第15話『よろしくね』
男達に案内され、連れてこられたのは人口百人に満たぬ小さな村だった。
そんな小さな村のほとんど全員が集められて、彼らの前に立たされるイスティア。
そして彼女を、村の偉いさんがなんやかんやと説明した後で紹介する。
「……というわけでじゃ、こちらのイスティアさんがこの村で暮らしていく事になったでの。みんなよろしく頼む。それじゃあ、彼女に一言挨拶でもしてもらおうかの?」
「イスティアです。よろしく」
簡単な挨拶をして、ぺこりと頭を下げるイスティア。
挨拶といえど下等な人間、それもただの村人達に高貴なるベルモアの悪魔が頭を下げるなど、イスティアの父親が見たらさぞ怒る事だろう。
だが、イスティアはイスティアであって、彼女の父親ではない。
彼女は人間に挨拶程度で頭を下げる事に、抵抗など別にありはしなかった。
イスティアに対する村人達の反応は様々であった。
突然やって来たヨソ者に懐疑的な視線を送る者もいれば、熱心に拍手をして歓迎の意を示す者もいた。
歓迎してくれているのは主に女不足のせいであぶれた独身男性人。
そして、ミレアという名の少女であった。
「ミレアよ。お前さんの家でしばらく面倒見てもらう事になったでの、仲良くしてやってくれ」
老人の言葉に少しばかり驚いた後、ミレアは嬉しそうに頷く。
「そうじゃのう、長旅でお疲れのようじゃし、まずはこの村自慢のあそこでさっぱりしてもらうとするかの。ミレア、連れてっておやりなさい」
「は~い」
そしてイスティアの前にやってくると少女は手を差し出して言う。
「私、ミレア。これからよろしくね、イスティアさん」
素直にその手を握り返す悪魔の娘。
「イスティアでいいわよ」
「そっか。じゃあ私の事もミレアって呼んでね」
「ええ、よろしく」
「それじゃあついて来て。この村一番の場所を紹介するから!! きっとイスティアも気に入るわ!!」
そう言われミレアに連れてこられた先にあったもの。
それは湯気立つ大きな温泉であった。




