第25話『大変だ』
男がもたらした突然の魔物襲来の知らせに村人達は大慌て。
「魔物って、何が出たんだ!!」
「オークだ!!」
「オークなんて俺がぶちのめしてやるぜ!!」
「馬鹿言え、すげぇ数なんだよ!! とてもじゃないが相手に出来るような数じゃねぇ!!」
「ロバルの街が魔物に襲われて壊滅したって聞いたけど、まさかそいつらがこっちにも流れてきたんじゃ!!」
「ちくしょう、祭りは中止だ!! はやく逃げねぇと!!」
「決まり通り裏山に避難だ!!」
「急げ、急げ!!」
テーブルの料理も食い散らかしたままに、村の裏山へと人々は逃げ出していく。
そんな人々の中にあって、イスティアだけはいつも通りの平常心であった。
――オークの群れ程度でこの慌てようかぁ……。人間は大変だなぁ。
慌てふためく村人達を舞台上からぼうっと眺めていると彼女の腕を掴み引っ張っる者がいる。
「イスティア!! 俺たちも逃げなきゃ!!」
それはイスティアの花婿に選ばれたリューク。
彼は己の花嫁が途惑い動けなくなっていると勘違いしていたのだ。
もちろん彼女の秘めたる戦闘力からすれば、オーク如きから逃げる必要などまったくないのだが、人間として潜み生活していくのなら、ここで勝手な単独行動をするわけにもいかなかった。
そのまま引っ張られるようにしてリュークと共にイスティアも裏山へと避難する。
そして、裏山へと避難した村人達が不安がったり、すすり泣いたり、神に祈ったりする中、誰かが思い出したかのように言った。
「ああ!! そういやミレアとエリックがまだ来てないぞ!!」
「本当だ!! あいつら試練の為に村はずれの池まで行ったままだ!!」
「まずいぞ!! 知らせにいかなきゃ!!」
「ダメだ!! もうオーク共はそこまで来てるんだ!! 下手に動いて見つかったらこの裏山まで来られて全滅だぞ!!」
「だけど!!」
ミレア達を助けにいくかどうかで揉め始めた丁度その時、村人の一人が叫んだ。
「ミレアとエリックだ!!」
その男が指差す方を見れば、池の方から駆けて来るミレア達の姿があった。
「よかった!! あいつらも気付いたんだ!!」
しかし村人達のその喜びは長く続かなかった。
「おい、様子が変だぞ!!」
「なんであっちの方に!!」
「大変だ、あいつら道を完全に間違えてるぞ!!」
ミレア達の逃げる方向が裏山への道からずれてしまっていたのだ。
「いいや、違う!!」
その原因を察した男がいち早く叫ぶ。
「あいつらもうオーク達に見つかっちまったんだ!! 見ろ!!」
ミレア達が逃げる反対方向から追いかけるオーク達の姿が見えた。
「なんて事だ、これじゃああいつらもう……」
オークに見つかってしまったミレア達はもう村の皆がいる裏山に逃げる事は出来ない。
そんな事をすれば、ここにいる村人達も巻き添えにしてしまうからだ。
ミレア達は絶体絶命の危機に陥っていた。




