表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/33

第1話『ドラゴンを素手で屠る者』

 漆黒をまとうドラゴンが咆哮し、その大きな口より黒き熱線を吐き出す。

 熱線が向かう先にいた悪魔の女は背中についた羽をひらき大地を蹴り、宙へと逃げた。


 誰もいない場所へと黒き熱線は直撃する。


――ドカーン。


 女がもといた場所に大穴が空く。


「……いちおう警戒して避けてみたけど、この程度ならわざわざ避けなくてもよかったか」


 熱線の大爆発とそれによって出来た大穴を空から眺めながら、涼しい顔で悪魔の女は言った。

 そんな彼女の余裕の様子にドラゴンは腹を立て、再び熱線を放つ。


――ドカーン。


 今度こそ熱線は命中。

 それを見たドラゴンがざまぁみろとばかりに吼えている。


 しかし……。


 爆煙が晴れ、中から傷一つ付いていない悪魔の女が姿を見せると、ドラゴンの邪悪な笑みは一瞬にして消えてしまった。

 彼女は片手でドラゴンの攻撃を簡単に防いでしまったのだ。


「やっぱり、たいした事ない」


 熱線を受け止めた己の掌を見ながら、呑気にそう呟いた後、悪魔はドラゴンへと向かって滑空する。

 そして、そのまま素手で巨大な怪物の顔面を殴りつけた。


 すると、そのわずか一発だけの攻撃でドラゴンは地に倒れ伏し絶命してしまう。


 暗黒竜の亡骸の傍らに立ち、彼女は独り呟く。


「準備運動もなしに、ちょっと本気出しすぎたわね」


 竜を素手で殴りつけた悪魔の腕があらぬ方向へと折れ曲がっていた。


 腕が折れてしまったのは、竜の堅き鱗のせいではない。

 自身が秘める力のあまりの大きさに、肉体が耐え切れなかったせいである。


 ドラゴンをも簡単に屠ってしまう悪魔。

 彼女の名はイスティア。

 連綿と続く高貴なる魔族の血『ベルモア』、その血筋において、もっとも美しく強い悪魔として、次期魔王との一族の期待を一身に負う悪魔の娘である。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ