第3話『魔王選抜総選挙』
投票によって魔王を決める『魔王選抜総選挙』、その結果発表の日。
発表が行われる会場には大勢の魔物達が集結していた。
悪魔のみならずオークからドラゴンまで、様々な種、一族の代表が参加しており、舞台上には溢れんばかりに魔物達が立ち並んでいる。
その中から魔王になれるのは1位を取った者のみ。
投票結果は10位から順に発表されていった。
司会役の悪魔が該当者の名を読み上げる度に、客席も盛り上がる。
やれうちの者は誰よりは上だ、なんだと、好き勝手に言い合い、殴り合いの喧嘩もちらほら発生する始末。
なかなかのヒートアップっぷりを見せる客席だったが、誰一人と自分達の候補者が1位になれなかった事を悔しがる者はいない。
それもそのはず。
彼らの関心は自分達の代表が気に食わない種族や一族よりも上かどうかであり、端から1位など諦めていたのだ。
何故か。
それは誰もがこの投票が『ベルモア』と『ロラゼール』の一騎打ちになるであろう事を承知していたからだ。
長らくライバル関係にあるこの二族の代表者は、共に、魔王たるに十分すぎるほどの力を持っていた。
シルヴィ・ロラゼール。
ロラゼール家の高慢なこの女悪魔は、歴代の魔王と比べても遜色ないほどの強力な力をもっており、通常ならば彼女が選ばれても文句を言える者はいないだろう。
しかし、今回は相手が悪すぎた。
「第二位!! ロラゼール家のシルヴィ嬢!!」
司会の悪魔がその名を告げた時、悔しがる当人はともかく、客席のロラゼール派の中には、諦めにも近い空気が漂っていた。
「ああ、あいつで決まりか」
「やっぱりな」
「仕方ねぇよ、今回ばかりは」
因縁のライバル達をもこのような態度にさせてしまう相手とは……。
「そして栄えある第一位は!!」
発表と同時に、小悪魔達が手に持つスポットライトをその者へとあてる。
そこに立っていたのは。
「ベルモア家のイスティア嬢です!!」
イスティアだった。




