第5話 プラウラー
やっぱり両親の育ちの良さそうなところと言い、小さいながらも家が城だったり王族だったのかぁ!
でも元って言った?
「父様が魔力の高い元王族って?」
「いつか説明しなくちゃと思ってたけど、ジェイクはまだ小さいながらも言葉も達者だし理解できる能力はありそうね」
そうそう、何せ前世では後手後手人生をやり直そうと場当たり的にとは言え理論武装で身を守り、傷つきたく無い一心から常に先読みする癖で打算的に生きてたし、前世の記憶持ち越しのチート能力で赤ちゃんの内から知能フル回転させてたから理解は出来ますよ!
だからその厨二情報カモーン!
「それじゃあきちんと説明するからお父さんの待つ大広間に行って話しましょう」
「はい」
そりゃそうか、本人不在で本人の過去は話さないよね。
早く聞きたいけど、これはやっぱり家族会議的な議題だよね。
俺はゴブリンの頁を閉じ、魔物大全集を元の位置にしまいミランダと大広間へと向かった。
ーーー
木製で重厚感のある、高さ5mはあろうシンプルながらも気品溢れる彫刻が施された観音開きの扉を開け大広間に入る。
室内は100畳は軽くある大理石の様な床に石造りの壁に窓枠、壁際には鎧や剣が飾ってあり、中央には長さ25mはある一枚物の分厚い木製テーブルと木彫りの精密な飾りが彫られた背の高い背もたれの椅子が何十席も統一感覚で並んでいる。
そして長い先テーブルの先にある上座には家長であるルーファス。
ルーファスから見て右手の席にミランダが執事のランスに椅子を引かれ座り、ミランダの対面、つまりルーファスから見て左手側に俺は着座した。
ランスは静かに壁際まで移動し右手を直角に曲げ鳩尾の前に構え、目を閉じそれは綺麗な姿勢で立っている。
皆が席に着くと開口一番ルーファスは俺に気遣う様に話しかけてきた。
「ジェイク、少しは落ち着いたか?」
「はい、母様と話をして落ち着きました」
「そうか、それは良かった」
ルーファスは本当に安心した様に和やかな笑顔を見せた。
「それでね、あなた。
実はあなたが元王族のエリート魔族って言う事は話したの。
ジェイクは産まれた時から不思議な…何か特別な力を秘めた子だと感じていたけど、すでにしっかりとした考えと優しさを持っているからジェイクがまだ小さいとか4歳だからとかは無しにして親としてきちんと向き合うべきじゃないかと思ったの」
しばらくルーファスは顎に手をやり考えていた。
その佇まいは魔王としての風格を漂わせている。
そうしてようやく口を開いた。
「今の俺、魔王っぽくね?」
いきなりルーファスが言い出した!
え!?読心術スキルってあるの?
「あなた!ふざけないで」
呆れた様に怒るミランダ。
あ、そうなの?またルーファスの悪ふざけ?
「冗談冗談。何か考え込んでる俺ってカッコイイかな?って…
いや、ゴメン」
コホンと咳払いを一つし襟を正した。
「そうだな。
確かにジェイクがこれからこの世界で生きていく為にも早くから物事を理解しておく方が良いかもな」
お、ナイス判断!
流石、我が父!
「あなたも知っての通りジェイクは早くから自分の力で立ち上がり、歩き、そして字も読めない内から一生懸命本を読み、私達の言葉に耳を傾け理解しようとしてたわ」
お、ナイスフォロー!
流石、我が母
「確かにな。
単純に子供の成長の早さを喜んでいたが、ジェイクは他の子に比べ早く世界を理解しようと動き考えていたのかも知れないな」
…まさかホントに読心術とかのスキルで前世記憶持ち越しのチート能力バレてる訳じゃないよね?
「ジェイク、少し難しいかも知れないが話を聞いてくれるか?」
「はい、教えて下さい」
「うむ。その前に少し話が長くなるからランス、お茶を淹れてくれないか?」
「畏まりました」
そういうとランスは静かに場を離れた。
何とも居心地の悪い時間だった。
ランスがお茶を淹れてきてくれる間、時間にして5分程だろうか?
ようやくランスがお茶を運んできてくれプライベートな話だからか気を利かせて席を外した。
「さて、それじゃあどこから話そうか…
俺がエリートかどうかは置いておいて、元だが王族だったのは本当だ」
俺は食い入るように話に耳を傾けた。
「この世界には魔力が満ち溢れている事は前に話したな。
その魔力に関係するのだが、魔力は通常、空気と一緒に至る所に存在し今こうして話している時もそこら中に漂っている。
そして魔術というのは簡単に言うとその魔力を集め様々な力に変換する事だ」
そう言ってルーファスは指先に小さい火を灯す。
「我々魔族はその名の通り魔力に長けた民族だ。中には人族でも優れた魔術師もいるし、特に尖耳長族なんかは我々に負けず劣らずの力を持つし、他の民族でも魔力を使う」
「つまりこの世界は魔力があり成り立っているし空気同様生きる上で必要なものなのですね」
「その通り、流石ジェイクは俺に似て察しがいいな」
二ヘラと三枚目な笑顔を見せるがそういうタイミングじゃないだろ。
「…あなたぁ」
「冗談だよ、冗談。
ゴホン!
さてだ、ジェイクの言う通りこの世界は魔力ありきで成り立っている。
じゃあ仮にこの世界を我が物にしようと企むならどうする?」
「魔力を一人占めします」
「その通りだ、流石俺に…」
「あ、な、たぁ…」
いい加減みんな怒るよ。
特にミランダは闇の清掃人の相方か〇りだったら100tのハンマーで殴るであろう位の怒りを溜め込んでいる。
「わ、分かった!今度こそ真面目に話す!
ジェイク、魔力は空気の様にそこら中に漂っているって言ったが、じゃあ何処から作られているか?
空気は植物が呼吸する事によって酸素を作り出されている訳だが、じゃあ魔力は?」
確か以前読んだ本に書いてあったぞ。
「確か…石から発生してるんじゃなかったでしたっけ?」
「そうだ、魔力は石から作られるのだ。
もちろんただの石では無い、魔宝原石と呼ばれる石で鉱物である以上、植物の様に呼吸はしないがその石から空気へ滲み出る様に魔力が吐き出されて大気中を漂っているという物だ」
つまりあれか?
前世でいうと宇宙線やら地下から発生されている自然放射能みたいな目には見え無いが色々な面で影響がある物質みたいなものか?
「魔宝原石が何処で見つかって他にもあるのか不明な部分が未だ多いのだが分かっているだけで、この世に7つあると言う事」
何だか7つの玉を集めると龍の神様が出てきて願いを叶えてくれるみたいな感じだな。
「その7つの魔宝原石は魔族、人族、獣人族、不死魔族、尖耳長族、炭鉱族、竜人族それぞれの王もしくは賢者が保管しているのだが
ある日うろつく者と名乗るにこやかな笑顔の見た目は人族の青年が突如俺の前に現れた。
うろつく者は親しげな挨拶をしてきたかと思えば、いきなり魔宝原石をくれと言ってきた」
「………」
「突如現れた事に戸惑いもしたが、それよりいきなり魔宝原石をくれと言う言葉にある意味驚きもしたが、当然断った。
うろつく者もそう答えてくると思ってたらしく『ですよね』と笑顔で答えた瞬間、俺の鼻先まで一気に距離を縮め頭上から剣を振りかざしてきた。
何とか一撃を避け反撃に出たもののその速さ、剣術、魔術、体術どれをとっても断トツに強かった」
「………」
「このままではいずれ俺も倒され魔宝原石を奪われるのは目に見えてた。
しかし魔宝原石を渡す訳にもいかない。
それは読んで字の如く“必死”に闘った。
おそらく今までのどんな闘いより全力で必死に闘ったがとても敵わなかった…。
悔しいがとても敵う相手では無いと悟った俺は闘い方を変える事にした」
「…どの様に?」
「攻撃する相手をうろつく者から魔宝原石に変えたのさ。
我々魔族が代々守ってきた魔宝原石は焔紅玉石と呼ばれる火属性の魔宝原石だ。
焔紅玉石を守護する我々は火属性の魔力に長けている。
守護する魔宝原石の恩恵によって、それぞれの種族に得意とする魔力属性があるが、その説明はまたの機会でいいだろう。
とにかく俺はヤツに焔紅玉石を奪われ、他の魔宝原石までヤツの手に落ち魔力独占させる位ならいっそ焔紅玉石を叩き壊そうと決意した」
「ちょっと待って下さい。
確かに守ってきた物をいきなり奪われるのは納得いかないと思いますが、何も奪われる位なら破壊するというのはやり過ぎじゃないですか?」
「俺が敵わないから魔宝原石を破壊しようとした理由は3つ」
ルーファスは自分の顔の前に親指、人差し指、中指の3本を立て説明し始める。
「まず一つ目の理由は、焔紅玉石を破壊したところで火属性の魔法が使えなくなる訳では無いと言う事。
ただし火属性の魔法は発動しにくくなるだろう。また神級火魔法も使えなくなるかも知れないが、
魔力自体がこの世から無くなる訳では無いから使いにくいだけで使えなくなる訳では無いと言う事。
これは我々魔族にとっては不利な話には違い無いがな」
ルーファスが立てた3本の指のうち親指を折り、人差し指と中指で2を示す。
「2つ目の理由は俺が焔紅玉石を奪われれば次の魔宝原石を狙いに次の種族が襲われるという事。
仮に俺が魔宝原石を持ち、逃れたとしてもヤツは他の種族を襲うかも知れないが一つ目の魔宝原石が壊れてしまえば7つ全部を揃えるのは物理上不可能だと言う事」
ルーファスは中指を折り人差し指だけが残った。
「3つの理由が1番大事なんだが……1番初めに焔紅玉石を破壊しても火属性の魔法が使えなくなる訳では無いと言ったな。
試した事は無いが古より伝わる話だと7つの魔宝原石を全て一つに集めると集めた本人しか魔法が使えなくなると言われている。
元々は魔宝原石は一つで、それは当然、魔宝原石を狙いに我が物にしようする血を血で洗う様な終わり無き争いが何千年と続いたんだ。
やがて1人の青年が圧倒的な強さで魔宝原石を手に入れ種族を問わず力で支配し逆らう者、気に入らない者は粛清するっていった独裁世界を作ったとされている」
「それって、もしかしてさっき父様は闘ったって話してた…」
「ああ、そうだ」
「………」
「話を戻すが、そんな魔力独占の独裁支配者による世界も終わりを迎えるんだ。
魔法が使えなくなった各種族の代表、これがさっき言った7つの魔宝原石を守護する種族だ。
が秘密裏に結託し独裁者を倒すんだ」
「よくそんなの相手に7人がかりとは言え勝てましたね」
「闘った7種族の代表の内、5種族の代表は相討ちでやられたとされている程、壮絶な闘いだったらしい。
それも練りに練った不意打ちまがいの決して正々堂々とした闘い方じゃなかったらしいが、
それは形振り構って闘う様な相手じゃなかったし、2度目は無い闘いだから仕方無いだろう。
倒す事が最優先だからな」
「…それで生き残った2種族と言うのは?」
「我々魔族と尖耳長族だ。
そして魔族代表と尖耳長属代表で、こんな争いが2度と起こらぬ様、魔宝原石を破壊したのだが、破壊された魔宝原石はそれぞれ違う色の7つに割れ散らばり飛んで行ったとされている」
「その各地に散らばったとされる魔宝原石が今、7種族の王や賢者が保管しているのですね」
「そういう事だ」
「それで倒されたその青年というのはどうたんですか?」
「何でも言い伝えによると倒された時は死んじゃいなかったらしい。
ただもう虫の息で瀕死の状態ではあったらしいが、生き残った魔族と尖耳長族が魔宝原石を破壊した途端、光の屑となり消えたって話だ」
「つまり死んだと確認できた訳では無いのですね」
「そうだ、生きていると確認出来ていないが死んだとも確認出来ていない。
いや、俺の前に突如現れたうろつく者ってのがヤツだろう」
「生きていた、もしくは復活した?」
「ああ。だがな、これで話は戻るが俺は今説明した事から焔紅玉石を破壊した、いや破壊しようとした」
「破壊しなかったのですか?」
「正確には破壊したが、破壊出来なかったというべきかな。
俺はうろつく者から突如視線を外し横にあった焔紅玉石にありったけの魔力を剣に込め焔紅玉石に振り下ろした。
いくらヤツが速くても俺が全力で背後の焔紅玉石を破壊するスピードには追いつけないと思ったし、ヤツもまさか焔紅玉石を破壊するとは思わなかっただろう」
「追いつかれたのですか?」
「いや、ヤツは間に合わなかったさ。
ヤツは焔紅玉石を壊させまいと俺を攻撃するのは間に合わないと判断し、焔紅玉石を剣に当たる寸前に奪おうと思ったらしく焔紅玉石に手を掛けた瞬間、俺の剣がヤツの手と焔紅玉石の一部を斬り落とした格好になった」
「…それでうろつく者を倒したのですか?」
「ヤツは斬り落とされた手を見て驚愕してたよ。
そして斬られた手からは血じゃなく光の屑が湧き出てた」
「っ!?それって!」
「ああ、言い伝えの独裁ヤロウの最期と同じだ。
ただヤツは最期に笑いながらこう言った。
『まさか又、魔族にやられるとはねぇ…。
いや〜我ながら情け無い。
まあいい。前回は魔宝原石を7つにも割られたから復活に2000年掛かっちゃったけど今回は一部擦り落とされた位だから100年もしない内に復活出来ると思うよ。
次は会話なんか無し、慢心抜きで全力で皆殺しにするから楽しみにしててよ。
何だったら鍛練?って言うのでもして頑張っててよ。
まあ無駄だと思うけど、ってこういうとこか?
ボクの悪いとこ。
じゃあまたねぇ…』
って笑いながら全身が光の屑になって消えやがった。
それと同時に焔紅玉石の斬り落とした一部は消滅しちまったがラッキー要素高いとは言え焔紅玉石も残ったって訳だ」
そんなに強い者が手首斬られた位で消滅するか?
「そのうろつく者は、それで消えたままなのですか?」
「ああ、俺もあれから気をつけてはいるがヤツが俺の周りに現れたり、何処かに現れたって話を含めて聞かないな」
「本当にうろつく者の言う通り、手首から先を斬られたら100年かからないまでも何十年かは復活出来ないのでしょうか?」
「まあ、真相は分からない。ヤツが言う通り100年近くは復活出来ないのか、それとも魔宝原石を確実に手に入れようと我々を油断させる為、騙しているのか、はたまた何か傷つくと1度消滅しなければならない理由でもあるのか、いずれにしても血は通っておらず謎の光の結集体である事に関係がありそうだがな」
「確かに傷口から光の屑が溢れるんですから血は通っていない様ですね。傷つけられると光の屑が溢れる、すると体が維持できない、だからかその脆さと引き換えに異常なまでの強さを持っているのか?」
う〜ん、謎は深まるばかりか…。
「とりあえず俺達に出来るのはヤツがいつ現れてもいい様に注意を払うのと、レベルを上げ強くなりヤツの手から魔宝原石を渡さない事だ。更に言うなら魔宝原石を持つ各種族へうろつく者の情報を共有する事も必要だな」
確かに今度も魔族から襲うとは限らないからな。
各種族へ警告と情報共有は必要だな。