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第8話 目の良い傍観者

 そういう訳?で俺とルーファス、アンバーの3人で森へ剣の材料確保に出掛ける事になった。


 町と草原の境は川で出来た自然の堀があり橋が架けられている。


 その橋には大きくはないが馬車位なら通れる門があり見張りの兵?みたいな人が2人いる。


「あ、ルーファスさん!

 アンバーと、もしかしてその子はジェイクかい?」

 見張り兵の1人が親しげに話しかけてくる。


「よう、クライヴ、パッド。

 今週はお前さん達が見張り番か?

 こいつが俺の息子のジェイクだ。宜しくな」


 声をかけてきた方がクライヴさんか。


「初めまして、ジェイクです。宜しくお願いします」


「お! お父さんの言う通り頭の良さそうな子だ。

 こちらこそ宜しくな」

 こっちがパッドさん。


「見張り当番お疲れ様です」


「アンバー。相変わらず礼儀正しいな」


 アンバーはツンデレだけど言葉使いはしっかりしてるから大人には受けがいいんだな。


「それで、何処かお出かけですか?」


「おう、ちょっと森まで。

 今日からジェイク(こいつ)に剣技と魔術を教えるんで剣の材料調達にな」


「そうでしたか。まあルーファスさんが一緒に行くならまったく問題無いでしょ。

 気をつけて行ってらっしゃい!」


 クライヴさんとパッドさんに手を振り草原へと出た。


 辺り一面の草原が目の前に広がる。


 つーかこの広い草原も元は森だったのをルーファスの魔術で切り開いたんだよな。

 どんだけの魔力だよ。


「ところでジェイクはいくつなの?」


「あ、昨日で4歳になりました」


「ふ、ふーん。4歳にしては中々しっかりしてるわね。

 ま、まあ、私が4歳の時の方がしっかりしてたけど」


「あれ?そうだったっけ?

 アンバーが4歳の時はようやく立っち出来て、あーあー言ってた位じゃなかったっけか?」


「きょ、教授!そ、それは、あ、あまり早い成長を見せちゃうと逆に周りを心配させちゃうんじゃないかと、わわ私なりに小さいながらに気を使ってたからで」


 アンバーはホント面白いな。


「でも、まあ、5歳ん時には普通に喋れてたし6歳の今では3種類とは言え魔術も使えるし、やっぱ大したもんだよ」


「っ!?、んッふー!」

 アンバーがスゴい得意げな鼻息吐き出した。

 嬉しそうだ。


「聞いた?ジェイク!スゴいでしょ!」

 また斜め上からドヤった目線で見てくる。


 面白いついでに少しからかってみるか。


「ホントアンバー先輩はスゴいです!

 僕なんか金属色角メタリックホーンが生えててもまだ魔術使えないですからね」


「?、確かにジェイクの角、私達と色が違うわね。

 さっきから気にはなってたけど私達の黒い角と違って何かキラキラしてるわよね」


「あ、気付きました?金属色角メタリックホーンって言って他の人より魔量が多いみたいなんですよ〜。何つーんスかね?選ばれし民っつーんスか」


「っ!?」

 ゴズン!と岩が降ってきたかの様な衝撃が頭を走る!

「 って〜!」

 あまりの衝撃に目から星出た!


 ハッと見上げるとルーファスが拳握り締め立っていた。


 殴ったね?親にも殴られた事ないのに!

 ってルーファス親か!?


 それより


「何するんですか!?」


「何するんですか?じゃねーよ。

 お前こそ何してんだよ」


「はぁ?何って?金属色角メタリックホーンの話ですよ」


「お前、自分の努力で金属色角メタリックホーン生えた訳じゃねーだろ。

 確かに金属色角メタリックホーンは稀だしお前の持って生まれた才能だろう。

 だがな、魔術を一生懸命勉強して同じ歳位の子達より努力してるアンバーに自分の努力の結晶でも無い金属色角メタリックホーンを自慢してやり返そうなんざ男のする事じゃねーつってんだよ」


「だったらそう言えばいいでしょ。

 何も殴らなくてもいいでしょ」


「アンバーだってさっき調子に乗ってメリッサにはたかれてたろ。

 だがアンバーは文句1つ言わなかった。

 それに比べお前は自分が恥ずかしい事して怒られたら逆にキレるとは情けねーにも程があるぞ」


「……………」



 チクショウ…。

 確かに返す言葉が無い。


 俺は冗談でアンバーをからかっただけですとでも言うか?

 間違ったらすぐ手をあげるなんて教育としてどうなんですかねとでも問いただすか?


 いや全て言い訳だし屁理屈だ。


 冷静に振り返れば6歳の女の子相手に我ながら情け無い真似した。

 その上、叱ってくれたルーファスに逆ギレするなんて恥ずかしい真似も。


「…ごめんなさい」

 ここは俺が悪かった。素直に謝ろう。


「俺じゃなくてアンバーにごめんなさいだろ」


「アンバー、ごめんなさい」


「え?あ、えーと、私はだ、大丈夫よ。

 それより頭大丈夫?」


 こんな情け無い俺を許すどころか俺の心配までしてくれるアンバー。


 惚れてまうやろー!!


 いや、ただシチュエーション的に言ってみただけで他意は無いです。


「うん。大丈夫。ありがとう」


「う、うん。どどういたしまして」


「よし!みんな仲直りしたところで出発!」


 それにしてもルーファスめ、間違ってるから殴られるのは仕方ないけど手加減っつーもの知らんのかな?

 馬鹿力め。


「ねぇ、ジェイク。ところでその金属色角メタリックホーンって何なの?」


「あ、ああ。これ?」

 そう言いながら俺は俺の頭に生えたまだ短い角を突っつきながらルーファスを見る。


「別にアンバーから聞いてんだから話してやればいいんじゃねーか」

 ルーファスももう起こってないみたいだ。


「さっき父様が言ってた通り、僕達魔族の中でも珍しい角みたいで普通の角の人より魔量が多いんだって」


 へぇ〜と言わんばかりにアンバーが俺の角を見る。


「だけど僕はまだ魔術も使えないしホントに魔量が多いかどうかも正直分からないんです」


「そうなんだ?確かにそんな色の角初めて見たわ。触ってもいい?」

 そういうと俺が返事する前にアンバーは俺の角をツンツンと突っついた。


 大きくなってまうやろー!!

 じゃなかった、

 惚れてまうやろー!!


 ってもうこのネタいい?


「ふ〜ん、ま、でも私の才能のライバルになれるかしら。

 何しろ私、天才だから」


 うん、それでこそアンバーだ。


 ホントこの子はいい子だよぉ。


「あ、あっちから何か来る」

 俺は遠く3km位先から来る何かに気付いた。

 どうやら向こうも別に俺達を目指して来ている訳じゃなくたまたまこっちに向かって歩いているみたいだ。


「ん?何処だ?」


「何処よ?ジェイク」


「何処って、あっちにいるじゃん」

 俺は何か魔物らしき影が見える方角を指差した。



「ん〜??見えないぞ」

「私も見えない」


 そうなの?

 段々こっちに来てるじゃん。


 ルーファスとアンバーが目をしかめ遠くを見ている。


 しばらくするとルーファスは気付いた様で

「ああ、あれか?お前良くあんな遠く見えんな」


 って言ってたから俺ってば目が良いんだ。

 そういや昨日もルーファスがテラスから飛び出し100m以上先で闘ってるの手に取る様に見えたしな。


「え〜、何処ぉ?」

 アンバーはまだ見えていないみたいだ。


 向こうもまだ気付いていない。


「どうやら魔物2匹みたいだな。放っておいても良いがこのまま行かれると町の方へ行っちまうな。仕方ねぇ。退治するとするか」


「それなら私も手伝いますっ!」


「ぼ、僕も」


「ありがてぇ申し出だがどんな魔物か分からねーから、まずは俺について見てな」


 正直俺はその意見に大賛成だ。アンバーは不服そうだけど。


 段々相手との距離が近づいてくる。


「ああ、ありゃシクルインプだな。

 あれなら飛び道具や射出系魔法は使わないからアンバー、得意の魔法で射程距離に入ったらカマしてやれ」


「はいっ!任せて下さい!」


 向こうも流石にこちらに気付いた。


 気付いた途端こっちに向かって、インプ真っしぐらって感じだ。


 相手の力量とか逃げるとか考えない辺りが理性の無さか?


 身長100cm位だろうかグレーのフード付きローブに身を包み自分の体より少し大きい三日月形の鎌を振りかざしながら向かってくる。


「よし、アンバーそろそろカマしてやれ」


「はいっ!火弾ファイヤーボール!!」

 おおっ!アンバーの杖から直径20cm位の火球が飛び出した!


 火球はシクルインプの一体に見事命中し吹き飛ばした。


 もう一方は驚きはしたみたいだが変わらずこっちに向かってくる。


「アンバー、もう1発だ!」


「はいっ!火炎丸鋸ファイヤースライサー!!」

 次は火球ではなく火の円盤みたいのが射出された!


 その火の円盤は鋭く回転しながら向かってくるシクルインプの体に突き刺さった!


 突き刺さったが躰を真っ二つにするには威力が足りなかったみたいで途中で止まったがシクルインプを絶命させるには十分だった。


「すいません!教授、威力が足りませんでした」


「いや、とりあえずシクルインプはったから合格だろ」


 すると最初に火弾ファイヤーボールで吹き飛ばされたシクルインプが立ち上がり流石に逃げ出した。


 だが、

「おっと、すまねぇがここで逃すと後が面倒だかららしてもらうぜ」

 そういうとルーファスは一足跳びに跳躍し逃げるシクルインプの前に立ちはだかった。


 驚くシクルインプ。


「せめてもの情けだ。後ろからじゃなく正面からってやるよ」

 ルーファスの言葉が理解出来てるとは思えないが、シクルインプはその鎌を大きく振りかぶり残された力、全力でルーファスに襲いかかった!


 ルーファスは動じる事なく、少し後ろに上半身を倒しスレスレのところで鎌を躱し、上半身を起こすと同時に抜剣しシクルインプを真っ二つにした。


 ルーファスの紅炎龍剣プロミネンサーに斬られたシクルインプは紅炎に包まれ消し炭になり、

 アンバーの火炎丸鋸ファイヤースライサーで絶命させられたシクルインプにもルーファスの紅炎龍剣プロミネンサーを突き刺せば同じく紅炎に包まれ消し炭になった。


 ちなみにシクルインプが持っていた三日月形の鎌は持ち帰り、農具や生活用品にしたり溶かして再生鉄にしたりするそうだ。




 それにしてもルーファスは別としてもアンバーも勇敢に闘った。

 それに比べ俺はただの傍観者だった…。


 早く剣技と魔術を覚えて戦力になりたいと思った。


「それじゃあ、道草食ったが森へ行くか」


「はい!早く行きましょう!」

 急いで森に行ったところで強くなる訳じゃないが、何故か一刻でも早く森に行って自分の剣を手に入れたかった。


 俺は先頭を切り森へ急ぎ足で出立した。


 後ろでルーファスとアンバーが急に急ぎ足で出立した俺を見て顔を見合わせているが早く森に行きたかったのだ。


「ジェイク、そんなに急ぐと途中でバテるぞ〜」


「ちょっとジェイク!先頭は私よ!待ちなさい!」

 アンバーが駆け足で追いかけてくる。


 その足音に俺も加速する。


「ったく、若いと言うかガキだな〜。

 おいおい、待てよ〜」


「教授、早く来ないと置いてっちゃいますよ!」



 ーーー



 そんなこんなで途中、休憩をとらざるを得なかったがもう森が目の前だ。

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