表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/33

第6話『お父様』

「いったい何を考えている!! 大切な魔王就任の挨拶を途中で投げ出すとは!! どういう事か説明しなさい!!」


 ひどくお冠の父親にイスティアも事情を必死に説明するが、もちろんそんなワガママを認めてくれるはずもなく……。


「いかん、いかん、いかあああんぞ!! ついにベルモア家が魔界を牛耳ようというこの時になって、何故今さらそんなくだらない事を言い出す!!」

「くだらなくなんてないわ!!」

「くだらぬわ!! 第一だ!! そんなに人間界に行きたいのなら、お前が魔界を統べる魔王となり、軍勢を率いて好きなだけ行けばよかろう!!」

「別に私は戦いをしにいきたいわけじゃないの!! 戦争なんてめんどくさいものゴメンだわ!!」 

「な、なんと!! 嘆かわしい!! わしはお前をそんな軟弱者に育てた覚えはないぞ!!」

「私がどう生きようと私の勝手でしょ!! ほっといてよ!!」


 魔王となるはずだった娘と、魔王の父親になるはずだった男の言い争い。

 二人の主張は平行線のままで決着がつきそうにもない。


「全くなんて強情な娘なんだ!! こうなっては仕方があるまい、実力行使といこう!!」


 イスティアの父親はその巨躯をさらに隆起させ、娘の前に立ちはだかる。


「どうしても人間界へ行きたいという言うのなら、この父を倒してみろ!! イスティアよ!!」

「えいっ」


――ドカーン。


 イスティアのパンチ一発で、屋敷の天井に穴を空けて飛んでいく彼女の父親。

 彼はそのまま山三つ越えたはるか向こうまで飛んでいく。


「ああ、お嬢さま!! 旦那様になんて事を!!」


 爺やがその光景に慌てるが、イスティアは気にしない。


「いいのよ、お父様は頑丈さだけが取り柄よ。あのぐらい、どうってことないわ。それに私が赤ん坊の頃、お父様の顎に会心の一撃を入れてた時も『この子は素質がある!!』と喜んでたそうだから、今もきっと娘の成長を喜んでくれてるはずよ」

「それとこれとは話が別なような……」

「とにかく、これでしばらくお父様は帰ってこれないわ。さっさと荷物まとめて出発しないと」


 などと言っていると今度は別の悪魔がイスティアの前に現れる。


「お母様……」


 それは彼女の母親だった。

 そしてどうやら空中を飛んでいく旦那の姿も見ていたらしい。

 やって来て早々に彼女は言う。


「まったく自分の父親を山三つ向こうへ軽々と殴り飛ばすとは、我が娘ながらなんて……、なんて……、なんて素晴らしいのかしら!!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ