第13話『お誘い』
「いいわよ」
人間の男達からの村への誘いに、イスティアは二つ返事で了承する。
理由は単純、面白そうだから。
危険はあまり考慮する必要もないだろう。
万が一正体がばれて悪魔嫌いの人間達に襲われそうになったところで、そんじょそこらの奴らではイスティアに傷一つつけれはしない。
わくわく気分で誘いに乗っかる悪魔の娘に、二人組みの男は言う。
「そうか、そうか。ただなぁ、これだけはわかって欲しいんだが、俺達の村も余裕があるわけじゃねぇ、何も出来ないヨソ者を無条件で受け入れるってわけにもいかねぇ」
魔界で育ったイスティアは人間界の事についてあまり詳しいわけではない。
具体的に村人達が何をイスティアに求めているかが、彼女にはわからなかった。
「条件? 何をすればいいの?」
「いや、特別難しい事をしろってわけじゃねぇんだ。普通に牛の世話だ、畑仕事だなんだを手伝ってくれたらいい。わからない事がありゃその都度教えよう」
教えてくれるのは助かるな。
などと、考えながら男の話を聞いていると、少々言いづらそうに彼は言葉を続ける。
「そういった事とは別に、なんつうか……。実はな、少し前に流行り病が俺達の村であって、結構死人がでちまってな」
人間の体は悪魔と違い非常に軟弱だ。
病気の一つ、二つでころころと死んでしまうという。
「しかも女共ばかり、ぽっくり逝っちまって。おかげで村の男共があぶれちまってなぁ……」
男達の村は数年前に発生した流行り病のせいで女性の人口が激減。
独身男があふれるむさ苦しい村へと変貌してしまっていた。
つまり、そんな村で暮らす彼らが言いたい事、それは……。
「すぐにとは言わねぇよ。けど、ちょっとして落ち着いたら、早いとこ村の男の誰かしらと一緒になって欲しいのよ」




