俺、ここに来る途中に知らない人と結構目が合って変んな目で見られてたんだよな?

髪型どう直したらいいか、歩美に聞いてみようかな?


「あのさ歩美、わ…… わたしって髪型とか変じゃないかな?」


「えっ?全然普通だよ?」


「ここに来る途中に知らない人と目が合ってさ

色々考えたんだけど、伸びっぱなしの髪型がいけなくて変に見られたのかな?って……」

それを聞いた歩美は俺を見て、またニコニコしている


なんなんだ?


「それ髪型が理由じゃないよね、成実ちゃんって、私から見てもすっごい美人だし、独特のオーラが出てる感じだからみんな見ずにはいられなかったんじゃない?」


なに言ってるんだ?

それって俺が美人だったから見てたって事?


「べ…… 別に美人でもなんでもないのに……

なんか納得できないよ」


「納得出来る出来ないは関係無いよ

ほんと真面目って言うか、成実は頭堅いよね

美人だから美人なの!理屈じゃないのよ

天性の素質ってやつだよね!」


頭堅くないし、ただ理由が知りたかっただけなのに

それにやっぱり髪も伸びたままだから問題あると思うし、早いうちに美容院に行って整えて貰わなきゃな……


「ねえ、歩美はどこで髪の毛切って貰ってるの?

わたしも早いうちに切りたいと思ってるんだけど、母さんも仕事で忙しそうだから、なかなか行けなくてさ

どこかいいとこあるかな?」


「私は親戚が近くで美容室やってるからそこで毎回やってもらってるよ

凄く上手くやってくれるから成実も行ってみる?」


「そうだね…… 母さんに聞いてみてからだけど……」


「おばさまには私が話しといてあげるから問題ないよ!

親戚の所なら自由も利くし、成実に似合う髪型にしてくれるよ!」

歩美は携帯電話を取り出して早速誰かに連絡してる


勝手に話が進んでくな……

母さんといい、歩美といい、少し強引だよ

意見くらい聞いてくれてもいいのに


「良かったね成実!明日なら空いてるってさ、時間は15時位に来てくれればいいって!」


「そうなの?でも急すぎるよね?わたしまだ行くって言ってないけど……」


「細かい事は気にしないの!どうせ行くつもりなら明日も明後日も同じなんだし」


「そうだけどさ……」


「じゃ私、おばさまに許可取ってくるね!」


「えっ!今聞きに行くの!?母さん仕事だし邪魔になるよ!」

歩美はそう言うと立ち上がり、休憩室を出て行った


俺の話、全然聞いてないし……

よくあれで生徒会長勤まってたよな……

あ~、なんか調子狂う、行動も早すぎだよ……

仕方ない……

俺の事だから俺も母さんとこ行って話して来ないとな


俺は立ち上がり母さんの所へ向かった



休憩室を出ると、店の真ん中辺りで母さんと歩美が話をしているのが見える

俺は少し小走りで2人の居るところへ行った


「あら成実、良かったわね、歩美さんが美容院に連れてってくれるんだって?」


「そうなんだけど、歩美が勝手に決めちゃって……」


「いいじゃない、行って来なさい、2人で決めたなら母さんは文句ないわよ?

それに母さん仕事もあるからいつ行けるか判らないし、歩美さんと一緒ならどこでも行ってきていいわよ?」


勝手に決めちゃったのにいいみたいだな……

歩美が一緒ならどこ行ってもいいとか言ってたけど心配じゃないのか?

母さんも歩美に今日初めて会ったのに信頼しすぎじゃないか?


「わかったよ、それじゃ明日行ってくるよ……」


「ねっ?大丈夫だったでしょ?」


妙に誇らしげなのが少し腹が立つな……

歩美のペースで物事進めたら疲れちゃうよ

でも美容院も行ける事になったし、そこは感謝しないとな


「歩美さんは頼りになるわね、おばさんも安心だわ

成実もこう言う所は見習わなきゃね」


「うぅ……」


「成実はお父さんに似て理屈っぽいからね

頭で考えるのも良いけど、行動も早く出来るようにならないとね」


「はい……」


「歩美さん、成実の事、頼んだわね」



「はい!」


「それじゃ、母さんはこれで仕事に戻るから、2人とも仲良くやってね」

そう言うと母さんはレジの方へ歩いて行った


「じゃあ、そう言う事で明日、美容院ね

待ち合わせどうする?」


「えっと……」

俺が悩んでいると


「それじゃ私、成実の家行ってあげるよ!これからお邪魔する事も多くなるかもしれないから1度行っておきたいし、良いよね?」


「わかった、それでいいよ」


「よし!じゃあ予定も決まった事だし、言葉の練習も兼ねて少し外で散歩しようよ!」


「歩美って元気過ぎるよ……」

そう言って俺と歩美は店を出ようとした


「あっ、2人とも!ちょっと待って!」

母さんが俺達の所に小走りでやって来た


「どうしたの?母さん?」


「2人にこれあげようと思って」

そう言うと、手に持っていたブレスレットを

俺と歩美にそれぞれ渡した


「何、これ石?」


「そうよ、パワーストーンのブレスレットなのよ

2人が仲良くやっていけるようにと思って準備しておいたのよ」


「成実のはラピスラズリの石のブレスレットで、歩美さんのはロードナイトって石よ

素敵でしょ?」


「凄い綺麗!おばさま、ほんとに頂いちゃっていいんですか?!」

歩美は赤いブレスレットを見て凄く喜んでいる


「いいのよ、そのつもりで準備していたものだから」


女の子ってこう言う小物好きだよな

俺も友達と同じもの持つの初めてだから、ちょっと恥ずかしいけど嬉しいな

ラピスラズリか…… 青くて幻想的だな


「母さん、ありがとう、大事にするよ」


「今日はホワイトデーだしプレゼントには丁度良い日だったわね」


「ほんとだ!すご~い!全然気付かなかった!ホワイトデーに成実と友達になるなんて運命感じちゃう!ねっ?成実?」


「た…… たまたまでしょ?」


「成実はやっぱりクールだね…… こう言う時は素直に喜べばいいの!」


「喜んでるし!」


なんかこう言う感覚って初めてだ……

女の子の友達って一緒にいるとうるさいけどなんか楽しいな

女の子になって大変な事も多いけど歩美がいれば頑張れる気がする……


俺と歩美は暫くその場で話をした後、店を出て、日が沈むまで会話を楽しんだ……

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